
子どもの話を否定せずに聞いたのに、「それだけ?」「もういい!」と言われるのはなぜでしょうか。
| この記事でお伝えしたいこと
「そっか」という言葉が悪いのではないです。だけど、子どもは、言葉そのものよりも、 いつもの親との違い・その後も一緒に考えてもらえるか・関心を向け続けてもらえるかを感じとっていることがあります。 |
子どもの話を聞くときは、「否定しない」「アドバイスしない」「まず受け止める」ことが大切だと聞き、「そっか」「そうなんだね」と返すようにしている。
ところが、以前より子どもがイライラするようになり、「それだけ?」「ママ、どうしちゃったの?」「もういい!」と言われて会話が終わってしまう…。
一生懸命、接し方を変えようとしているのに、なぜでしょうか。
もしかするとあなたのお子さんは、言葉の内容ではなく、これまでとは違うお母さんの反応に戸惑っているのかもしれません。
今回の場面
動画の中で、お母さんは、これまでのように指示したり、先回りして答えを出したりせず、子どもの話を「そっか」「そうなんだね」と受け止めるようになります。お母さんは、子どもの気持ちを尊重し、自分で考える力を育てようとしています。
ところが、子ども側から見えている世界・感じている内容としては、
「急に『そっか』しか言わなくなった」
「今までは一緒に考えてくれたのに」
という混乱が起きています。
親は関わりすぎないようにしたつもりでも、子どもには、急に関心を向けてもらえなくなったように感じられた可能性があります。
親から見えている世界
お母さんが黙ろうとしたのは、子どもを見放したからではなく、これまで「早く準備しなさい」「次はこれをやりなさい」「こうすればいいよ」と言いすぎていたのではないか、先回りすることで子どもが自分で考えにくくなったのではないかと考え、関わり方を変えようとしたからです。
子どもの自立を願って、自分の言葉を抑えようとした。そこには、子どものために変わりたいというお母さんの努力があります。
子ども側から見た、いくつかの可能性
一方…子どもは、親が関わり方を変えた理由まで理解しているとは限りません。
昨日まで「一緒にやろう」「こうしたら大丈夫だよ」と言っていたお母さんが、突然「そっか」としか言わなくなれば、次のように感じる子もいます。
- もう一緒に考えてくれないの?
- 困っているのに、助けてくれないの?
- 私の話に興味がなくなったの?
- 自分で何とかしなさい、ということ?
- 見放されたの?
すべての子どもが同じように感じるわけではありません。けれども、それまで親の指示や手助けによって行動してきた子どもにとって、関わり方の急な変化は、「自立を任された」というより「支えを突然外された」と感じさせることがあります。
「そっか」という言葉が悪いわけではありません。が…
同じ「そっか」でも、子どもの顔を見ながら続きを待つ「そっか」と、どう返せばよいか分からず会話を終わらせる「そっか」では、子どもが受け取るものが違います。
大切なのは、正しい言葉を使えたかどうかではなく、その言葉が、わが子にどう届いたかを見ることで、
- 「そっか」のあと、子どもは話を続けましたか。
- 表情や声の調子は少し緩みましたか。
- 不満そうになったり、黙り込んだりしましたか。
- 「もういい」と離れていきましたか。
子どもの反応は、今の返し方がその子にどう届いたのかを考える手掛かりになりますので、よく観察されてみてください。
傾聴は、「言葉を繰り返す技法」ではありません
傾聴は、「そっか」「そうなんだね」という定型句を繰り返すことではありません。子どもが経験した世界に関心を向け、「何を伝えようとしているのだろう」「今は聞いてほしいのか、一緒に考えてほしいのか」と確かめ続けることです。
たとえば、子どもが「明日の学校、嫌だな」と言ったとします。「そっか。嫌なんだね」だけで終わらせず、子どもの様子を見ながら、次のように確かめることができます。
- 今日は何かあったの?
- 明日のことで気になっていることがある?
- 今は聞いてほしい? 一緒に考えたほうがいい?
