
共感してもうまくいかない…なぜ?【思春期・不登校のお母さん向け解説】
ブログをお読みいただきありがとうございます!MIKURU・MIRU(ミクル・ミル)代表、公認心理師の山下です。
この記事はこんな方におすすめ
- 不登校・思春期の子どもに共感しても、かみ合わない
- むしろ、子どもがますます甘えるように見えることがある
まず、この記事の結論は、
|
共感すると甘えが増えるのではない。 共感が「決めつけ」「全面的な同意」「回避への協力」に変わると、 親子のやりとりがかみ合わず、回避や依存的な行動が維持されることがある |
…ということになります。
「共感の言葉」と「理解できていること」は違う

たとえば、子どもが「学校に行きたくない」と言ったときに、
- 「怖いんだね」
- 「疲れたんだね」
- 「今は休みたいんだね」
- 「お母さんにそばにいてほしいんだね」
と返すこと、ありませんか?
でも実は、こう言った言葉たちって、子ども自身が実際に言ったことではなく、親が推測した気持ちだったりしませんか?
子どもはただ、「学校に行きたくない」と言っただけ。そういうこと、ないでしょうか。
発達心理学では、子どもの行動を心の状態と結びつけて理解しようとする親の働きを、マインド・マインデッドネスや親のメンタライジングとして研究しています。
この研究で重要なのは、子どもの状態に合った推測ができているか、適切に調律されているかです。
Meinsらの縦断研究では、乳児の心の状態を適切に読み取って言葉にする親のコメントは、後の心の理解と関連しました。(後に子どもが自分の気持ちを理解・言葉にしやすくなる)
一方、子どもの状態とずれたコメントには同じ効果がなく、別の研究では、ずれた心の読み取りが不安定な愛着と関連していました。
なので、実は「つらいんだね」と言えば共感になるわけではありません。
子どもからすると、「いや、そういうことじゃない」「また勝手に決められた」「私の話を聞く前に、答えを出された」と感じて嫌がられてしまうことがあります。(せっかく頑張っているのに)
動画で話している「共感しているのにかみ合わない」は、共感が不足しているというより、親の推測と子どもの実際の内面がずれている状態ということになります。
👇「共感がセリフ化すると会話ができなくなる」についてのショート解説動画はこちらから。
メンタライジングとは。メンタライジングには「わからなさ」が必要

メンタライジングは、ひと言でいうと、『自分や相手の行動の奥にある「気持ち・考え・願い・不安」を想像してみる力』です。
たとえば、子どもが朝になって「学校に行かない!」と怒った→行動だけを見ると、
- わがまま
- 反抗している
- 怠けている
- 親を困らせている
ように見えるかもしれませんが、すぐに決めつけずに、
「何があって、こんなに怒っているのだろう」
「本当は怖いのかな」
「行けない自分を責めているのかな」
「急かされて、自分で決められない感じがしたのかな」
と、行動の背景にある心を考えることを指します。
大切なのは「心を言い当てること」ではない
メンタライジングは、相手の心を正確に見抜く能力ではなく、相手の心は、本当のところ完全には分からないという前提に立つことが大事です。
これは、たとえ親であってもです。
「あなたは学校が怖いんでしょ」と断定するのではなく、「学校が怖いようにも見えたけど、違うかな」行きたくない気持ちには、どんなものが混ざっているんだろう」みたいに、分かろうとすることと、分かったつもりになることをきちんと区別して関わることが重要です。
共感との違い

共感は、
「つらかったね」「嫌だったんだね」
と、相手の体験に寄り添いますが、
メンタライジングは、そこからもう一歩進んで、
「どうして、そこまでつらくなったのだろう」
「本人は、この出来事をどう受け取ったのだろう」
「私の言い方は、本人にはどう聞こえたのだろう」
と、自分と相手の心の動きを考えることをします。
という違いがあります。 |
親子の場面で考えると
例1 子どもが「お母さんも学校に来て」と言う
表面的には、母親に甘えているように見えますが、背景には、
- 一人では不安
- 先生に何か聞かれるのが怖い
- 失敗を見られたくない
- 母親がいれば途中で帰れる
- 自分で説明する自信がない
- 母親と離れること自体が怖い
など、いくつもの可能性があるかもしれません。
そして、メンタライジングでは、「一緒に来てほしいのは、離れるのが怖いからかな。それとも、学校で何かあったときに説明してほしいからかな」
と考えたり確認することを大事にします。
同じ「付き添って」という言葉でも、理由が違えば必要な支援も変わりますよね。
例2 子どもが親に暴言を吐く
親は暴言を吐かれると、「私を嫌っているのかも」と受け取りやすくなりがちですが、
- 本当は助けてほしい
- 自分でも気持ちを整理できない
- 恥ずかしさを怒りで隠している
- 自分を責められる前に相手を攻撃している
- 親なら見捨てないと思って感情を出している
…という可能性もあります。めっちゃ。十分に。むしろ暴言を吐く子たちって、親のこと好きなことがほとんどだなぁと思います。
「すごく腹が立っているのは分かった。でも、その言い方では話を続けられないから、少し落ち着いてから、何があったか教えてね」と冷静に関わろうとすると、本音が聞きだしやすくなることがあります。
自分自身へのメンタライジングも必要
メンタライジングは、実は子どもの心を考えるだけではなく、親自身が、
「私は、今なぜこんなに焦っているんだろう」
「学校に行かないことより、周囲にどう思われるかが怖いのかもしれない」
「子どもの怒りを見て、自分が否定されたように感じた」
「私が不安だから、すぐに答えを出したくなっている」
と、自分の心を見ることも大事です。親が自分の感情に気づかないままだと、
- 心配が質問攻めになる
- 不安が過干渉になる
- 無力感が怒りになる
- 焦りが説得になる
- 悲しさが「もう知らない」になる
ことがあるからです。
自分の感情を言葉にできると、感情にそのまま動かされにくくなるので、私はこのお母さんの本音を引き出すカウンセリングをとても大事にしています。
感情を認めることと、子どもの結論を採用することは違う

