母子登校・付き添い登校の朝、「一人で行けない」「動画をやめられない」ときに考えたいこと
母子登校や付き添い登校が始まると、朝にはいろいろなことが起こります。
「通学班では行けない。でも、お母さんと二人なら行ける」
「学校には行くと言っている。でも、朝からYouTubeを見始めて止まらない」
「ゲームをやめるよう言ったら、そこから親子げんかになってしまった」…などなど…。
そして親御さんは、
付き添ったら、ますます一人で行けなくなるのでは?
朝から動画なんて見せているから、学校へ行けないのでは?
…と悩むこともあるのではないかとも思います。
母子登校・付き添い登校のご相談では、とてもよく出てくる悩みで、私は、こういうときほど、「正しいか・間違っているか」だけで考えないほうがいいと思っています。
動画から、母子登校・付き添い登校の朝に大切にしたい考え方をまとめたいと思います。
「一人で行けない。でも、お母さんとなら行ける」
たとえば、通学班では学校へ行けない。同級生と一緒に歩くのもやだ。でも、「お母さんと二人だったら行ける」「少し遅い時間だったら行ける」という子がいます。
ここで親御さんが悩むのが、「付き添ってしまっていいのでしょうか」ということです。
自立のためには、一人で行かせたほうがいいのではないか?ここで母子登校を認めたら、ずっと付き添うことになるのではないか?
そんな不安が出てきて当然だと思うのですが、答えを出す前に…「一人で行けるか、行けないか」だけでは考えないほうがいいと考えています。
母子登校はなぜ起きるのか?
一人では学校へ行けないけど、お母さんと一緒なら行ける。
長期休み明けや登校しぶりが出始めた時期には、学校生活のリズムへ戻るまで時間が必要な子もいます。
一学期に友人関係や先生との関係、授業などで少ししんどさを抱えていた子なら、なおさらです。
そんなとき、「今が大事なときだから、一人で行きなさい」と急に負荷を上げることで、かえって行き渋りが強くなることもありますし、実際の支援現場ではそういうシーンをたくさんみてきました。
だから、私は一時的な付き添いを、自立への橋渡しとして活用する考え方もあってよいと思っています。
たとえば最初は、
お母さんと家から学校まで歩く→慣れてきたら途中まで一緒に行くとか、下駄箱まで。校門の前まで。マンションのエントランスまで…
のように、その子の状態を見ながらサポートを少しずつ変え、最初から「一人で行く」ことを成功にしなくてもいいのではないかと思います。(もちろんお母さんの負担爆上がりなんですが)
動画でも、付き添いながら少しずつ離れていけるのであれば、一時的な伴走として使うという考え方をお話ししています。
だけど、ただ「付き添えばいい」ということではない
ただ、とはいえ、母子登校を肯定することと、何年でも同じ形で付き添い続ければよいということは別で、
付き添う時間がどんどん長くなっているとか、以前より、お母さんから離れられなくなっているとか、
学校以外でも母親との分離が難しくなっているとか、付き添いを増やしているのに、登校できる範囲が狭くなっている…という場合には、現在の付き添い方そのものを見直したほうがよいことがあります。
そして、もう一つ多いのが「朝の動画・ゲーム問題」。
母子登校や登校しぶりの家庭で、かなりよく聞くのが、朝からYouTubeやゲームを見ていて、なかなか出発できないという問題です。
時間になってもやめない。
「もう学校行く時間だよ」と言う。
「分かってる!」
と言いながら見続ける。
親がスマホやゲーム機を取り上げようとする。
怒る。
そこから大げんか。
気がついたら、学校へ行くどころではなくなっている。
……朝からこれは、本当に消耗します。
外から見ると、「そりゃ朝からゲームさせていたら学校へ行かなくなるでしょ」と思われるかもしれません。
でも実際のご家庭では、そんな単純な経緯ではないことが多いんです。
最初は、「学校へ行きたくない」と泣く子どもを落ち着かせるためだったかもしれません。
動画を少し見ると気持ちが切り替わって、学校へ行けた。だから親も、「これで行けるなら……」と朝のスクリーンタイムを使うようになった。
あるいは、禁止していたけれど、いつの間にか子どもが自分で見るようになっていた。
いろいろな経緯があります。
親がルーズだったから、今こうなったみたいな単純な話ではないはずです。
最初は「助け」だったものが、後から困りごとになることがある
最初は役に立っていた。
お母さんが一緒だったから学校へ行けたとか、動画を見たから気持ちを切り替えられた…とか。
ところが時間が経つと、「お母さんがいないと無理」「動画を最後まで見ないと出発できない」という形に変わってくることがあります。
すると、役に立った方法が、そのままずっと最適とは限らないという話になってきます。
「だから最初からやらなければよかった」というわけではなく、そのときは、本当に、その方法が必要だったんだけど、子どもの状態が変わったなら、支え方も変えていくというような柔軟性の話だと思ってみていただけたらと思います。
朝のゲームを「明日から禁止!」にするとどうなる?
