感情の雨上がりの空に
このブログを読んでくださっているあなたは、きっと、お子さんのことで、そしてご自身のことで、たくさんの想いを抱えていらっしゃるのではないかと思います。
私のカウンセリングを受けるお母さんたちも、皆さん、本当に真剣です。
時折、言葉に詰まり、潤む声。その声からは、お子さんを思う切実な気持ちが痛いほど伝わってきます。
「過保護だって言われるんです。でも…どうしても心配で。」
「うちの子を、どうにかまた学校へ行かせてあげたいんです。」
そんな言葉を聞くたびに、私は胸が締め付けられるような思いになります。
お子さんへの深い愛情、そして、どうすれば良いのか分からないという焦りや不安。
まるで、荒れ狂う海の上で、小さな船の舵を必死に握りしめている船長のようです。
でも、お話をしていくうちに、お母さんたちの言葉は、だんだんとご自身の内側へと向かい始めるんです。
「なんだか最近、自分が何を考えているのか、よく分からなくなってしまって…」
「子どもにイライラしても、『そんな風に思っちゃいけない』って、すぐに頭で否定してしまうんです。」
それは、心の奥底にずっとしまい込んできた、感情の叫びなのかもしれません。
「子どもを可愛くないと思ってはいけない」
「子どもを憎たらしいと感じてはいけない」
「他の子と比べてはいけない」
社会の厳しい声、もしかしたら、ご自身の中にある厳しい声が、あなたの心を締め付けてきたのかもしれません。
ネガティブな感情は悪いものだと教えられ、感じてはいけないものとして、心の奥底にそっと、でも強く押し込めてきた。
私たちの脳って、本当に賢いんです。何度も何度も「ダメ」と繰り返すうちに、いつの間にか感情そのものに気づかないように、感じないようにと、巧妙に心の回路を閉じていってしまう。
喜びも、悲しみも、怒りも、いつの間にか薄れて、何を感じているのかさえ、分からなくなってしまう。
そんな状態で、「さあ、アンガーマネジメントをしましょう」「お子さんの気持ちに共感しましょう」と言われても、それはまるで砂の上に建てられたお城のように、もろく崩れてしまいそうです。
だって、自分の感情がどこにあるのかさえ分からない人に、他者の感情を理解することなんて、とても難しいことだから。
あなたは、これまで懸命に、この社会に適応しようとされてきた人です。良き母であろうと、世間の理想像に近づこうと、必死にもがいてこられた。その結果、一番置き去りにされてしまったのは、もしかしたら、あなた自身の感情だったのかもしれません。
最初はどうしても、世界を見る解像度が低いんです。
親子の会話を振り返っても、「うちの子は全然できていない」と、お子さんの欠点ばかりに目が行ってしまう。
まるで、レンズの焦点が合っていないカメラのようです。ぼやけて見えて、本当に大切なものが見えなくなってしまう。
でも、カウンセリングを重ねていくうちに、本当に少しずつ、本当にゆっくりと、お母さんたちの瞳に、温かい光が灯っていくんです。
お子さんと一緒にいる時の、ご自身の心の動きに、ふと気づき始める。
「あ…私、今、この子の笑顔を見て、すごく嬉しいんだ。」
「…でも、その反面、少し寂しい気持ちもあるんだな。」
自分の感情を言葉にすることって、最初は少しぎこちないかもしれません。
まるで、長い間閉ざされていた、少し錆び付いた扉を、ゆっくりと、慎重に開けるような感覚かもしれません。
それでも、お母さんたちは、勇気を出して自分の内側をそっと覗き込もうと、懸命に向き合おうとされます。
私は、あなたに安易な答えを与えることはしません。
もし私が「こうすればいい」と指示したところで、それはただ、私の考え方のコピーを生み出すに過ぎないと思うからです。
あなたが本当に必要としているのは、誰かに言われた通りにすることではなく、ご自身で答えを見つけ出す力だから。
だから、私は、少し回りくどいかもしれませんが、問いかけ続けます。
「お子さんは、どんな時に一番嬉しそうですか?」
「あなたは、どんなお母さんでありたいですか?」
「将来、お子さんがあなたのことを思い出した時、どんなことを思ってほしいですか?」と。
その問いかけは、時にあなたを戸惑わせてしまうかもしれません。
それでも、その問いとじっくり向き合い、ご自身の心と静かに対話する過程こそが、あなたの心の姿勢を、揺るぎない土台を、少しずつ築き上げていくと信じているんです。
「お母さんは…絶対的な自分の味方で、ずっと自分をわかろうとして、寄り添おうとして、支えてくれた。忙しくても自分に向き合おうと時間を作ってくれて、自分の心の痛みには一緒に泣いてくれて、自分の嬉しさには心から喜んでくれた。お母さんって、そんなひと。」
以前、あるお母さんが、未来のお子さんからのメッセージを想像して、そう語ってくださいました。
その言葉は、お母さんの心の奥底から湧き上がってきた、切実な願いでした。
それは、お子さんへの深い愛情と、ご自身がどんな母親でありたいのかという、純粋な想いの結晶のように感じました。
カウンセリングを通して、お母さんたちは、「子育てとは、自分とは」という問いを、何度も何度も、諦めずに問い続ける姿勢を身につけていかれます。それは、私がお母さんたちにそっとお渡しできる、何よりも大切なお土産なのかもしれません。
もし、支援を卒業したあなたが少し疲れたなと思った時には、そのお土産をそっと広げて、思い出してみてほしいです。
お子さんのために、そして何よりも、あなた自身のために、真剣に向き合った、かけがえのない日々のことを。
その日々こそが、何よりも価値のある、宝物。
そして、その宝物は、これから先のあなたの人生を、きっと力強く照らしてくれるはず。
まるで、雨上がりの空にかかる、美しい虹のように。
あなたの心にも、きっと、温かい虹がかかりますように。
あなたは、もうすでに、たくさんの愛情と勇気を持って、お子さんと、そしてご自身と向き合っていらっしゃいます。
どうか、そのことを忘れないでください。
そして、もし、少しでも心が疲れてしまったら、いつでも、この場所に戻ってきてください。
私は、ここで、あなたの言葉に耳を傾け、あなたの心に寄り添っています。
それでは、今回はこれで終わりたいと思います。
さいごまでお読みいただきありがとうございました。また次回のブログもお読みいただけると嬉しいです!
まいどん先生(公認心理師)
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