これからの未来を生きる子ども達の「生きる力」をはぐくむという点を重視した学習指導要領が2020年からスタートしました。
学習指導要領では、
①学んだことを人生や社会に生かそうとする『学びに向かう力や人間性』 ②実際の社会や生活で生きて働く『知識及び技能』 ③未知の状況にも対応できる『思考力、判断力、表現力』 |
社会に出てからも学校で学んだことを生かせるよう、上記3つの力をバランスよく育んできましょうという内容が書かれてあります。
子どもが周りの人たちとともに考え新しい発見や豊かな発想を生み出していくためには、まずは子ども自身の
「自分の気持ちに気づく」「自分の考えを整理する」「相手の気持ちを考える」
ということが大切です。
そのために必要なのは、親の傾聴力であり、共感力です。
この記事では、親がどのように子どもの話を聴けば子どもに生きる力を身に付けさせられるのかについて解説します。
親が共感的に話を聴くことで、子どもには「自分の気持ちに気づく」「自分の考えを整理する」「相手の気持ちを考える」きっかけを与えられ、その先には子どもに思考力や判断力や表現力が身に付きます。
私が約10年間支援者として所属し活動してきたペアレンツキャンプでは、「PCM(Parents Mounseling Methodの略)」という独自の家庭教育メソッドを学んでいただきそれぞれの家庭力アップを目指してきたわけですが、MIKURU⊛MIRUでも皆さんに家庭教育をより実践しやすいように作った「コンパスメソッド」という名前のメソッドを知っていただければ嬉しく思います。
コンパスメソッドはPCMの考えをベースにし、様々な家庭教育や心理学の考えをまとめた折衷的な家庭教育のメソッドです。
この後時々心理学の話もでてきますが、親子会話で活用しやすいようにかみ砕いて説明をしておりますので、よろしければ是非最後までお読みいただけると幸いです。
話を共感的に傾聴することの大切さ
たとえば、普段の親子会話が以下のようなやりとりだったとしたらどうでしょうか。
もしかすると、この子は「漢字のテストがあった」「点数が70点だった」以外にお母さんに何か言いたかったことがあったのかもしれません。
親子会話でよくあるのは、①親が子どもとの会話を先読みして感情的になってしまったり、②結論を先に出してアドバイスをしてしまうということです。
次に、共感的に話を傾聴する(聴く)よう親が心がけるとどうなるかを例にあげてみます。
いかがでしょうか。
今回はあくまでも例えばのやりとりなので、親が子の話を共感的に聴けば子どものテストの点数が必ずアップします みたいなことにはならないのですが、親が感情的になったり会話の主導権を握らないようにすることで、穏やかなやりとりが出来ていることがわかります。
そのようなやりとりを積み重ねていくことで、子どもは「お母さんにたくさん話を聴いてもらえた」という感覚を得ることができるでしょう。
反対に親が子どもの発言に対して反射的・感情的・会話の主導権を握る・指示的であると、子どもは「お母さんには何も話したくない」という気持ちにさせてしまう可能性があると言えます。
傾聴力とは
アメリカの心理学者であるカール・ロジャースが提唱した「ロジャースの3原則」というものがあります。
①共感的理解②無条件の肯定的関心③自己一致の3つの条件で相手との信頼関係を構築したり、話し手が自分自身を理解できたり、感情をコントロールする力や精神的な成長を促すきっかけになると言われています。
①共感的理解については後で記述しますので、②と③について解説をします。
②無条件の肯定的関心 相手の話を「善い悪い」「好き嫌い」など評価をせずに聴くこと。 相手の話を否定せず、なぜそのように考えるようになったのか、その背景に肯定的な関心を持って聴く。 そのことにより、話し手は安心して話ができる。
③自己一致 聴き手が相手に対しても、自分に対しても真摯な態度で、話が分かり難いときは分かりにくいことを伝え、真意を確認する。 わからないことをそのままにしておくことは自己一致に反する。 聴き手が感じていることと、相手と対する際の言葉や態度が一致しているかどうかであり、聴き手が純粋な存在であろうとすれば、話し手もありのままの自分で心を開いてくれる。 <厚生労働省:こころの耳 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト より> |
③がすこし難しく感じるかもしれませんが、親子会話において傾聴力を高めていく上で必要なのは「子どもの話をジャッジせず聴き、子どもの話を理解しようとし、興味を持って聴くこと」という風に解釈していただくのがよいかと思います。
善い悪いのジャッジをしながら相手の話を聴くと批判的な態度になったり感情的になりやすいですし、その状態で相手を理解するというのはかなり困難。
「フラットな状態でわかろう、聴こう」という姿勢を意識してみましょう。
共感力とは
傾聴力のところでも触れた「ロジャースの3原則」のうちのひとつである「共感的理解」について解説をしたいと思います。
「共感的理解」を説明する上で、よく混同して理解しやすい言葉を先に説明しますと…
・共感-『相手の気持ち』に焦点を当てたこと言葉。常に主語は相手。 ・同感-『自分の気持ち』に焦点を当てたこと言葉。主語は自分。 ・受容-肯定も否定もせず、そのまま受け止めること。称賛や評価はしない。 |
