「自立の程度」が引き起こす学校不適応ってあるの?
ブログをお読みいただきありがとうございます。山下です。
今回は、いつもとはちょっと違う切り口で不登校などについて記事を書いてみようかなと思います。
不登校や、母親が付き添って登校する母子登校。これらの状況は、子どもたちにとって学校という社会への適応が困難になっているサインでもあり、その背景には実に多様な要因が絡み合っています。
学業不振、友人関係の悩み、いじめ、教員との関係、発達特性など…個々のケースは千差万別です。
そして、要因の一つに、「子どもの自立」が関係していることがあります。
親による無意識のうちの過度な介入や、自立を阻むコミュニケーションが、結果的に子どもが学校生活に馴染めなくなる状況を生み出し、登校困難へと繋がっていくというパターンが存在します。
現代社会における子育てと「自立」の難しさ
現代社会は、情報過多であり、子育てに関する情報も溢れています。
多くの親は、子どもの成長を願い、良かれと思って様々なサポートをすると思います。
しかし、その「良かれと思って」の行動が、知らず知らずのうちに子どもの自立の機会を奪ってしまうことがあります。
例えば、子どもの安全を最優先するあまり、
危険を伴わない程度の失敗や挑戦までも徹底的に排除しようとしたり、
社会の変化が早く、将来への不安が大きい中で、親が子どもの進路や選択肢を先回りして決めてしまうケースも少なくありません。
核家族化が進み、地域社会との繋がりが希薄になる中で、親が一人で子育ての重圧を抱え込み、子どもへの過度な期待や依存を生み出してしまうこともあります。
このような環境下で育つ子どもたちは、自分で考えて決める経験が不足し、「指示待ち状態」になってしまったり、
「失敗することへの過度な恐れ」を抱いてしまったりすることがあります。
過干渉や過保護というのは、自らの意志で行動し、困難に直面した時に乗り越える力が育ちにくくなるともいえます。
でも、そんなことを言ったってそれらをやめるのは難しいですよね…
親都合で「ほら、さきこれやっちゃって」と言ってしまったり…(遠い目)
自立を阻むコミュニケーションとは?
子どもの自立は、様々な場面ではぐくまれますが、日々の親子のコミュニケーションの中でも育まれていきます。
ただ、以下のようなコミュニケーションパターンは、子どもの自立心がなかなか育たず、
集団生活への適応を困難にする場合があります。
1. 過度な命令と一方的な指示
「あれをしなさい」「これはダメ」といった、親から子どもへの一方的な命令や指示が多すぎる家庭では、子どもは自分で物事を考え、判断し、行動する機会を奪われます。
影響: 学校では、自分で時間割を見て行動したり、友人と協力して課題を進めたり、トラブルがあった際に自分で解決策を考えたりする必要があります。しかし、常に指示を待つことに慣れてしまった子どもは、これらの自律的な行動が取れず、周囲に流されたり、孤立したりする原因となります。結果として、学校生活そのものに「どうしていいか分からない」という不安や困難を感じやすくなります。
その結果「ママがいない学校がこわい…」という言葉がでてくることも…。
2. 脅しと警告による支配
「宿題をしないとゲームはなし」「言うことを聞かないと、もう知らないよ」といった脅しや警告は、一時的に子どもの行動を制御できるかもしれませんが、その根底にあるのは恐怖心です。子どもは親の顔色を伺い、罰を避けるために行動するようになる場合があります。
(手っ取り早いので、ついやっちゃいますよね~💧「いいの?これやらないなら、お菓子ないよ?」と言ってしまったり…)
結果、自らの意思で行動する喜びや、失敗から学ぶ機会を奪ってしまうことがあります。
- 影響: 学校では、教師や友人との信頼関係が重要です。脅しや警告によって行動が支配されてきた子どもは、他人を信頼することに臆病になったり、常に「罰」を恐れるあまり、本音を言えなくなったりすることがあります。また、教師や学校のルールに対して反発心を抱きやすく、協調性を損なう可能性も出てきます。
3. 一方的な説教と提案の押し付け
子どもが何か問題を起こしたり、困っている状況に直面したりした際に、親が子どもの気持ちを十分に聞かずに、一方的に「それはダメだ」「こうすべきだ」と説教をしたり、自分の考えた解決策を押し付けたりすることも、自立の妨げになる場合があります。
これは、子どもが「自分で考えて、答えを見つける」という経験を奪う行為でもあるといえます。
- 影響: 学校生活では、友人間での意見の相違や、学業上の困難、クラブ活動での悩みなど、様々な問題に直面します。自分で考えて解決しようとせず、すぐに「誰かに答えを求めてしまう」傾向が強くなったり、自分の意見を主張することに臆病になったりします。結果として、問題解決能力が育たず、些細なトラブルでさえも学校への足が遠のく原因となり得ます。
