一生懸命勉強しながら子育てをしてきたけど学校を嫌がった…なぜ?というお母さん

 

一生懸命勉強しながら子育てをしてきたけど学校を嫌がった…なぜ?というお母さん

ブログをお読みいただきありがとうございます。

娘の風邪をもらってのどがイガイガしているまいどん先生です。

娘の鼻水がすごいことになってまして、メルシーポットで必死に吸いますが、ただいま毎朝毎晩鼻水を吸われたくない娘VS吸いたい親で戦いが繰り広げられています。

「あんぎゃー!」とジタバタと泣いて嫌がるので、なんとか和ませられへんかなと思って変顔をして鼻水を吸ってみたんですが思いっきり顔面けられました。ごめんて… 😥 

 

さて、今回は母子登校(一般的には付き添い登校)のケース紹介です。

 

小3の冬休み明けから学校に行きにくくなる

お父様からご相談をいただいたとき、小学4年生の女の子Sちゃんは、母子登校をしていました。

遅刻で2時間目から登校をして、2時間ほど授業を受けて給食を食べずにお母さんと帰ります。2時間の授業中は、お母さんは別室で過ごしています。

小3の夏休み中、外食中に嘔吐してしまい、以来ごはんをあまり食べられなくなってしまい、その後給食を食べるとしても担任の先生曰く「ほんのちょっとしか食べてくれなくて…」という状況。

お家に帰るとロールパンやおにぎりなどを食べてくれるものの、外食や給食となると不安がるようになりました。

 

Sちゃんは、小3の2学期後半から給食を食べられなくなりました。給食の時間は読書をして過ごすようになります。

ご相談をいただいたのは小4の6月。半年以上、給食を食べていません。

学校からは、「給食ストップさせることもできますよ。1週間くらい前に言ってくださればすぐ再開できるので…」と声をかけてくださるのですが、それでもSちゃんのお母さんは、「いつかふとしたときに『今日、給食食べて帰る』って言うかもしれない」と思い、ずっと給食をストップさせないでいました。

 

Sちゃんの母子登校がはじまったのは小3の1月。

夏休み明けから毎日泣きながらも学校に行くというのでおうちを出ていっていましたが、冬休みが明けて初日の登校の日に、ランドセルを背負ったまま玄関でポロポロ泣いて固まってしまいました。

 

「学校が怖い…」というSちゃんに、お母さんは「どうしたの?今日は給食はないよ」と言うと、

「でも…ひとりで学校に行くの怖い…」と言います。

お母さんは、「しんどいなら無理に行かなくてもいいのよ」と言うのですが、それはいやだと言い、お母さんはSちゃんに付き添うことにされました。

 

宝物のわが子につらい思いをさせたくないのに…

じつは、5年の不妊治療の末、ようやくやってきてくれたのがSちゃんでした。

お母さんもお父さんも、一生懸命治療に取り組み、悲しい出来事を乗り越えてSちゃんと出会うことができました。

お父さんもお母さんも、Sちゃんに毎日「愛してるよ」「Sちゃんはパパママの宝物だよ」と伝えてきていました。

 

Sちゃんが望むことはなんだってかなえてあげたいし、困ったり悲しい思いにはさせたくないと考え、お父さんお母さんはこれまで大切にSちゃんを育ててきた。

 

子育て情報収集にも熱心なお母さんで、色んな媒体から「子どもの自己肯定感がアップする関わり」「子どもが親に愛されていると思えるような関わり」「子どもが自分を好きになる関わり」「褒める子育て」など、気になる対応方法を見つければ実践し続けてきていました。

一生懸命わが子のためにと頑張ってきた。

でも、Sちゃんが、「学校が怖い」「給食が怖い」と泣き出した。

お母さんはショックを受けたといいます。

「宝物だと思って一生懸命愛を注いできたのに、不安でいっぱいになったのは私たちの子育てがまずかったから…?」と。

 

愛情不足?うちの家が?そんなはずない

母子登校のはじめは1時間目から4時間目まで授業を受けられていたのですが、徐々に「先生が怖い」「勉強が分からない」と言うようになり、気が付けば1日2時間行けばいいほうになっていきました。

『学校に行って教室に入ってさえしまえば、特にパニックにもならず授業を受けられているのに、どうしてだろう?先生もクラスの子も優しいのに…』と、お母さんは不思議でたまらなかったといいます。

