低学年の不登校。「うちの子、なんで学校行きたくないんだろう?」
「ねぇ、お母さん。明日も学校行かなきゃダメ?」
朝、パジャマ姿のまま、お子さんが小さな声で尋ねる。
その目に宿る不安の色に、お母さんであるあなたは焦る。
小学校に入学して数ヶ月。お子さんは、どうにも学校に馴染めないで、朝になるとお腹が痛いと言い出し、食欲もなくなり…
ランドセルを背負うどころか、玄関に立つことすら難しくなって…はいないでしょうか。
「どうしてそんなに学校が嫌なの? 楽しいことだってあるでしょ?」
あなたはつい、そんな言葉が出てしまう。
わかってる。子どもを問い詰めても解決しないことくらい。
でも、焦りと不安で、心のなかはいつもざわついている。
「だって、先生の声が大きいし、みんながざわざわしてるのも嫌だし…」
お子さんの言葉はいつも断片的で、はっきりとした理由を教えてくれるわけではない。
ただ、本人の様子から、学校がお子さんにとって、まるで「刺激の洪水」のような場所なのだということは、ひしひしと伝わってきていて…。
母子登校や、五月雨登校や、不登校は、親御さんの心をぐりぐりとえぐっていき、考えまくってあたまのエネルギーを消費させ続け、身体的な疲労が蓄積し続けます。
HSCという言葉を知った日
お子さんが小学校に入学する少し前。
とある本でHSC(Highly Sensitive Child)という言葉に出会ったかたはいないでしょうか。
HSCとは「生まれながらにして感受性が高く、周囲の刺激を深く感じ取る子ども」のことだといいます。
「え、これ、うちの子のことじゃない?」
本に書かれていたHSCの特性。これを読み、こんなことを考えて…。
- 刺激への敏感さ: 赤ちゃんの頃から、ちょっとした物音にもビクッとして泣き出す子だった。
- 他者への共感力の高さ: 友達が転んだり、誰かが悲しんでいたりすると、自分まで辛そうな顔をする。
- 繊細で傷つきやすい: 私がほんの少し注意しただけでも、シュンとしてしまう。
- 秩序やルーティンを好む: 急な予定変更が大の苦手で、いつも決まった遊び方をしたがる。
- 想像力が豊か: 寝る前になると「おばけが出たらどうしよう」と不安を募らせていた。
まさに、うちの子そのもの…。
うちの子は、もしかしたら「世界をひとより大げさに受け止めすぎちゃう子」なのかもしれない。
私たちが当たり前だと思っている学校の喧騒も、彼にとってはとんでもない音量に聞こえているのかもしれない。
クラスメイトのささいな言葉も、彼にとっては深く心をえぐる刃のように感じられているのかもしれない。
わが子の「わがまま」だと思っていた行動の裏に、もしかして、生まれ持った特性が隠されていたりして…?
そんなことを、考えてはいないでしょうか。
学校での「地雷」と親子の「あるある」会話
ちょっと繊細なお子さんにとって、小学校は「地雷原」となりやすいもの。
「お母さん!今日ね、〇〇くんが先生に怒られてて、潤まで怖くなっちゃった!」
「給食、牛乳の匂いが気持ち悪くて、一口も飲めなかった…」
「体育の時間、みんなで鬼ごっこしたんだけど、潤だけ鬼になれなくて、なんか嫌だった」
学校から帰ってくると、お子さんはいつもヘトヘト。
聞いてもいないのにその日の出来事をぽつぽつと話し始め、学校は、「刺激」と「不確実性」の塊で…。
特に苦手なのは、人間関係の難しさ。
友達の感情に敏感で、ちょっとした言葉のすれ違いや、遊びのルール変更にも大きなストレスを感じていませんか。
例えば、
「○○(子供の名前)、今日、誰と遊んだの?」
「…誰も遊んでくれなかった」
そんなやりとりをして、心がきゅうっとなっていませんか。
「そっか、寂しかったね。でも、あなたが悪かったわけじゃないよ。きっと、みんなそれぞれ遊びたいことが違っただけだよ」
そんな慰めの言葉はあの子の心には届いているのか、いないのか。
わが子にとって、「みんなと一緒」というのは、大きなプレッシャーなのか…。
親子会話あるある
- 母:「学校どうだった? 楽しかった?」
- 子:「…別に」
- 母:「えー、なんかあったの? 先生に怒られた?」
- 子:「…怒られてない」
- 母:「じゃあ、誰かに意地悪された?」
- 子:「…されてない」
- 母:「もう! なんなのよ! 話さないと分からないでしょ!」
この堂々巡りの会話、何度繰り返しただろう。
