不登校・母子登校支援で変わる母と子の関係「心理的依存」と「自立」
ブログをお読みいただきありがとうございます。
ノロ、インフル、アデノ…に続き、普通の風邪を娘からもらい、咳が長引いている山下です。
喋る仕事なので、咳が止まらない・続く…というのはカウンセリングに影響が出るなぁと思いつつ、対面カウンセリングではないので親御さんにうつしてしまう心配をしなくていいのはよいな…と思う今日この頃です。
咳がピークの日は、ひっそり通話中にミュートボタンをこまめに押させていただきながら、コンコンと咳こんでおりました。
小さい子どもがいると、こういうことがあるんだな…といつも世のお母さんがたを尊敬しております。
みなさん、いつも本当にお疲れ様です…
今回の記事は、「私はAC(アダルトチルドレン)です」「私はHSPです」「機能不全家族のもとで育ちました」といったかたに向けた内容になります。MIKURU・MIRUでは、単に不登校や母子登校の悩みを解決する・子供の自立を目指すというような支援だけではなく、親御さんの心のケアにも力を入れているのですが、具体的にどのようなことをしているのか?ということを書いてみたいなと思います。
「不登校支援で変わる母と子の関係「心理的依存と心の避難所としての支援」
過去の親子関係や、パートナーとの関係性に息苦しさを感じ、
「自分はダメな親だ」「なぜうまくいかないんだ」と責めてしまうことはありますか。
幼い頃、親との関係で安心感を得られなかったり、自分の気持ちを受け止めてもらえなかった経験(愛着形成の課題)は、大人になってからの人間関係や自己肯定感に影響を与えることがあります。
愛着理論では、子どもの心の中に養育者(お母さんなど)のイメージが取り込まれ、安心できる場所(安全基地)として機能すると考えられています。たとえ物理的にそばにいなくても、心の中にそのイメージがあるだけで安心感を得られるというものです。
私自身、そういう愛着形成が小さいころにちゃんとできていたか?と聞かれると、答えはNOです。
私を知っている親御さん方がこのブログを読んだら、「ああ、山下先生はそうだよね。うんうん」と頷かれるはずです。
むしろ私が「え、愛着ですか?しっかりはぐくまれた自覚、めっちゃありますよ。私には安全基地が、あります」なんて話したら、全員ひっくり返るだろうなと思うくらい、私を知っている親御さんたちは、「そうよね。」となるはずです。
もし、このブログを読んでくださっているあなたが、幼少期に「安全基地」を十分に心に築けなかったとしても、希望はあります。
じつは、大人になってからでも、安心できる支援的な人間関係を経験することで、不安定だった愛着スタイルを「獲得された安定型(earned secure)」というものへと変えていくことができると言われています。
温かいまなざしと共感に満ちた関係を通じて、心の中に安全基地となる存在を取り戻し、心理的な安定を取り戻すことができるんだそうです。
MIKURU・MIRU(ミクル・ミル)の支援も、まさにこの「心理的な母性」の再体験の提供を意識しています。
支援を受けたお母さんの中には、
「先生とのカウンセリングが傷ついた心を癒してくれた」
「まるでもう一人の親かパートナーみたいな不思議な存在だった」
と語る方もいます。
このような関係性の中で、「自分は失敗しても見捨てられない大切な存在だ」という感覚を得る。
この感覚こそが、「内在化された支え」となっていくと考えています。
愛着理論でも、安全な愛着が形成されることで
「自分は受け容れられる存在だ」「他者は信頼できる存在だ」
という肯定的な自己イメージや他者イメージ(内的作業モデル)が育まれるとされています。
大人の支援関係でも、肯定的なまなざしを経験することは、「内在化された母性」として心の拠り所(アンカー)となり、自己肯定感や対人信頼感を支えてくれます。
一時的な依存がもつ意味とは
「依存」と聞くと、ネガティブなイメージを持つかもしれません。