ただし、質問を続ければよいわけでもありません。目的は、親が知りたいことを聞き出すことではなく、子どもが伝えようとしていることに一緒に近づくことが大事です。
「先回りしない」と「支えを外す(やめる)」は違う
必要なのは、親が全部決めることでも、完全に子どもへ任せることでもありません。「まず自分で考えてみる?」「一緒に選択肢を考える?」「困ったところだけ手伝おうか?」と、必要としている支えを確かめながら、少しずつ任せる範囲を広げます。
自立は、親が急に手を離すことで生まれるのではありません。「困ったら助けてもらえる」「失敗しても関係は変わらない」という安心の中で育っていきます。
関わり方を変えるときは、理由も伝えてみましょう
これまで親が多く指示してきた場合、反応だけを突然変えると、子どもは混乱します。次のように、変わろうとしている理由を伝えてもよいでしょう。
- 今まで、お母さんが先に言いすぎていたかもしれないと思っているの。
- これからは、あなたがどうしたいかも聞きながら、一緒に考えたいと思っている。
- 何も手伝わないという意味ではないよ。困ったときは一緒に考えるからね。 など…
理由が分かれば、子どもは親の変化を「見放された」と受け取らずに済むかもしれません。
わが子の場合を考える5つの観察ポイント
次に「そっか」と返したとき、正しくできたかを採点するのではなく、その後の子どもの反応を観察してみてください。
- 「そっか」と言ったあと、子どもは話を続けましたか。
- 子どもの表情、声の調子、身体の緊張はどう変わりましたか。
- 子どもは、共感・質問・助言・手助けのどれを求めていた可能性がありますか。
- 以前の自分は、同じ場面でどのように返していましたか。
- 関わり方を変えた理由を、子どもに説明していましたか。
一度の会話だけで結論を出す必要はありません。朝、帰宅後、寝る前の会話を振り返ると、話を続けやすい返し方と、会話を閉じやすい返し方が少しずつ見えてきます。
今日できる小さなトライ
次に子どもが話し始めたら、まず一度だけ「そっか」と受け止めます。そのあと、すぐに質問や助言を重ねず、表情を見て少し待ってみてください。
子どもが続きを話しそうなら、そのまま聞きます。困った表情をしていたら、「聞いてほしい?」「一緒に考えたほうがいい?」と確かめてみてください。
| 覚えておきたいこと
大切なのは、正しい声かけを覚えることではありません。「今、この子は何を求めているのだろう」と、子どもの反応を見ながら理解を更新する。 |
傾聴だけで終えず、安全確認を優先する場合
子どもの話を待つことが大切な場面がある一方で、次のような兆候がある場合は、家庭内の対話だけで抱え込まず、安全確保と学校・医療・地域の相談機関との連携を優先してください。
- 「消えたい」「死にたい」という言葉、自傷行為またはその疑いがある。
- 暴力、継続的ないじめ、性的な被害や不適切な接触が疑われる。
- 強い身体症状やパニックが続き、食事や睡眠が大きく崩れている。
- 特定の教師や友達を極端に恐れ、子どもだけでは危険を避けられない。
この場合も、可能な範囲で「あなたを守るために、誰に相談するか一緒に考えたい」と説明し、子どもの経験を尊重しながら大人が責任を持って動きます。
詳しい動画解説
実際の親子のやり取りと、共感・質問・助言を使い分ける考え方は、関連動画で詳しく解説します。
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- 子どもの話を最後まで聞けていたか。
- 相づちのあと、子どもはどう反応したか。
- すぐにアドバイスしていなかったか。
- 子どもの感情に関心を向けられたか。
- 自分の不安に引っ張られていなかったか。
これは、正しい声かけを覚えるための冊子ではなく、わが子を理解し続ける関係へ入るための、最初の観察ツールの参考として、ご活用いただけたら嬉しいです!
一人で意味づけすることが難しいときは
会話を記録しても、「このとき、どう受け止めればよかったのだろう」「子どもは何を求めていたのだろう」と分からなくなることがあります。
親子のやり取りは、一つの言葉だけでは判断できません。その前に何があったのか、家庭や学校で何が起きていたのか、親がどう返し、その後に子どもがどう変化したのかを一緒に振り返ることで、別の見方が見えてくることがあります。
一人では分からないところを、ぜひ、一緒に考えてみましょう。
少しでも、この内容がどなたかのお役に立てれば幸いです。
さいごまでお読みいただきありがとうございました。また次回のブログもお読みいただけると嬉しいです!
まいどん先生・山下真理子先生(MIKURU・MIRU代表/公認心理師/支援歴15年目)
※本記事は、日常の親子のやり取りを理解するための一般的な情報です。個別の診断や治療に代わるものではありません。
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