4. 「想像」に基づく子育て
親が、子どもの本当の気持ちや状況を把握しないまま、「うちの子はこうに違いない」「こうしてあげれば喜ぶはず」といった、親自身の都合の良い解釈や願望に基づいて子育てを進めることも、自立心をはぐくみにくくなります。
これは、子どもを一人の独立した人格として尊重せず、親の延長線上に置いている状態です。
- 影響: 子どもは、親が自分のことを理解してくれていないと感じ、孤立感を深めることがあります。学校で何か困ったことがあっても、親に話しても理解してもらえないだろうと諦め、内にこもってしまう傾向が強まります。自己表現の機会が失われ、自分自身の感情を認識し、適切に表現する能力が育ちにくくなります。
5. 安易な謝罪と過度な肩入れ
親が、子どもの失敗やトラブルに対して、すぐに学校や相手に謝罪したり、過度に肩入れしたりすることも、一見すると子どものためになりますが、長期的には自立を妨げます。子どもは、自分の行動に対する責任を負う機会を失い、「どうせ親が何とかしてくれる」という依存心を育んでしまいます。
- 影響: 学校は、社会の縮図ともいえます。自分の行動には責任が伴うこと、他者とのトラブルは自分自身で解決に向けて努力すること、時には謝罪することも必要であることなどを学ぶ場です。しかし、親が過度に介入することで、子どもはこれらの社会性を身につける機会を失います。結果として、学校での対人関係でつまずきやすくなったり、些細な摩擦で大きな心理的負担を感じ、登校を拒むようになることがあります。
「自立」が不十分な状態での「不適応」のメカニズム
上記のような自立コミュニケーションは、子どもに以下のような影響を与え、結果として学校不適応へと繋がることがあります。
- 自己効力感の欠如: 「自分にはできる」という感覚(自己効力感)が育ちにくく、常に親の指示や助けに依存することで、自分で何かを成し遂げた経験が乏しくなり、自信を失いやすくなります。学校での新しい学習や人間関係に対して、「どうせ自分には無理だ」という諦めの気持ちを抱きやすくなります。
- 問題解決能力の未発達: 自分で考え、試行錯誤し、失敗から学ぶ経験が少ないため、問題解決能力が育ちません。学校でトラブルや困難に直面した際、どう対処していいか分からず、パニックになったり、逃避行動をとったりする傾向が強まりがちです。
- 対人関係能力の低下: 親の過度な介入や、自分の意見を言えない環境で育つと、他者との適切な距離感やコミュニケーションの取り方が分からなくなります。友人と協力することや、意見を交換することに苦手意識を持ち、孤立してしまうことがあります。
- ストレス耐性の低さ: 常に親に守られてきた子どもは、小さなストレスや不快な状況にも弱くなります。学校生活は、ある程度のストレスを伴うものです。それを乗り越える経験がないため、些細なことでも大きな負担と感じ、登校を拒否する要因となります。
- 自己肯定感の低下: 親からの評価や指示にばかり従っていると、「自分は自分で良い」という感覚(自己肯定感)が育ちにくいです。学校で周囲と比較されたり、自分の意見を否定されたりすると、より一層自信を失い、自分の存在価値を見失いがちになります。
これらの影響が複雑に絡み合い、子どもたちは学校という社会の場で「息苦しさ」や「居場所のなさ」を感じるようになり、やがて登校を拒否したり、親に付き添いを求める母子登校の状態に陥ったりする場合があります。
「でも、わかっていてもつい手や口を出してしまう…」という親御さんへ。
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自立を促し、復学へと導くための具体的なアプローチ
不登校や母子登校の状態から復学を目指す上で、親が子どもの自立を意識した関わりに転換することは、非常に重要であり、多くの成功例が見られます。
1. コミュニケーションの変革:命令から対話へ
- 傾聴の徹底: 子どもが話したいことを、遮らず、批判せず、最後まで耳を傾けます。たとえ話の内容が支離滅裂に聞こえても、まずは子どもの感情を受け止めることに徹します。「そう感じているんだね」「辛かったね」など、共感の言葉を伝えることで、子どもは「自分を理解してくれている」と感じ、安心感を抱きます。
- 「私メッセージ」の活用: 親が感じていることや考えていることを、「私は~だと思う」「私は~してほしい」という「私メッセージ」で伝えます。これは、相手を非難する「あなたメッセージ」(例:「あなたはいつも~だ」)とは異なり、相手に責任を押し付けず、自分の気持ちを率直に伝える方法です。