しかし、心を修復していく過程で、支援者に一時的に心理的に依存することは、決して異常なことではなく、むしろ重要な役割を果たします。日本の精神科医である土居健郎さんは、「人には他者に甘える(依存する)欲求があり、それは本来、幼児期の母子関係に顕著なものだ」と指摘しました。
幼い頃に十分に甘えることができなかった人は、大人になってからも無意識のうちに誰かに受け入れてもらいたい欲求が強く現れる傾向があります。特に、過去に親との関係で困難を抱え、自分に自信が持てないために周囲の人の意見に振り回されたり、誰かに頼ってしまったりすることがあると報告されています。
支援者から無条件のような受容や共感を得る体験は、深い安らぎや、居場所を見つけられたような感覚にも似た心理的な充足感をもたらし得ますが、それらがお子さんへのかかわりにプラスに働いていきます。
「なんだか電話カウンセリングの後は、数日、私は子どもに優しくできる」
「1週間後の電話を楽しみに、イラっとしてつい子供を責めてしまうような言葉をかけそうな自分にストップできるようになってきました」
というような言葉もよくいただくのですが、これは、「不登校や母子登校の解決に向かってどうしていけばいいかが分かったから」だけではない心のなかのポカポカした感覚が影響しているんではないかと考えています。
心理療法においては、クライアントがセラピストに悩みの解決を全面的に委ね、大きな力を持つ存在だと理想化する現象(陽性の転移)が知られていますが、この陽性的な転移は、治療関係を強力な癒しの場にする一方で、依存を助長し「治療から離れられなくなる」危険性もはらんでいます。
支援現場では、「カウンセリング継続中、クライアントはある意味カウンセラーに依存した状態になる。そこで自立のベースを築きます。ただし問題になるのは、いつまでもカウンセラーに固執し自分の問題を自分で解決しようとしない場合」であるということが課題になりやすいです。
そこで私としては、一時的な依存を単純に悪いものと捉えるのではなく、その一時的な必要性と心理的な治癒効果を認めつつ、クライアントが健全な自立へと向かえるようバランスを取ることが重要だと考えています。
日本文化は歴史的に、父性的な厳格さよりも母性的な包含原理が強く、「甘え」を許容する土壌があると言われています。
母性的な関わりとは、自分と他者の境界があいまいな乳幼児期の母子一体感の心理に基づいたもので、人はそこに原初的な安心と帰属を求めることがあります。同様に、支援者との関係がクライアントにとって疑似的な母子一体感や共同体意識を生み出すことがあり、支援者は「自分を無条件に受け入れてくれる大いなる存在」のように感じられる場合があります。
それはまさに心の拠り所ですが、支援者自身がそれを自覚的に扱い、依存が固定化しないよう導くことで、クライアントにとって安全な心理的な避難所(ターム)として機能します。この避難所的な依存関係の中で、クライアントは自分の傷ついた内面を癒やし、安定を取り戻す足場を築いていくと考えています。
依存から自立へ、そして心に灯る「お守り」
支援関係の最終的なゴールは、クライアントが支援者から心理的に自立し、自分の力で人生を歩めるようになることです。
私としては、「支援を受けても支援から離れた途端に不安でいっぱい・・・という状態にはしたくない」と考えており、支援の過程そのものが親御さんの価値観を大きく変える体験的な学びになることを重視していきたいと思っています。
単に「子どもを自立させる方法」といった具体的な答えを与えるのではなく、カウンセリングを通じて親御さん自身が自己と向き合い、価値観や物事の捉え方を変容させることを目指しています。これは、答えを提供するのではなく、対話を通じてクライアント自身の気づきを促すアプローチであり、依存から自立への大切な橋渡しとなります。
実際にMIKURU・MIRUの支援を受けたお母さんは、1年余りで大きな変化を遂げています。
支援が始まった頃は不安や迷いの中で支援者の言葉に頼ることもありましたが、徐々に親自身が成長し、家庭に良い変化が生まれました。
そのお母さんは、「特別なことはしていないかもしれないが、我が家はいろんなことが大きく変わった」と振り返っています。