うちの子は、自分の感情を言葉にするのが苦手なことがある。無理に聞き出そうとすると、かえって心を閉ざしてしまう。
- 母:「今日は疲れたね。お風呂入って、ゆっくりしようか」
- 子:「うん…」
親が質問するんじゃなくて、子が話したがるまで待つ、というようにすると、例えばお風呂のなかや、夕食後、リビングでくつろいでいるところにお子さんのほうから話し始めたり、寝る前にお話ししてくれることはありませんか。
「今日ね、図書室で面白い本見つけたんだ。恐竜の…」
無理に引き出そうとしなくても、あなたのお子さんは自分のタイミングで話してくれる子かもしれません。
自分のことを話せないのではなくて、親の思うタイミングで話すのが嫌なだけで、お子さんのタイミングがあるだけかもしれません。
担任との相性
担任の先生なら経験豊富だし、きっと何か良いアドバイスをくれるはずだ…そう思い、相談をしてみると、相性が悪かった…というお話もよく聞きます。
お母さんがこれまでの経緯、HSCの特性について、私が調べたこと、そしてお子さんが学校でどんなことに苦痛を感じているのかを、必死に説明したものの、担任の反応は、お母さんの期待とは大きくかけ離れていて…。
「お母さん、お子さんのことを『HSC』と決めつけすぎているのではないでしょうか? 今は、なんでもかんでも病名をつけて、特殊な子だと思い込もうとする親御さんが多いんですよ」
「それに、学校に行かないという選択は、お子さんにとって本当に良いことなのでしょうか? 将来、社会に出た時に困るのはお子さん自身ですよ。もっと毅然とした態度で、学校に行かせないと」
わが子がどれだけ学校で苦しんでいるか、必死に想像しようとして、勉強したのに。
それを理解しようとしないばかりか、お母さんを責めるような口調。心は深く傷つき、涙が止まらない。
「私、間違っていたの…? わが子を無理にでも学校に行かせるべきだったの…?」
帰り道、ひたすら自分を責め続け…。
「ここまで否定されるとは。私はもう、誰を信じればいいのか分からなくない…」
この経験は、お母さんにとって大きなトラウマとなり、「私を助けてくれるどころか、私をさらに追い詰めてしまった」。
「行かない」選択ではなく、「行ける」選択へ
しかし、そんな担任の言葉に傷つきながらも、お子さんが学校に行けるようになるための方法を模索し続けるかたもいます。
最近は「無理しない」選択もありだよねという意見が増えてきていますが、「低学年から躓かせたくない」という意見もあります。
学校という集団生活の中で、様々なことを経験し、学んでほしいと願っている。
わが子の性格や気質などと向き合うことにして、家庭でできる環境調整と、お子さん自身の自己肯定感を高めるための取り組みを始めよう!というのも選択肢のひとつです。
家は「安心基地」
取り組みとはどんなもの?というと、例えば…
- ゆっくり過ごせる時間: 帰宅後は宿題や習い事のルーティンを!と必死になりすぎない。
- 心地よい空間: ぬいぐるみ、絵本、ブロック…本人が心からリラックスできる空間作りを意識してみる。散らかっていても、寝る前に片付きゃオッケー!にしてみる。
- 好きなことに没頭できる環境:絵を描くことと、恐竜の図鑑を読むのが大好きな子なら、思う存分それらに没頭できる時間と場所を提供してみる。
「お母さん、この恐竜、かっこいいでしょ?」
自分で描いた恐竜の絵をお母さんに見せ、本人の顔は笑顔なら、それが正解なのかもしれません。
お子さんが何かに没頭している時、お子さんの心は満たされ、自己肯定感が育まれていくともいえます。
宿題も大事。でも、親が思う以上に学校で疲れて帰ってきているのだから、ゆっくりさせようという視点も大事です。
小さな「できた!」を積み重ねる
お子さんの自己肯定感を育むために、「小さな成功体験」をたくさん積ませることも大事です。
「この牛乳パック、上手に開けられたね!」
「お母さんのお手伝い、ありがとう。助かったよ」
どんなに些細なことでも、何かを「できた」時には、喜んだり、褒めてみたり。
「お母さん、今日、縄跳び、3回も跳べたんだ!」
という時は、たった3回?じゃなく、3回跳べてうれしい!のお子さんに寄り添ったりして。
- 子:「お母さん、見て! これ、僕が作ったんだ!」(粘土で謎の物体)
- 母:「わぁ! すごいね! これは何かな? どんなところが難しかった?」
