中学生。不登校に悩んだ親子のお話:前編

中学生。不登校に悩んだ親子のお話:前編

ブログをお読みいただきありがとうございます。

MIKURU・MIRU代表のまいどん先生こと山下です。

前回のブログが好評でしたので、今回は中学生の不登校相談ではどんなケースがあったかを一例としてご紹介したいと思います。

不登校になる背景やきっかけはご家庭によってことなります。

自立に課題があったり、環境の問題だったり、お子さんの性格や特性によるものだったり…と様々なのですが、今回は自立をテーマにせず、色んな要因が複雑に絡んでいたケースを書かせていただきます。

(今回もこうやって解決しました~というより、こんなふうに葛藤している人もいますよ…ということを中心に書きます)

 

↓前回の記事はこちら

 

「一応母子登校をしているのですが…支援を受けていただけないでしょうか」

中学1年生のお子さんが、学校に行けなくなってしまった。というご相談をいただきました。

 

「給食ではなくお弁当持参の日だった日、娘がお弁当に手をつけず帰宅してきたようで。

いつもは帰宅後、必ず手洗いうがいをして脱衣所で制服を脱ぎ、部屋着に着替えてから自分の部屋に行くのに、その日は帰宅後すぐに暗い顔をしながらドスドスと自分の部屋にこもってしまいました。

すぐに大音量で音楽を流し始め、わんわん泣いている声が聞こえてきました…。

私は心配になって部屋をこっそりのぞいたんですけど、娘は泣きながら、ベッドで布団をかぶり、こそこそとお弁当を食べていました。」

 

お母さんは、お嬢さんがどうやら学校で何かがあったらしいと思いつつも、

「大音量で音楽を流して声を出して泣いているということは、母親に泣いていることを知られたくないのだろう」

「しかもベッドで布団をかぶりながらお弁当を食べているということは、お弁当を食べずに帰ってきたことを私に隠したいのよね…」

と考え、気づかないふりをしたといいました。

 

どうしよう、何があったのだろうと思いながら夕食を作っていると、しばらくして音楽がとまり、ドスドスと2階の部屋から降りてきたお嬢さんが「ごちそうさま」と言って、お弁当を流し台に出してきたそうです。

 

「明らかに泣いたよね?という顔だったけれど、私、どうしたのって聞けなかったんです…。娘が話してくれるかもしれないそのあとの話を、うまく聞ける自信がなかった。隠そうとしていることを聞こうとすると、追い詰めてしまうのではという不安があったんです。」

「先生の本を読んで、私の、親の関わりを変えていかないと…と思いました。過干渉や過保護をしてきたという自覚があります。現状、娘はお弁当持参の日から1か月ほど学校を休み、その後行ったり行かなかったりを繰り返しています。行くときは母の私が車で送り届けていて。

先生、私、娘の気持ちが、本当にわからないんです。何を考えているかわからない。心療内科に連れて行ったら、小児鬱と言われました。でも、薬を飲ませても全然よくならなくて…。むしろ娘がどんどん元気がなくなって、弱っていっているようにみえるのです。

先生…一応親が送り届けているということで母子登校をしている我が家の支援を、お願いできないでしょうか。」

ご相談をくださったお母さんは、このようにお話をされていました。

 

私のもとには、低学年の母子登校や不登校以外にも、中学生のご相談もいただくことがあります。

多くのケースでは、このご家庭のように「子どもの気持ちがわからない」ということをお話されていて、かつ、「子どもがリストカットをしている」というご相談も、実は結構多いんです。

 

「リストカットをしていても、私が何をしても、怒らないで」

リストカットのご相談をいただくのは女の子のケースがほとんどなのですが、LINEやメモなどで、親御さんに「私が何をしても怒らないで」と送ってくることも多く、あるお子さんは、そのメッセージを送ってきた日を境に手首にばんそうこうをやたら貼るようになったり、

夜中真冬なのにベランダに出て寝ようとしたり、真夏なのに長袖を着て肌をみせないようになった…というご相談をいただくこともあるのですが、

今回ご紹介しているケースも、お子さんが「リスカをしても、私が何をしても怒らないで」とお母さんに直接言ってきたというのです。

 

「お母さんはその発言に何と返したのですか」と聞くと、「返事はできませんでした」と言います。

「娘が何を考えているか本当にわからなくて、『わかったよ』とも言えないし、『やめなさい』とも言えない。

私はただ、困った顔をして、『…ん…』としか言えなくて。娘は、しばらく私の顔をじっとみたあと、部屋を去っていきました。

その後は何事もなかったかのようにふるまっていますけれど、娘の手首にはあきらかにばんそうこうが貼られているんです…」

「LINEのグループチャットにも参加しているようで、なかなか過激なやりとりもしているようで…でも、やめなさいとは言えないし…」

…と、こんなふうに、お母さんはお子さんとどう向き合うべきかわからなくなっていました。

 

