不登校・母子登校相談で多い「病院にかかったけど全然よくならない」というお話

不登校・母子登校相談で多い「病院にかかったけど全然よくならない」というお話

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寒くなってきましたね~!娘が鼻水をよくたらすのでふこうとすると、ヤンヤンと拒否します。

仕方がないので抱っこついでに私の部屋着で娘の鼻水をふくことも…。(汚い)

 

相談のメインテーマは子どもの登校のこと

MIKURU・MIRU(ミクル・ミル)は、家庭共育支援というサポートプログラムを提供しています。

これは親子が共に育つという意味ですが、親子会話をよりよくしていくということをメインテーマにしているにもかかわらず、不登校や母子登校相談が9割です。登校の悩みというのは、親子関係に大きく影響を与えるからです。

「SCへの相談や、児童精神科、心療内科の受診や、他機関を利用したけどだめだった」「藁をもつかむ思いです」とご相談いただく方ばかりで、「初回は少しだけ話を聞いてくれた。それ以降は5~10分程度で、漢方を出すかどうかみたいな話をしていたらすぐに時間がきて次の受診予約にすすんでいた」というお話が殆どです。

心療内科は、身体症状を伴う不調をみるわけですので、訴えを和らげるための薬の処方がメインになるのは当然のことです。

カウンセリングを受けようと思うと、今は医師の指導のもと心理師がカウンセリングを行えば保険適応になる制度がありますが、保険適応のカウンセリングを受けられるクリニックは全国的にみてまだまだ少ないのが現状です。

SCは、カウンセラーを学校に配置していても、実働は週1数時間とか、2週に1日とか、常時配置ではないです。

小中学校ともに、常時配置していない学校が8割ほど。

本来ならSCが不登校をはじめとする様々な悩みに対してカウンセリングをしたり、ケース会議に参加してチームとして保護者や児童生徒をサポートしたいところを、SCが話を聞こうにも、重大な問題を抱えているようなケースをみようにも時間が圧倒的に足りなさすぎるんです。SCも限られた時間の中で話を聞くことになるので、アドバイスするにも下手なことはいえなくなります。

だから、多くの先生は「前回のカウンセリングから様子はどうですか」から始まり、次までにどうしたらいいかというアドバイスよりも、「とにかく現状から悪化させないように」ということしか言えない。

刻一刻と親子の状況が変わることも、子どもはちょっとした体験で変われるということもわかっていながらも、時間が限られているから具体的なアプローチは言えないわけです。話を聞いてもらえても、解決策が無いというのでは、どうしても保護者はモヤッとするし、悩みはなくなりません。

 

訴えの奥にある状況を見ないといけない

先日ご相談いただいた母子登校でお悩みの親御さんは、児童精神科を受診されて、「とりあえずwisc検査しましょうか」と言われ検査をし、結果はなんとなく、やや凸凹は見られたもののとくに問題はなく、「どうします?薬、だしときますか?」と言われたと。

とりあえず出してもらって、2週間ごとに受診。受診時間は毎回5分で、「調子はどうですか?…薬、どうしますか?」からいっこうに進まなかったそうです。しかも、子どもはどんどん暗くなる一方。

何か症状を言う度に薬が増え、気分が落ち込むと言えば漢方、眠れないと言えば睡眠導入剤がでる。しかし本人の病状はさっぱりよくならない。それどころか髪の毛を抜こうとするような自傷行為や、気分の落ち込みが酷くなったと。

それで私に相談にこられました。「もう、わが子が何を考えているのか本当にわからないんです」と。

 

話を聞けば、具体的なことは書けませんが、学校の担任があきらかにおかしいし、軽いいじめもある様子。

お父さんは仕事のストレスも相まって夜な夜なお子さんの母子登校がお母さんのせいだとネチネチ責められていました。

お母さんは疲弊し、お子さんに人格否定してしまっていました。

1時間しか話を聞かなくても、明らかなストレス源がいくつもあるのがわかります。

 

病院では、何度か受診をした後に「適応障害か小児うつ」と言われたんだということでした。

私は親御さんに、「薬はお医者さんの指示に従って飲む必要がありますので、私からは投薬については何も言えません。ただ、環境をかえないかぎり、お子さんはよくならないと思います。まず、お子さんに関係する大人たちのお子さんの見立てをまとめてみてください。それと、1週間分の親子会話を毎日送ってください。そうすれば、だいたいの方向性が見えると思います。」と伝えました。

 

これは、こうなった原因は何か?と探るためです。

原因が分かればそれを取り除けるか、取り除くにはどうすればよいかを考えられます。

 

毎日の親子会話をみて原因を見つけるという作業は、かなりの時間が必要になるので、精神科でもSCによるカウンセリングでも出来ないということはご理解いただけると思います。

また、学校現場では「発達障害という言葉は近年よく言われるようになったのであり、昔はそういう子も教育により適応してきた。だから、どんな子でも同じように教育していくべき。出来るのにやろうとしない。不安を訴えて、弱い。甘えだ。」という先入観を持ってしまっている先生も残念ながらまだまだいます。

 

ご相談があったケースでもこんなふうに根性論の先生が担任でした。

担任がクラスメートの前で、子どもの失敗をしつこく話のネタにしていた。こんなのは、教育でも指導でもなんでもありません。

気分が沈むからこの薬、眠れないからこの薬…では話になりません。

お医者さんも学校での様子を聞けないと対応ができませんが、限られた診察時間の中で説明するのも難しい。

お母さんの話を聞いて、苦労をねぎらって、「お子さんを見守りましょう」では、母子登校で疲弊しているところに毎晩ご主人にネチネチ言う状況はなくなりません。

 