例えば子どもが、「教室が怖い。今日は絶対に行かない」と言ったとします。
メンタライジング的には、「怖い」という感情があることを知る・認めることは大切ですよね。だけど、
怖い
=今日は行かないほうがよい
=今後も教室を避けたほうがよい
とは限りません。
感情の妥当性と、本人が出した結論の妥当性は別という視点はとっても大事だと思います。
だから、「教室が怖いんだね。だから今日は休もう」まで結論が出てしまうと、共感だけでなく、子どもの回避判断を親が代わりにしてあげることになるので、こどもの感情を否定せず、同時に、不安が出た瞬間にすべての課題を取り除こうともせず、今は何からやっていけるか?を考えていくことも大切です。
「共感」が回避への協力に変わることがある
子どもの不安を下げるために、家族が生活や行動を変えることは、家族による適応・巻き込まれ行動(family accommodation)と呼ばれます。
たとえば、
- 親が常に子どもの代わりに先生へすべて説明する
- 不安になりそうな活動をすべて避ける
- 何度も「絶対大丈夫」と保証する
- 子どもが嫌がるたびに予定を変更する
- 本人ができることも親が代わる
といった対応です。
これらは、子どもを苦しませたくない親の自然な保護反応ですが、その場では不安が下がるため、子どもは「避ければ助かる」「親がいなければ対処できない」と学習しやすくなります。(もちろん特性・配慮が必要なケースもあるので、一般化はできません)
なので、温かく共感することと、不安に合わせて家族全体が動くことは別だということもすこし頭にいれてみていただくといいかもしれません。
「怖いよね」と言いながら、「でも、あなたにはこの一部分はできると思っている」と伝えることができると、チャレンジすることが増えるかもしれないからです。
「甘えが増えた」と感じるとき、何が起きているのか
「共感するようになったら、抱っこや付き添いをさらに求めるようになった」ということは、実際の相談現場で起こるのですが、これは「共感によって甘えが強化された」とは断定できません。
少なくとも三つの可能性があります。
安全になって、これまで出せなかった欲求を出している
以前は叱られると思って我慢していた子が、親の受け止め方が変わったことで要求を表現し始めることがあります。この場合、表出が増えただけで、心理的な依存が悪化したとは限りません。
親がどこまで受け入れるか確かめている
関係が不安定だった子は、要求を強めたり繰り返したりしながら、親の反応の一貫性を確かめることがあります。
不安を避けるための行動が強化されている
子どもが不安を示すたびに課題がなくなり、親の援助が増える場合には、回避行動が維持される可能性があります。
なので、この場合は「甘えか、つらさか」の二択ではなく、具体的な場面ごとに見る必要があると思います。
まとめ
子どもの気持ちに共感することは大切です。
ですが、共感とは、子どもの内面を大人が決めつけたり、本人の解釈や回避の結論に全面的に同意したりすることではありません。
親は「わかったつもり」にならず、子どもの心を仮説として尋ね直す必要があり、そのうえで、感情は受け止めながらも、子どもが不安に対処する機会まで取り除かないことが重要ではないかと考えます。
「子どもの体験を正確に理解しよう」という姿勢があると、やりとりがしやすくなる・ちょっとだけ子どもの考えていることがわかるようになることがあるかもしれません。
表面的な共感から、見立てを伴うメンタライジングへ進もう。今回は、そんなお話でした。
さいごまでお読みいただきありがとうございました。また次回のブログもお読みいただけると嬉しいです!
まいどん先生(公認心理師)
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