報告されている変化には、次のようなものがあります。
・夫婦間の対話が増え、お互いの思いを共有できるようになった。
・子どもが自分らしく生き生きと振る舞えるようになった。
・親が子どものありのままを認められるようになり、関係が安定した。
・自分自身を客観視できるようになり、感情に振り回されにくくなった。
・いつでも「自分には味方がいる」と思える心の支えができた。
・「完璧にやらなくていい」「不器用でいい」と、自分と家庭のペースを受け容れられるようになった。
このように、支援を通じて親自身の考え方や態度が変わり、新たな視点と心の余裕が生まれています。
特に注目すべきは、「どんなときでも自分には味方がいる」という感覚が芽生えた点だと思います。
これは、支援者との信頼関係がクライアントの中にしっかりと根付き、支援者がそばにいなくても心の中に支え手が存在している状態といえるかもしれません。支援者という「外在的な母性」がクライアントの心の中に取り込まれ、自分自身を支える働きを始めたと考えることもできます。
その結果、親御さんは困難に直面しても、心の中で支援者の声かけや温かいまなざしを思い出し、自分の力で安定を取り戻せるようになります。
これは、幼い子どもがお気に入りのぬいぐるみ(トランジショナルオブジェクト)を持つことで安心するのと少し似ています。
支援者との温かい関係性の記憶が、大人のクライアントにとっての「心のお守り」となるのかもしれません。
私は、親御さんが最初はこちらのアドバイスに頼っていたとしても、最終的には自分自身の力で歩めるよう、支援者は段階的にサポートを手放していくべきだと考えています。
支援者が常にそばにいて「正解」を与え続ける関係では、親御さんの中に不安が残ってしまうからです。
そのため、支援の後期には親御さん自身が自分で考え、判断できるよう働きかけ、支援からの「卒業」(終結)を見据えた関わりに変化していきます。
心理療法でも終結期は治療の成否を左右する重要な段階とされ、セラピストが依存を助長しないよう注意深くクライアントの自立を促すことが求められます。MIKURU・MIRUの支援でも、「いずれは支援を卒業する日が来る」ことを見据え、最後は親が自分の選択に自信を持てる状態で送り出すことを目標に掲げています。
夫婦関係や毒親の影響を受けた親御さんへの支援
不登校や母子登校の背景に夫婦関係の不和や、幼少期の親子関係に困難を抱えている人にとって、第三者による支援の存在は心理的な避難所として非常に大きな意味を持つと考えます。
パートナーとの関係がうまくいかなかったり、配偶者から理解や共感が得られない場合、親御さんは孤独と不安の中で子育てや人生の課題に向き合わなければなりません。本来であれば配偶者や家族から得られるはずの情緒的なサポートが得られないため、支援者が、一時的に代替的なサポートシステムとなることができます。
育ちの中で親との関係に課題を抱えてきた人々にとって、支援者との関係は、人生で初めて経験する健全な愛着関係のモデルとなる可能性があります。
過去の親子関係の影響で自己肯定感が低く、「自分はダメだ」という思い込みを抱えやすく、他者に過剰に依存したり、相手の顔色ばかりをうかがってしまう親御さんに本当に必要なのは、「無条件に受け入れてもらえた」という感覚的な体験なのですが、支援者との関係の中で、これまで満たされなかった愛着の欲求が満たされるとき、親御さんの中で何かが癒やされ、変化が始まります。
あるお母さんは、
「もしあの時、自分が子どもを抑えつけ理解しようとしないままだったら、
この子も将来同じことをしていたかもしれない。でも今はきっと自分より上手にやれるはずだと確信しています」
といいました。
こんなふうに、心理的な避難所があるということは、親から子への負の連鎖を断ち切るきっかけともなり得ます。
支援者との信頼関係の中で得た「内在化された母性」により、親御さんは過去の心の傷つきに向き合いながら、
「自分は子どもに同じ思いをさせない」という新たな信念と指針を手に入れます。
これは心理的に見れば「新しい内的作業モデル」の獲得であり、支援者との関係が親御さん自身の中に