- 選択肢の提示と決定の尊重: 可能な範囲で、子どもに複数の選択肢を与え、自分で選ばせる機会を増やします。例えば、「今日の夕食は和食と洋食どちらがいい?」「宿題は食前と食後、どちらに終わらせる?」など、小さなことから練習します。子どもが自分で決めたことに対しては、たとえ親が望む結果でなくても、その決定を尊重し、見守ることが大切です。
2. 失敗を成長の機会と捉える
- 失敗を許容する環境: 子どもが何か新しいことに挑戦し、失敗したとしても、それを責めたり、過度に心配したりしないことが重要です。「失敗は成功のもと」「よく頑張ったね」と肯定的なフィードバックを与えることで、子どもは「失敗しても大丈夫だ」という安心感を持ち、再び挑戦する意欲を育みます。
- 自分で解決する機会を与える: 子どもが困っている時、すぐに答えを教えたり、手を出したりするのではなく、まずは「どうしたらいいと思う?」と問いかけ、自分で考える時間を与えます。必要であれば、ヒントを与えたり、一緒に情報を集めたりするサポートはしますが、あくまで「自分で解決する」プロセスを尊重します。
3. 責任感と自己肯定感の育成
- 役割と責任を与える: 家庭の中で、子どもに年齢に応じた役割と責任を与えます。例えば、食事の準備を手伝わせる、自分の部屋を片付けさせる、ペットの世話をさせるなどです。これらの経験を通じて、子どもは「自分は家族の一員として役に立っている」という自己肯定感を高め、責任感を育みます。
- 小さな成功体験の積み重ね: どんなに小さなことでも、子どもが何かを達成したら、具体的に褒め、その努力を認めます。例えば、「今日の漢字練習、最後まで集中して頑張ったね」「友達と仲直りできてよかったね」などです。これらの成功体験が積み重なることで、「自分にはできる」という自信が育ちます。
4. 親自身の心の安定と成長
子どもの自立を促すためには、親自身が精神的に安定していることが不可欠です。親が不安やストレスを抱えていると、それが無意識のうちに子どもへの過干渉やコントロールに繋がってしまうことがあります。
- 親自身のセルフケア: 趣味の時間を持つ、信頼できる友人に相談する、専門家のサポートを受けるなど、親自身が心身を健康に保つための時間を大切にしましょう。
- 完璧主義を手放す: 「良い親でなければならない」というプレッシャーから解放され、完璧を目指しすぎないことも重要です。時には手を抜き、子どもと一緒に不完全さを楽しむ姿勢も大切です。
- 専門機関との連携: 必要であれば、カウンセリングや教育相談センターなど、専門機関のサポートを積極的に利用することも検討しましょう。客観的な視点や専門的なアドバイスは、親子の関係性を健全な方向へ導く大きな助けとなります。
復学はゴールではなく、新たなスタート
自立を意識した関わりを通じて、子どもが再び学校へ足を踏み入れられるようになったとしても、それがゴールではありません。復学は、子どもが新たな学校生活をスタートさせるための「始まり」に過ぎないです。
復学後も、子どもが学校生活でつまずくことがあるかもしれません。その際も、親は焦らず、これまでの自立を促す姿勢を崩さないことが重要です。子どもが困難に直面した時に、すぐに解決策を与えるのではなく、まずは子どもの話に耳を傾け、子ども自身がどうしたいのかを尊重し、自分で乗り越えるためのサポートを続けることが大切です。
学校側との連携も欠かせません。子どもの状況や家庭での取り組みを学校に伝え、学校側にも自立を促す視点での関わりを協力してもらうことで、よりスムーズな学校生活への適応が可能になります。
まとめ
不登校や母子登校の背後にある「自立心のひくさ」という側面は、見過ごされがちな要因の一つかもしれません。しかし、親がこの問題に真摯に向き合い、子どもの自立を促すコミュニケーションと環境を提供することで、子どもたちは失われた自信を取り戻し、自らの力で学校生活に適応していく力を育むことができるともいえます。
それは決して簡単な道のりではありません。時には、親自身の不安や過去の経験と向き合う必要もあります。
しかし、子どもが自立の翼を広げ、自信を持って社会へと羽ばたいていく姿は、何よりも親にとっての喜びとなるはずです。
不登校や母子登校に悩むご家庭が、この「自立」という視点を持つことで、新たな希望を見出し、子どもと共に前向きな一歩を踏み出すことがあるといいな、と思います。
※最初に書いたように、すべての不登校・母子登校のケースが「自立」が関係しているとはいえませんので、参考までにお読みいただけますと幸いです。
それでは、今回はこれで終わりたいと思います。
さいごまでお読みいただきありがとうございました。また次回のブログもお読みいただけると嬉しいです!
まいどん先生(公認心理師)
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