 

そして、お母さんは母子登校を続けることはそこまで苦痛に感じておられなかったそうですが、Sちゃんが幼くなっていくことと、Sちゃんの不安が強くなっていくことが心配でした。

SCや行政の教育相談や児童精神科など、あちこちに行って相談をしましたが、どこも

「付き添い登校を続けてあげてください。不安になったらすぐに帰らせてあげて」

「愛情不足かも。おうちで安心させてあげて、愛してあげればいずれ不安もマシになっていくでしょう」

といった回答だったそうです。

 

けれども、お母さんにはどうしても「愛情不足」という言葉だけは納得がいかなかったといいます。

『こんなにも愛しているのに、まだ足りないの?わたしたちの子育てのなにがだめなの?こんなにも愛していて愛情不足って、もしかして違うんじゃない?Sは病気なのかもしれない…それか発達障がいかな…』

 

そんなことを悩んでいるある日、拙著と出会って『うちはこれだ…愛情不足じゃなくて、自立心が足りないんだ…』と一番しっくりきたとおっしゃっていました。

 

甘えさせるって難しい

そして支援をはじめていただき親子の関わりを拝見しますと、お母さんは『Sちゃんに頼られる自分に依存』していることがわかりました。

お母さんはSちゃんを愛するがあまり、Sちゃんが「お母さんが常に横に居ないと不安になる」状態をつくってしまっていたのです。

 

例えば、夕食時にSちゃんが「これ嫌い…」と言ったら、お母さんは「じゃあお肉は食べられる?そうそう、えらいね。野菜は置いといて良いよ」と返す。

そして、「ちゃんと『これ嫌い』って言えてえらいね!Sちゃんは嫌なことをちゃんと口に出来てる!すごいよ!」と褒める。そして、Sちゃんが残した野菜をお母さんが食べて、

「最近ママ野菜不足だったからさあ、Sちゃんが残してくれてよかったよ~!あー、ママ健康になってくわー!」と嬉しそうにSちゃんが残した野菜を食べる。

そんなお母さんを見てSちゃんは「ママ、そうなの~?」とにやりと笑う。

 

夕方、宿題が分からないSちゃんが、「あーーーー!わかんないーーー!!」と大きな独り言を言います。するとお母さんがやってきて、「何が分からない?あ、ここはね、こうするんだよ。『わからないって言えて、えらいねぇ』」と言ってSちゃんの頭を撫でる。

 

お風呂の時に脱衣所で「ママ、ん。」と言って万歳をしたら、お母さんが脱がしてくれて、お風呂でも全身お母さんが洗う。

 

これらは色んな媒体から得た子育て論だと仰っていました。

私としては、これらの関わりひとつひとつがダメというわけではないと思いながらお話を聞いたり親子会話を拝見していたのですが、Sちゃんは「お母さんが喜ぶ顔が見たくて無意識的にお母さんがお世話をしたくなる自分という役割を担っている」可能性があるということが浮かんできました。

というのも、Sちゃんは1時間くらいのお留守番はできるし、お母さんがいない時間帯は自分で計画を立てて勉強をしたり、おじいちゃんおばあちゃんのお家に泊まることもできる。お父さん曰く、「お母さんが近くにいるとキャラが変わる感じがある」とのこと。

 

「ずっとお母さんになることが夢で、夢がかない幸せな日々を送っている。Sがどんどん赤ちゃんから幼児になり、さらに児童になるという成長が悲しくて、さみしくて…」そんな気持ちがお母さんにはあったというのです。

 

4人姉弟の1番上だった。甘えるということをさせてもらえなかった

なぜお母さんがSちゃんへの依存があるのかを掘り下げていくと、お母さんが4人姉弟の1番上で、両親は共働きでいつも妹や弟のお世話をさせられてきて、しっかりしなければならなかったそう。

「いつもさみしいと思っていた。私は絶対に、親になったら子どもが帰宅するまでに仕事から帰ってきて、手作りのおやつを出したり、勉強を横でついてみてあげるんだと幼いころからずっと思っていて…」

「私、自分のかつてのさみしさを埋めるために、Sをお人形さんのような、いつまでもかわいいかわいい『私の』あかちゃんと思っていたんだと思います」

カウンセリングを重ねていくうちに、お母さんは、こんなふうにご自身を見つめるように。

 