これら3つの言葉は実際に違いを説明しようとするとうまく説明できない…という方も多いのではないでしょうか。
カウンセラーには
「話し手に安心感を持ってもらい、心を開いて相談してもらうためにカウンセラーの基本的態度(積極的に聴く態度)が求められる。アドバイスは原則的にはせず、クライエントが自分と向き合う過程で自発的に解決策を見つけ、カウンセリングでの経験を活かして日々の生活で起きた問題や悩みに主体的に立ち向かえるようになる。カウンセラーがテクニックによってクライエントの心理状態を改善させるのではなく、クライエントの潜在的な強さ、回復力を引き出して話を傾聴しながら自身の立ち直りを待つ。」
という考えや姿勢が求められているのですが、それを家庭の中でも取り入れることで子どもの潜在的な強さや回復力を引き出してより心の成長を促すことができるというのがMIKURU⊛MIRUの考え方です。
親子会話の中でも、先ほど共感、同感、受容について説明をいたしましたが、親が子の話を聴くときは受容共感的な姿勢が求められるというわけです。もちろん時に同感がまじってもよいのですが、基本姿勢は受容共感と捉えてみましょう。
オートクライン効果
誰かと話をしていた時、「あれ?結局これってこうしたら解決じゃないの?」「話ながら気づいた。自分はこうしたいんだわ…」「あ、私こんなこと考えてたんだ」と思う時はありませんか?このことを、「オートクライン効果」といいます。
「オートクライン(autocrine)効果は、もとは医学分野などの用語であり「分泌された物質が分泌した細胞そのものに作用することを指すこと」を意味します。
親子会話においても、子どもが話をすると同時に自分の耳で聞いたり親に自分の言葉を繰り返してもらうことで気づきを得るオートクライン効果を得られることがあります。
人は自分の内側にある考えや気持ちを口にしていくことではじめて自分の考えや気持ちに気づくことができます。
受容共感的な姿勢で傾聴をすることで、親が「それはね、こうしたらいいのよ」とアドバイスをせずとも自分の力で答えを出せるというわけです。そういったやりとりが積み重なっていけばいくほど、子どもの問題解決力や思考力はぐんと高まっていくでしょう。
傾聴の基本「あたかも」
カウンセリングの場では、クライエントの体験や状態についてカウンセラーは自分自身の感じや考えを横に置いて、相手の感じていることや考えていることをそのままうけとめてみようとします。
相手のことをありのままに受け止め、相手と同じ心理状態にならない(巻き込まれない)ように気をつけながら話を聴いていく姿勢が求められます。しかし完全にクライエントと同じ状態になってはなりません。
「あたかも自分がクライエントであるかのように話を聴く」ということが大事です。
すこし難しい話になるのですが、「あたかも」というのがポイントで、カウンセラーが完全にクライエントと同じ世界を見て感じ取ってしまっては客観的な立場でカウンセリングができません。そこには主観が入りすぎてしまいます。
親子会話でも、「あたかも自分が子どもであるかのように話を聴く」ようにし、子どもの見たり感じた世界を想像しながら主観を交えずに聴いて受け止めていくことが大事です。
みなさんこれまでに色々な経験をされたと思いますが、相手は自分と同じ体験をしていないのに「わかるよ」となんとなくで共感を示されるとどうでしょうか。
「私の気持ちや体験をしらないくせに、そんな軽々しく『わかる』なんて言ってほしくない!」と思いませんか。
しかし、「あなたと同じ体験はしたことがないから完全に理解はできないけれど、自分がそのような体験をしたらきっと苦しくなると思う。つらいね…」と言われたほうが、相手が自分の感情を一緒に体験し、想像し、理解しようとしてくれているというふうに感じるのではないでしょうか。
相手が自分の悲しみや辛さを理解していて、そして自分と同じように悲しみ辛くなっていなかったとしても、共感してもらえたという気持ちになると思います。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回は、コンパスメソッドの基本である「傾聴」「共感」について記事を書かせていただきました。
おさらいとして、受容共感的な姿勢を意識して傾聴をした親子会話の例を挙げてみます。
このように、あくまでも親は「相手の気持ち」に焦点をあてて話を聴き、主語は常に相手です。
「がんばるのは当たり前」というような否定もしないし、「100点を取れるのはすごいこと」と称賛や評価はしないし、「お母さんならば1回目のテストで100点を狙うけど」と自分の気持ちに焦点をあてないし、「点数を取るために勉強をすべき」という子どもの考えに肯定も否定もしないのがポイントです。
子どもの話にしっかりと耳を傾け、子どもにとっての一番の味方でいられるように関わってみましょう。
このような関わりを続けていくことで親子の信頼関係が構築されていき、かつ親子会話の中でお子さんの「共感力」「協調性」「想像力」「自分をコントロールする力」がはぐくまれていくでしょう。
慣れないうちは難しいかもしれませんが、大体3か月~半年ほどで習得されるかたが多いです。
もしご興味があれば、是非実践してみてくださいね!
親まなびアドバイザー まいどん先生
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