「向き合うのが怖い。でも、向き合わないと娘がそのうち追い詰められて命を絶ってしまうんではないか…と不安で眠れないんです…

先生、あの子は、いったい何を考えているんでしょうか…」

 

カウンセラーをしていると、メンタリストdaigoさんみたいに相手の考えていることを言い当てられるんですか?と言われたりするのですが、

そういうものではなく、『家族療法』の考えかたをベースに、親御さんにご家庭でのやりとりをたくさん情報としていただきながら、

日々状況を把握し、整理し、分析し、考察し、理解していくという手段をとっています。

支援初期のころ、このお母さんは「娘は今何を考えているんでしょうか…」とよく私に質問をされてきていました。

初期のうちは私もそのお子さんのことを知ろうとしている段階でしたので、「きっとこう考えているはず」とは言えなかったのですが、このように言いました。

「おそらく、本当は自傷行為をとめてほしいんだと思います。お母さんに、自分と向き合ってほしいのだろうとも…」

 

家族療法とは

家族のなかに慢性的な心身の不調をきたした人が現れた場合、『二世代・三世代前までも含めた家族全体の大きな問題がその個人を通じて現れた』ととらえるのが家族療法の考え方です。

「慢性的な心身の不調」とはどういうものがあげられるかといえば、鬱や適応障害やアルコール依存症などが代表例ですが、お子さんの不登校もそのひとつです。

お子さんが不登校になった時、多くの親御さんはお子さんの『環境適応力』や『性格』や『学校との相性』や『自立』に目を向けられると思います。
これはものの見方によっては、不登校が起きた要因が『子ども側』にあると考えているともいえます。

 

しかし、一歩ひいてご家庭を見てみると、お母さんが仕事を頑張りすぎて子どもとの時間を十分にとってこれなかったとか、

夫婦仲がめちゃくちゃ悪いわけじゃないけれど素直な気持ちを言い合い分かりあえる関係性でなかったとか、お母さんが精神的に不安定だとか、

親御さんの『精神面が不安定になり心の未熟な面がでたり、ダークサイドに陥った時の思考癖』が関係していたとか、

親御さんの生育歴が関係していたとか、実は子ども側だけに要因があったわけではなく、『家庭の全体の問題』要因があったという場合があります。

 

母子登校や不登校に悩み支援を受けられたケースの大半は、最初は『親の関わりが子どもの自立を遅らせている。関わりそのものを変えて子どもが自立すればこの子は再びひとりで学校に行き、家庭に平和が戻ってくるだろう』とお考えで支援を受けられる方が多いのですが、
支援を受けられていく内に、親御さんが『親側に「子どもの世界観をゆがめてしまう『何か』」があって母子登校や不登校が起きている』と気づかれ、
『自立心をはぐくむ親の関わり以外の課題に、家族療法の視点でより俯瞰的に家庭全体をみて取り組む必要がある』と腰を据えてカウンセリングを受けられ、根本的なところから改善されるケースもあります。

今回のケースでも、お話をおうかがいしていくと、実はお母さんがアダルトチルドレンであったということがわかりました。

ご家庭の中で「いい子」でいないといけない、自分を出すことができない苦しみがあり、ずっと生きづらさがあった…と。

「母親に自分の気持ちを聞いてもらったことはないし、相談したこともない。だから、娘に相談に乗ってもらいたいような雰囲気を出されても、どうしていいかわからなくて、逃げてしまうのです」とお話しするお母さんの話に寄り添い、カウンセリングを通して「自分の感情を誰かに聞いてもらう経験」を積んでもらうことにしました。

 

↓アダルトチルドレンについてはこちらの記事もおすすめです

 

心療内科に通っているのに元気にならない

心療内科などで出されるお薬は、『精神的な症状をなくすのではなく、患者が訴える症状を軽くするために出される』のであって、

 

患者自身が精神を病みやすい考え癖を変えるとか、過去のトラウマと向き合い乗り越えるとか、そういった取り組みをしないと根本的には解決しないといわれます。
「心療内科などにいけば話を聞いてもらえるとか、よい薬を出してもらって悩みがなくなると思って通うとガッカリした」というお話はよく聞くのですが、このケースもそうでした。

 

娘は、薬とかじゃないから。そんなんじゃよくならない。私は病気じゃない。学校に行かない理由がいるっていわれたから仕方なく病院に行っただけ。と言い、病院で出された抗うつ剤を飲みません。」

…とお母さんがなやまれていまして、私としては、お医者さんに出されたものであるならば飲んだ方がいいとは思いつつも、本人の口を無理やり開けて飲ませるわけにはいかないので、それはお医者さんと相談してみていただき、できることに目をむけていきましょうということになりました。

(このケースでは、結局最後までお子さんが薬を飲まず、本人が嫌がり通院をしなくなりました)

 

長くなりましたので、今回はこれでいったん終わりにしたいと思います。また次回のブログもお読みいただけると嬉しいです!

 

※今回の記事はプライバシーの問題でフィクションが含まれています。(現実との境界が曖昧になるような書き方をしています。)

まいどん先生(公認心理師)

 

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