甘えさせるのは悪いことではない。むしろ感受性が豊かな時期に愛を感じられるようなかかわりをするのは、その子の人生の土台作りとなる。しかし、「親の心を満たすためのお世話」は子どもにプレッシャーになることもある。

「自立してしまうと、お母さんが悲しんでしまうかもしれない」

ということが、幼いながらにもなんとなくわかってしまって、本当はできるのにできないふりをしてしまうこともある。

そういうことを、カウンセリングを重ねていくうちに親御さんがご自身で気づいていかれました。

 

親が手を出すのをやめてみよう

これまでSちゃんがノートを忘れた日は、猛ダッシュで学校まで送り届けていたお母さん。

好き嫌いが多いSちゃんに、おうちのお食事は好きなものばかり出してチャレンジさせないようにしてきたお母さん。

Sちゃんがお母さんをたたいたりつねっても「甘えたいんだねぇ」とニコニコしていたお父さん。

 

子育てをしていく上では、時に失敗をさせてみることも大事。

苦手なことを無理に克服する必要はないけれど、「乗り越えられないはず」という思い込みを持つのはやめてみる必要がある。

しつけとして必要なことはきちんと何がダメなのか説明し、注意をする必要もある。

子どもには子どもの人格があり、その子がその子らしく生きていくための環境を整えるのが親の役割であり、赤ちゃん扱いできなくなった悲しみを、子どもの成長を見て喜ぶように変えていこう。

ご夫婦ともに、Sちゃんの『自立』『自分の欲求(自我)を出させていく』ことをテーマに親子のかかわりを変えてみることに。

 

自分の「欲」は出していい

するとある日Sちゃんは3時間目終わりにお母さんにこう言います。

 

「ねえ、きょう、給食食べてみようかな」

 

Sちゃんは、1年ぶりに給食のカレーを食べ、そして掃除をして帰りました。

 

家に帰る途中、Sちゃんは

「ママ、給食って、美味しいね」

「ママ、明日は5時間目も行ってみようかな」

と嬉しそうに言ってくれたそうです。

 

そして、この日からSちゃんはどんどんお母さんと離れられるようになり、支援を開始して10か月めでひとりで登校をし、最後まで授業を受けて返ってこれるようになりました。

今までSちゃんができることが増えるたびに、悲しそうにしていたお母さんだったのですが、「喜ぶ」ことを意識されるようになりだしてから、Sちゃんはぐんぐんできることが増えていきました。

 

いえ、おそらく本当はできるのに、やらなかった。できなかった。

お母さんの顔をよくみて、本当の自分の気持ち・欲を出せなかった。

そういうのがなくなって、自然体なSちゃんがあらわれてきたのだと思います。

 

支援卒業の日

このご家庭は、支援を2年半で卒業されたのすが、最後の電話カウンセリングの日に

「あの日Sが『給食食べてみようかな』と言った日のことが忘れられません。先生に、『Sさんには精神的な自由が必要』と言っていただいて、『私がしたかった』甘やかし赤ちゃん扱いのような、ある意味おままごとみたいなかかわりをやめていくと、魔法みたいにSが変わっていきました。あんなに毎日必死で分離不安解消とか、愛情不足はこうするみたいな情報を集めて頑張っていたのは一体なんだったんだろうって思います。」

「私がずっと小さいころに悲しい・さみしい気持ちでいたことを先生は丁寧に掘り下げて、寄り添ってくださった。変な話なのですが、カウンセリングの時は、私は子どもの頃の自分に戻った感覚がありました。子どもの頃の私に、山下先生が私の母の代わりに『本当はこうしたかったんだよね』『もっと甘えたいって言っていいんだよ』と言って抱きしめてくれたような…。そんなあたたかい感覚を得ていくたびに、不思議とSに『成長しないで』と思う気持ちがなくなっていったんです」

と泣きながらお話してくださったのです。

 

色んなことを不安がって泣いていたSちゃんはもういません。

「ママ、できたよ!」とニコニコするSちゃんがそこにはいました。

 

今回はこれで終わりたいと思います。

さいごまでお読みいただきありがとうございました。また次回のブログもお読みいただけると嬉しいです!

まいどん先生(公認心理師)

 

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