「健康的な親のイメージ」として根付いたことを意味するのかもしれません。
さらに、幼少期の経験からくる心の傷つきを抱える人にとって、支援者は安心して「甘え直し」のできる相手でもあります。
幼少期に満たされなかった甘えの欲求を、支援者との関係の中で健全な形で表現し、受け止めてもらうことは「心理的な再育成(リペアレンティング)」とも言えるプロセスです。
例えば、カウンセリングの場でクライアントが子どものように涙を流して本音をぶつけても、支援者がそれを拒まず受け止めてくれた経験は、クライアントの中に「本当の自分を出してもいいのだ」という深い安堵をもたらします。
これは親子関係における「肯定的な追体験」となり、理想的な母子のイメージがクライアントの心に内在化していくことで、自分の子育てへの指針や心の支えを得られるという研究報告もあります。言い換えれば、支援者との関係を通じてクライアントは、自分の中に優しいお母さん」をもう一人育て直すような体験をしているともいえます。その内なる母性的な存在が、今度はクライアント自身が親として子どもに接する際のモデルとなり、健全な養育態度へとつながっていくと信じています。
依存から自立へ。支援の終わり方
親御さん自身に体験してもらうことで、子どもとの適切な関係性の築き方や依存→自立へのプロセスをふみやすくなる
最初は、親御さんの安心感や信頼の基盤(安全基地)を築く。
心理的な支えを得た親御さんには次第に自分自身を見つめ直し、行動を変えていく余裕を持てるようになります。
支援中期以降は、支援者が徐々に答えを与えるのではなく、対話を通じて親御さん自身が考える機会を増やし、自分を大切に思う気持ちや問題解決能力を育んでいきます。
そして終盤では、支援に頼らなくてもやっていけるという自信を親御さんにもってもらい、「卒業」(終結)を見据えた関わりへとシフトします。
じつはこの一連のプロセスは、まさに「依存から自立」への道筋といえます。
お子さんに対し過保護・過干渉的になりやすい方の場合、まず、「依存する」「安全基地を体験する」ということができていない場合があります。子ども時代に、子どもらしくいられなかったという親御さんが多いです。
そういったかたが、いくらお子さんに寄り添おう・理解しようと思っても、
「私があんたくらいの年齢の時は、親に頼らずに全部自分でしてたけどね?!」と、お子さんの様子を見て「甘えだ」と嫌悪感をもってしまったり、どこか優しくしているつもりなのにとげとげしくなってしまうことがあります。
まずはその状態から脱出しないことには、なかなか穏やかな(あるいは過保護・過干渉から脱した)子育てができなくなることがあるので、カウンセリングを通じて、親御さん自身が変化していきながら、お子さんの復学や、暴言や暴力などの問題行動現象を目指しています。
まとめ:内在化された母性は「支援の実り」
最初は母子のような養護的な関係性であっても、クライアントの成長に応じて対等な関係や、時には教師やコーチのような関係へと変わっていきます。
必要に応じて距離感を調整し、クライアントが支援者抜きでも機能できるよう見守ることで、依存は次第に卒業の日を迎えるにつれて自然と薄れていきます。
これは親子関係で言えば子離れ・親離れの過程に相当し、支援者に内在化された新しい支えを胸に親御さんが羽ばたく瞬間です。
支援者にとって最大の喜びは、親御さんが「もう大丈夫です」と巣立っていく姿を見ることかもしれません。
支援関係の終結とは、別れではなく、「その人の中に支援者が生きるようになった」ことの証と考えてもいいのかもしれません。
依存から始まり、自立へ向かい、最後にはその存在が内なる力となって心を支える。
その旅路に寄り添えることが、私にとって支援者としての誇りでもあります。
それでは、今回はこれで終わりたいと思います。
さいごまでお読みいただきありがとうございました。また次回のブログもお読みいただけると嬉しいです!
まいどん先生(公認心理師)
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