小3男の子「もう疲れちゃった」と言いながら自傷行為をしてしまう

小3男の子「もう疲れちゃった」と言いながら自傷行為をしてしまう

ブログをお読みいただきありがとうございます!

毎日暑いですね💦

毎日汗をかきまくっていますが、体重は減らない…そうだ、だって毎日めっちゃ食べてるもんなぁ…な公認心理師のまいどん先生です。

今回は母子登校を経験されたご家庭の事例を紹介してみたいと思います。

 

小3男の子のTくん「もう疲れちゃった」

Tくんは小学3年生の夏休み明けから「もう疲れた。学校に行きたくない」と言い、1週間欠席をした後に母子登校状態に。

お母さんは「もう疲れた。学校に行きたくない」というTくんを見て、『これはまずい…休ませないといけない』とすぐに判断されました。

…というのも、泣いて「もう疲れた。学校に行きたくない」とお母さんに訴えたTくんは、「ぼく、もういなくなりたい…」とも言い、自分の腕に爪を強く押し付けていて自傷行為のように見えたからです。

 

このご家庭は母子家庭で、お母さんは、「ひとり親でも立派に育てなければ」という思いを強く持たれていました。

その思いが強すぎるがあまり、毎日お母さんが帰宅したら「宿題したの?」の確認をし、家事手伝いをしてくれなければ叱り、休みの日も車で移動中ずっと勉強に関する動画を流すなど、とても熱心に関わってこられていました。

Tくんは、そんなお母さんに対して時々「いやだ…」「えー、今やりたくない」と言うことがありましたが、

「えーじゃない!やりなさい。宿題が終わるまでご飯作らないから」

…と言ったりするやりとりが日常だったんだそうです。

 

お母さんの支配が強めのご家庭だったため、Tくんは自分の意見をお母さんに言えませんでした。

外食時、何が食べたいかを聞いても「ママが食べたいのでいいよ」と言い、休みの日にどこに行きたいかを聞いても「別に、なんでもいいよ」と言います。いつもお母さんの顔色をうかがい、合わせ、本音を言えません。

そんなT君が初めてお母さんの表情を気にする余裕もなく、「学校に行きたくない」という気持ちを発しました。

 

そんなT君を見て、お母さんは

『あ…これは無理させたらこの子は壊れてしまうかもしれない』

と感じたそうです。

 

実は自覚があった

実は、お母さんにはT君に「頑張らせすぎなのではないか?」という自覚があったと言います。

それでも、どうしても頑張らせないといけなかったのは、お母さんの強い「べき論」と、T君のおばあちゃん。つまり、お母さんのお母さまに要因がありました。

 

お母さまは、T君のお母さんが子どもの頃から「長女なんだからしっかりしなさい」と言い、T君のお母さんは常にいい子であろうとしました。

口答えは許されないし、親の言うことを聞かなければ罵倒されたと言います。

そのようなかかわりはご自身が大人になり親になっても続き、いつもお母さまに自分の子育てについて評価をされてきたそうです。

 

「Tは弱い!あなたがちゃんとしつけないからだわ」

「挨拶ができないのは親のせい。ちゃんと言いつけないとだめ」

「なんで勉強がクラスで一番になれないの?何を教えてきてるの、あなたは」

…と、実家に帰るたび、お母さんはお母さまにあれこれ嫌味を言われてきました。

 

その結果、お母さんは、お母さまに認められなければならないとも思っていましたし、自分が厳しくT君をしつけないとT君は立派な大人になれないという強迫観念的な思いがあったのだと言います。

「自分の親を喜ばせるために子育てをしているわけじゃない」と頭ではわかっているのに、T君にかける言葉はいつも辛辣でした。

まるでご自身がお母さまに言われてきたことと同じように。

 

このままではさらに追い詰めてしまうかもしれない

ですので、T君の様子をみた瞬間、お母さんは『私のせいだ』と感じ、「T君がもし自殺をしたら…」ということが頭をよぎったそうです。

お母さんは泣きながら、「ごめんね。休みたかったら休んだらいい。疲れたんだよね。お母さんが悪かった…」と抱きしめられたそうです。

 

そうして、T君が学校をお休みしだして3日、4日と日数が経つにつれ、お母さんは『このまま不登校になったらどうしよう…』と不安になります。

そして1週間欠席させた後、不安が怒りに変わり「そろそろいい加減学校行きなさい!」と怒鳴ってしまいました。

 