「何これ? よく分からないね」なんて言わないで、お子さんの創造性や努力を最大限に肯定するようにするのも大事です。
学校との連携、そして「一人での登校」
家庭でのかかわりを変えつつ、それだけではなかなか不登校や母子登校が解決しないということは多いです。
お子さんが学校に行けるようになるためには、学校の理解と協力が必要です。
私は、担任の先生が難しければ、管理職ポジションの先生にアポを取るのもありです(担任をこえての選択になるのでドキドキすると思いますが…ご主人に助けてもらえそうならば力を合わせるとよいです)。
教室の騒音、トイレの臭い、急な時間割変更への不安…。具体的な困りごとを伝える。
すると、先生も少しずつお子さんへの理解を深めてくれるかもしれません。
たとえば…
- 教室の席替え: 窓際で、比較的静かな場所に席を移動。
- トイレの配慮: 比較的臭いが少ない、学年で使う頻度の低いトイレの使用を促してくれるように。
- 時間割の事前告知: 急な変更がある場合は、前日に子に伝えるように。 など。
遠回りと感じるかもしれませんが、別室登校の提案も選択のひとつです。
最初からひとりでクラスに入るのが難しい場合は、保健室や空いている教室で過ごしても良い、という選択肢です。
最初は、お母さんと一緒に過ごすことが多くても、少しずつ慣れてくると、担任の先生がたまに顔を見せに来てくれたり、クラスの様子を教えてくれることにお子さんが反応しだすかもしれません。
「〇〇ちゃんがね、○○くんに会いたいって言ってたよ」と、先生が声をかけてくれたことにお子さんが興味を持ったりして、
少しずつ、保健室からクラスに顔を出す時間を増やしていけるということも。
最初は短い時間でも、徐々に授業にも参加できるようになり、給食もみんなと一緒に食べられるようになるというケースもあります。
そして、ある朝。
「お母さん、今日は一人で学校に行く」
「え…? 一人で?」
「うん。だって、今日は図書室で新しい本が入荷する日だから、早く行きたいんだ」
「…そっか。じゃあ、いってらっしゃい!」
そうやって、お母さんはお子さんの背中を見送る朝を迎えられ、たった一人で、ランドセルを背負い、学校へ向かって歩いていくその背中を、以前よりもずっと、大きく、そして頼もしく見える…
もしかすると、対応によっては、こんな流れを進んでいけるかもしれません。
そして私は、そんなケースを支援の中でたくさん見てきました。
まとめ:焦らず、信じて、寄り添うこと
低学年児の不登校や母子登校は、親にとって本当に辛い経験です。周りの無理解に苦しんだりすることもあるかもしれません。
でも、あきらめず、ご自身の中で納得のいく答えをだしてほしいなと思います。
もしあなたがお子さんのかかわりに悩んでいるならば…
- 子どもの感受性を理解し、寄り添うこと: 「わがまま」ではない。彼らは、私たちには見えない、聞こえないものを感じ取っているかもしれない。
- 安心できる時間と空間を提供すること: 家庭が、彼らにとって唯一の「避難場所」になる。
- 自己肯定感を育む活動: 小さな成功体験を積み重ねることで、彼らは自信を取り戻していく。
- 学校との効果的な連携: 根気強く、子どもの特性を伝え、個別対応をお願いすること。
- 「行かない」選択ではなく、「行ける」選択肢を探すこと: 学校に行かないことが悪いわけではない。でも、行けるようになるための道を、諦めずに探し続けること。
こういったことを考えてみるのもいいのかもしれません。
そして、何よりも大切なのは、親自身がストレスを抱え込まないことです。
ご自身の心のケアは本当に大切です。
「お母さん、今日、面白いことがあったんだ!」
学校から帰ってきたお子さんが、笑顔でお母さんに話しかけてくれる。
そんな日も、これから先の未来に待っているかもしれません。
あなたのお子さんは、今、どんなことで困っていますか?
あなたはいま、何に悩んでいますか?
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それでは、今回はこれで終わりたいと思います。
さいごまでお読みいただきありがとうございました。また次回のブログもお読みいただけると嬉しいです!
まいどん先生(公認心理師)
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