状況を隅々まで見て、「どうするか」

学校に話が通じそうな管理職がいるならば上の立場の先生に相談。無理なら教育委員会に相談するとか、お母さん自身のケアとしてカウンセリングをするとか、母子登校をどう乗り越えるかを考えなくてはなりません。

「子どもの話を聞き取る限りは、担任の指導はいじめを誘発する可能性がありそうだ」と伝えてみたり、ご主人がお母さんを攻撃しないためにも母子登校中の大変さをご主人にもわかってもらうとか、お子さんが自信を失ってる状況を変えていく…など、なんで今こうなってるの?というのを、原因を全部洗い出して、一個ずつクリアにするということをきちんとやっていかなくてはならないのです。

 

心の病気は原因不明。発達障害の子は特性があるから何もできないあるいは教育不足。

…と思い込むんじゃなくて、ちゃんと原因を知らなくてはなりません。

しかし、多くは本質的な原因追求と解決ではなく、ただ「不登校」「母子登校」という「事象」だけをみて、それを何とかしようとしている。

大事なのは、「どこからそれが起きているのか」ということを突き止めることです。

先ほど例にあげた親子は、お父さんもお母さんも毒親育ちだったことが後に発覚します。お母さんをネチネチ責めていたお父さんも、疲弊してお子さんを人格否定しがちなお母さんも、被害者です。子どもの登校をまつわる悩みというのは、氷山の一角でしかありません。

こういう、色んなみえないものの積み重なりの結果であることが多いんです。

それを本気で支え、何とかしようと背負う覚悟が支援者には必要です。

本来なら、全現場の人間にこういう物の見方や心構えを持ってほしいのですが、どうしても「心の病気の原因は分からない」「発達障害だから仕方ない」「教育次第」という先入観があるようです。

だから、「長く○○病院にお世話になってきたけど違う気がする」「カウンセリングを受けたけど一向によくならないどころか悪化している」と感じて私のもとに駆け込んでこられるのです。

どの病院も、学校現場も、みんな必死で一生懸命ご対応されているのは私も承知しています。

しかし、もっと深いところでの原因があって不登校や母子登校になっている家庭もあるという事を、もう少し認識してほしいとも思います。

 

色々頼ってきた…でも、もう疲れてしまった…

支援をしていますと、最終的には親御さんが最後まで諦めず根気よく、そしてこどもと未来を信じて取り組めるかという点が結果を大きく左右することが多く、どんなに寄り添い応援しても、親御さんが諦めたり努力できる気力がわかなかったり、こどもを信じていなければ全く前に進まないこともあります。

過去のご相談では、お子さんが発達障害の特性ゆえに、過去に児相にお世話になったり、大きくなってから、近所をウロウロする姿が怪しいと通報されて警察につれていかれたり(その子はお散歩が好きでした)、上にご兄弟がいるのでそちらの対応にも追われ、何より夫婦仲が最悪でお母さんは外部にしか頼れずあちこちに相談先を作っておられたケースがありました。

お子さんが小さいときから、このご家庭は近くに頼れるおじいちゃんおばあちゃんも地域のつながりもありません。

お母さんが頼られたのはどこも民間の支援で、共働きのご家庭ですが、お母さんの1ヶ月のお給料すべてが一番上のお子さんへの支援でなくなってしまう状況でした。
しかもそれぞれができる限りのサポートを尽くしましたが、それでも明るい未来はみえません。

教育・福祉・医療が介入しているにも関わらずです。

そのお子さんは小学校中学年の頃、発達障害のグレーと言われましたが、そこから学校や家庭などで適切な環境整備ができていませんでした。

グレーと言われるまでは育てにくさからしつけとしてかなり手をあげ、精神的な暴力もかなりあり、勉強をしないからと無理矢理英会話教室や塾に通わせてきたとお母さんは言います。

 

お母さんは、ADHDの可能性を指摘されて少しだけ気持ちが楽になったものの、しかし、

「あの子は普通だ。障害者なんかじゃない」

…と受け入れられなかったそうです。

 

発達障害のグレーといわれたあの段階で支援を受けてくれていたら。あの時もっと学校が発達障害への理解があったら。あの時もっと世の中の発達障害への理解があったら。
もっと早い段階で学校や周囲がご家庭だけが抱え込みすぎることに気づいてチームでサポートができていれば。
きっとここまで酷くなっていなかっただろうと思いました。

めちゃくちゃ長い間、このお母さんは不安でいっぱいだったんだろうなとも。

このケースでは親御さんはお子さんへの暴力をやめられましたが、もっと追いつめられているケースではそうはいかないでしょう。

多くは「支援のおかげで今年は家族で笑って年をこせます。2学期のこどもの成長とがんばりがうれしいです」「きっと今の苦労も振り返れば愛おしい日々となるのだと気づかせてもらえたおかげでこどもの失敗も愛せるようになりました」と言ってくださるご家庭ばかりですが、これは早期に対応できたからで、何もかもが複雑にこじれてからではこうはいかなかったと思うし、家族の誰かが精神を病んだり、最悪自殺する可能性もあっただろうと思うケースばかりです。

 

それでは、今回はこれで終わりたいと思います。

さいごまでお読みいただきありがとうございました。また次回のブログもお読みいただけると嬉しいです!

まいどん先生(公認心理師)

 

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