T君は泣きながら学校に行く準備をしますが、どうしても玄関で固まってしまって動けません。「ママが付いて行ってあげるから」というお母さんからの言葉で、母子登校がはじまりました。

 

焦りと不安の母子登校

T君の母子登校は、状況はそこまで深刻化しませんでした。

毎朝お母さんが校門までついていけば、そこでなんとかバイバイすることができます。

お母さんも、「1週間くらいついて行けばまたひとりで行くようになるだろう」と思っていたそうなのですが、まったくそうはならず、母子登校が1か月、2か月と続くにつれて焦りが出てきました。

校門の前ですっとわかれられる日はいいのですが、グズグズしてしまって30分以上校門の前で揉めることがあり、お母さんが仕事を遅刻する日が増えていっていきました。

 

そこで私の支援を見つけてくださり、ご相談くださいました。

 

「学校にはひとりで行けるようになって欲しいです。でも、無理はさせたくないです」と言うお母さん。

「私がいけなかったんです…息子の心に傷をおわせてしまった…許してほしい…」

「親としてできることはなんでも頑張ります。よろしくお願いします」と仰り、支援がはじまりました。

私は最初のやりとりの時、「このお母さんは何をこんなに怯えているんだろう?」「母子登校などに悩む家庭が最初に親子でもめやすいし、それは変なことではない。でも、そんなにも泣いて許してほしいというほどのやりとりをしてこられてきたの…?」ということを考えていました。

 

そして支援がはじまりご家庭の様子を見ますと、矛盾があるやりとりを多くされていました。

夜は「学校は無理に行かなくていいよ」というものの、朝になると「早く行くよ!」と言う。

「今は学校に行くことが大事だから宿題は無理しないでいいよ」というものの、宿題をしないT君にイライラをぶつけてしまう。

学校に関しては極力感情を抑えて関わるものの、習い事を行き渋るT君には「わがままばっかり言って!習い事くらい行きなさいよ!」と怒鳴ってしまう。

T君はいつもお母さんの顔色を窺ってばかりいました。

 

そして、お母さんはそんなご自身のことを「私が悪いんです」「私がTを弱く育ててしまったから」「私がTの親じゃなかったらよかったのに」と責めます。

 

お母さん自身の棚卸しとケア

T君は、身の回りのことは自分でできる子でしたし、家事のお手伝いもお母さんに言われる前からやってくれる子です。

宿題は学校から帰宅してからすぐには取り掛からないものの、その日のうちには済ませることができる子でもありました。

お母さんには、T君が一生懸命頑張っている姿に注目して、求めるハードルを下げてみましょうという話をしました。

 

かつて自分がT君くらいの年齢の時は、もっと頑張っていたのに。

こんなこともできないの?私はずっと我慢してきたけど?

なに、こんな簡単な問題も解けないの。

なんで学校にひとりで行けないの。

なんで…どうして…

 

お母さんの頭の中では、常にこういった言葉が頭の中でグルグルとめぐり、T君を否定し続けてしまうと言います。

自然とこういう言葉が浮かぶので、「それ考えるのやめましょ」と言っても、勝手に浮かぶもんだから、やめられない。

ですので、私は、「お母さんが子どもの頃に感じていたことを、ひとつひとつ思い出したら私に教えてください。」「あの時、自分の母親にどんなかかわりをしてもらいたかったか。お母さんは、子どものころ、どんなことをお母さんに言いたかったか。そういうことを、言葉にしていきましょう」と伝え、人生の棚卸しのお手伝いをさせていただきました。

 

毎週誰かに子育ての相談ができる。

「この人に子育てや母子登校のことを話したら、なんて思われるかな?」と心配しなくていいし、周りの評価を気にしなくてもいい。

自分の悩みに寄り添ってくれる人がいるということがお母さんの心を癒していったようで、ちょっとずつ、T君へのあたりのきつさがマイルドになっていきました。

そしてお母さんも私も「あれ、いつからひとりで行きだしたんでしたっけ」というくらい、すごい自然にT君はひとりで玄関から「いってきます」と学校に向かうようになります。

 

このあたりからお母さんにも変化があらわれだします。

これまでは「頭で理解して」感情を表に出さない「我慢」をされていたのですが、過去の自分と向き合い続けてみると、

「どうしてこんなにイライラしてたんだろう。Tはちゃんと自分のことは自分でするし、ひとりで学校に行けるようになったじゃない」

と思えるように。

そうすると、T君も少しずつですが「ぼく、このご飯すきじゃないな」「今日は宿題はあとでやりたい」とおびえずに、お母さんの顔色を窺わずに自分の気持ちが言えるようになりました。