動画では、朝のスクリーンタイムについて、いきなり「今日から禁止!」にする方法だけではなく、段階的に変えていくことをお勧めしています。
登校前の朝は、もともと親子ともに余裕がありませんよね。
そこで新たに、「スマホを返しなさい!」戦争が始まってしまうと、学校へ行くためのエネルギーをそこで使い切ってしまうことがあります。
だから、
0か100かではなく、少しずつ調整する
ことが大事で、たとえば、
「今まで30分見ていたなら、まず25分にしてみよう」という感じで、実際に毎日どのくらい見ているのかを記録して、
30分
↓
25分
↓
20分
というように、少しずつ調整していく。(動画でも、スクリーンタイムを数えて可視化しながら、段階的に減らしていく方法を紹介しています。)
あるいは、「朝は何時から何時まで」とルールを親子で確認する方法もあります。
大切なのは、親が毎朝怒鳴って終了させる仕組みから、子ども自身が切り替えられる仕組みに変えていくことだとわたしは思います。
「動画をやめられない」に批判的になりすぎない
さらに、一歩俯瞰で状況をみた時に、「なぜ、その子は朝に動画を必要としているのか」も考えたほうがいいと考えます。
単純に楽しいからかもしれないし、習慣になっているのかもしれない。
でも中には、学校のことを考えたくない。出発時刻が近づくのが怖い。動画を見ている間だけ、学校のことを忘れられる。
…という子もいます。
動画でも、スクリーンタイムが「現実から距離を取るため」に使われている可能性も含め、環境や子どもの状態を見る必要性に触れていますが、
この場合、スマホだけを取り上げても、動画の下にあった「学校がしんどい」は残ります。
だからこそ、「ゲームをどうやめさせるか」だけではなく、「この子はいま、何から逃れようとしているんだろう」まで見ていくことが大切だと思います。
母子登校も、動画も、「原因」ではなく「結果」かもしれない
ここが今回、ご紹介した動画を通して一番お伝えしたいところです。
母子登校だから自立できないとか、
付き添い登校をしているから依存するとか、
朝からゲームをしているから学校へ行けないとか…。
こう考えたくなるのもわかるのですが、順番が逆の場合があります。
一人では学校へ行けないほ日々の負荷が高いから、一時的に母親を必要としている。
学校へ向かう不安を何とかやり過ごしたくて、動画を見ている。
という可能性があるかもしれません。
もちろん、だから何でも認めればよいわけではありませんが、でも、「これさえ取り除けば解決する」と考えてしまうと、その行動が必要になった背景を見失ってしまいます。実際に、動画・スマホ・ゲームは悪でしかないと信じて急にデバイスたちを没収したご家庭が大荒れしてえらいこっちゃになった例を嫌というほど私はみてきています。(警察・児相案件になったり…)
「いま必要な支え」と「これから減らしたい支え」を分けて考える
だから、私は、母子登校・付き添い登校で悩まれているご家庭の支援では、「今、必要だから使っている支え」と、「将来的には少しずつ手放していきたい支え」を分けて考えることが大切だと思っています。
お母さんとの登校も、朝の動画も、「使っている=悪い(甘えさせてる)」というふうに見ないようにすること。
一方で、「今役立っている=ずっと続ければよい」でもなく。
今日、この子が学校へ向かうために必要なものは何か。
そして、1か月後、3か月後には、どこを少し自分でできるようになっていたいのか。
子どもの行動だけを見ると、「甘えている」「依存している」「ゲームばかりしている」「言うことを聞かない」と見えてしまうことがあると思いますが、そんなときは、少し範囲を広げてみてください。
その前に、何があったのか。
その行動をすると、子どもは何が楽になるのか。
親がその対応を始めたのは、どんな経緯からだったのか。
そして、
その方法は、今もその子を前に進ませているのか。
ここまで見てみると、同じ「母子登校」でも、同じ「朝のYouTube」でも、必要な対応は違ってくるはずです。
まとめ|「なくすこと」より、「必要なくなる方向」を考える
母子登校や付き添い登校をしていると、「いつ一人で行かせる?」「いつ付き添いをやめる?」「いつゲームを禁止する?」と、
何かをやめるタイミングばかりが気になります。
でも、大事なのは、【どうしたら、それを今ほど必要としなくなるだろう?】ということなのだと思います。
付き添いを無理にやめるのではなく、一人でできる部分を少しずつ増やしていく。
動画を力ずくで取り上げるのではなく、自分で切り替えられる仕組みを少しずつつくる。
そして、その背景に学校でのしんどさがあるなら、そこにも目を向けるなど。
母子登校・付き添い登校では、目の前の行動を止めることより、子どもがその行動を必要としている理由を理解することから始めたほうが、結果的に次の一歩につながることがあります。
少しでも、この内容がどなたかのお役に立てれば幸いです。
さいごまでお読みいただきありがとうございました。また次回のブログもお読みいただけると嬉しいです!
まいどん先生・山下真理子(公認心理師)
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