 

実母との関係

しかし、T君にほとんど指示や干渉をせずに任せる様子を、お母さま(T君のおばあちゃん)はよく思わなかったのです。

 

「Tったら帰ってきてすぐに宿題してないんでしょ?まずいんじゃないの?」

「実家に遊びに来てもずっとゲームばっかりじゃあね。だらしない。近所の子は公園に遊びに行くのに」

…など、お母さんとT君にチクチクと嫌味や指摘をします。

 

そんなお母さまの意見を聞くと、お母さんの「T君を支配したい気持ち」が膨らんでしまいます。

 

ひとりで登校ができるようになって、T君が自分の気持ちを言えるようになってきたのは喜ばしいことなのに、お母さまにそう言われてしまうと「私は甘いのかな?」と不安になり、厳しくかかわってしまう。

「早く宿題しなさい」「宿題が終わったら自主学習。ほら、買ってきたドリルやりなさい!」など、よくないと分かっているのに、勉強やその他の行動の強制がやめられない。

お母さんは、「私はどうせ、できない人間だから」「ひとり親の家庭になったのは私のせいだから」「Tがだらしないのは私のせい」という卑屈な、自責の念で苦しみます。

 

お母さんの苦しみは、「親として」というよりも、「子どもの頃の自分」が関係している。

実家と距離があるときは、自分らしくT君とかかわれるのに、実家に帰ると、急に子どもの頃の自分に戻って、親に「評価」され、「ちゃんとしなきゃ」という強迫観念におそわれる。

「お母さん、それはしんどかったですよね。そうやって、ご自身のお母さまの顔色をうかがって、ちゃんと育てないと。T君がおばあちゃんにとって自慢の孫でないといけないと。おばあちゃんが満足する子育てをしないと。って、ずっと評価をきにされてきたんですよね。T君といっしょにだらっと昼寝をしたり、おやつを食べたり、テレビを観て笑いあったり。そういう、何気ない時間を大事にできなかった。ずっと、未来の理想のT君像を追いかけて、そうなるように必死にやってきてたんですよね。」

…と、そんなことを言うと、「こんなこと、わかってくれる人と出会えるなんて思わなかった」と電話口で泣いておられました。

そこから、お母さんは、ご実家に帰ることを控えられ、T君との2人の時間を大切にされるようになりました。

 

その後…

これまでは、「このご飯苦手かも」と言われれば怒鳴っていたお母さん。

「宿題、今日はしたくない」と言われれば無理やりやらせていたお母さん。

そんな自分が嫌で、やめられなかったお母さん。

 

T君のお母さんは、子育てを通じ、自分がお母さまにしてもらいたかった関わりや想いを、ご自身の子育てを通じて癒されていきました。

 

じっくり話を聞いて、批判もしないし口出しをしない。

ただ、そうかそうかと話を聞き、うなづく。

T君がなぜそうしたくなったのかを理解しようと想像力を働かせる。

 

はじめはぎこちない話の聞き方でしたが、お母さんは、徐々にT君との会話を楽しめるようになりました。

そして、卑屈になる癖も少しずつ抜けていき、お母さんはとても生き生きとされました。

会社の方からも、「なんか最近明るいですね」と言われたり、友達からも「元気だね。表情が変わった」と言われたりしたそうです。

 

そんなふうに、お母さんがかわっていくと、T君もどんどん自分の気持ちを口にできて、変に理解力がたかくお利口さんだったのが、子どもらしいわがままを言えるようになっていつもニコニコするようになりました。

お母さんの関わりがかわっていくとともに、お母さんの幼少期からの心の傷が癒され、T君は母子登校を乗り越え、お母さんの顔色を窺わなくなりました。

 

親子ともに、精神的な回復をし、「しあわせな毎日」を手に入れたとT君のお母さんは言います。

「子育ては子どもの成長を信じて願い続けてあげることなんだと思えるようになった」と嬉しそうに言います。

T君はその後母子登校状態に戻ることがなく、時々お母さんと喧嘩をしたり、甘えたりしながらも、毎日楽しそうに学校に通い、誰かの評価を気にせずに過ごせるようになりました。

 

今回は、小3の母子登校のケースをご紹介させていただきました。今回はこれで終わりたいと思います。

さいごまでお読みいただきありがとうございました。また次回のブログもお読みいただけると嬉しいです!

まいどん先生(公認心理師)

 

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