最初の電話カウンセリング時のお母さんの声

最初の電話カウンセリング時のお母さんの声

ブログをお読みいただきありがとうございます。公認心理師の山下です。

今回は、初回相談の時のやりとりの時に思うことについて書かせていただきます。

 

出口がない。しんどい。

私のもとに、子育てをされているお母さんやお父さんから、

「小学3年生の息子がひとりで学校に行けなくなりました」
「中学1年生の娘が学校に行かなくなりました」
と、お子さんの登校のことでご相談がやってきます。

「小学3年生の息子が、ひとりで学校に行けなくなり、母親と毎日学校に行っています。

毎日、母親が学校で息子と離れようとすると、とても不安そうにして、学校の先生が声をかけても大泣きしていたり、母親にしがみついたり、黙ってしまうんです。何時間も廊下で親子ふたりで教室に入る入らないのやりとりをした日もあります。

もう、先生がたや子どもたちから向けられる視線に耐えられなくて。
そんな息子にイライラして当たってしまうし、こんなことしたいわけじゃないのにって、すごくつらい。
いっそ学校を休んでくれたら楽なのに、学校は行きたいと言うので、仕方なく母は毎日子どもに付き添い登校をします。
母は仕事もやめ、ずっと息子と一緒に過ごさなくてはなりません。

もう、どうしていいかわかりません。
息子が何を考えてるかもわからない。
息子は発達障害なのかな。
何か検査を受けたほうがいいのな。
心の病気なのかもしれない。
ひどいことを言って、たくさん傷つけてきたから、愛情不足なのかもしれない…」

そんなことを、泣くのを堪えながら、私にお話をしてくださるのです。

 

どうしたらお母さんの苦しさを取り除けるか

「お母さん、いままで大変だったでしょう。
毎朝学校に付き添うというのは、決して楽なことじゃないですよね。

学校では、必死に『私はこの子のために付き添っています。授業の邪魔になっているのもわかっています。先生方にご迷惑をおかけしているのもわかっています。だから、せめて母親が付き添い、この子が学校に迷惑をかけないようにしますから…』というようなことを言ったり、

子どもにはひとりで行けないことを引け目に感じてほしくないのでお母さんが堂々と振る舞おうとして、決して泣いたりはしないようにしたりして。

でも、心の中は不安でいっぱいなんですよね。

いつまでこれが続くんだろう。私の心はもう限界だ、壊れてしまいそうだって。

今にも折れてしまいそうな気持ちを何とか保とうとしているんですよね。

気を抜いたら過呼吸みたいになったり、ズドンと底まで落ちそうな、すごく重たい何かが上からのしかかっているような状態なんですよね。」

そういう話をすると、電話口でお母さんが泣いている…。

私が返す言葉は、あくまでも私の想像です。

でも、こういう言葉以上にお母さんたちは苦しい思いをしているはず。

 

カウンセリングでやりとりしてる内容も、今まであった色んなことを要約して話して下さっているのであって、語られていない行間には本当に色んなことがあったのだろうと想像しながら、いつもはじめましての相談の時は、私は胸が苦しくなり、今すぐにでもお母さんを抱きしめて、

「大丈夫ですよ。きっとこれから、状況はよくなっていきますから。ひとりじゃないですよ。私がそのしんどさを半分もらいます。一緒に乗り越えていきましょうね。どう乗り越えていけばいいか、私がガイドします。極力なだらかな道を選び、雨が降れば傘を差したり、雨宿りの場所にご案内しますから…」

と言いたくなります。

 

いかに状態を事実に近い形で共有するか

カウンセリングの難しいところは、ご家庭内で日々送られているやりとりがすべてそのまま私に共有されないということです。

私自身もそうなのですが、自分の身におきていることを相手に伝えるのってめちゃくちゃ難しくないですか。

今なにが起きていて、どういう心境で、誰が何を言ったのか、なんでそういうことが起きたのか。

どこから切り取って説明すればいいのかも難しいです。

 

支援を受けられているお母さんたちも、どこから説明すればいいんだろうと思われているはずです。

今すぐ聞いてほしいのはこの話だけど、それをわかってもらうにはあれもこれも説明しないといけない…となったりもします。

それと、親子の関わりで疲れているお母さんにとっては、頭を使う作業がめちゃくちゃしんどいんですよね。

もうすでに家事、子どもとのやりとり、登校のことで脳がフル回転なので、気力を絞り出してカウンセリングを受けている方はすくなくありません。

そうまでしてでも、状況をよくしていきたいと頑張るお母さんがたのその姿は、愛以外何ものでもないです。

 

さいごに

私のもとにご相談をいただくケースは「発達グレーと言われました」(あるいは親御さんがそうではないかと考えている)という方が多いのですが、「どんな子でもわが子なのだから、愛するすべをしりたい。でもひとりでは、世の一般的なはなしについ流されたり、学校の担任の顔色うかがってしんどくなったり、色んなノイズに惑わされて、わが子を愛せなくてごめんと思ってる」という方がほとんどです。

そういうお母さんが、私の価値観や雰囲気になんとなく吸い寄せられて、私の言葉に影響を受けて、お母さんたちがじわじわ変わっていかれているなと思います。

「なんであんなに一生懸命子どもも自分も苦しみにいってたんだ」

「呪縛がとけたかんじがある」

「私自身が、私の存在を肯定できなくてずっと私を探してた。山下先生にたどり着いて、ようやくみつかった」

…というような言葉をいただくこともあります。

 

最初はお子さんの不登校や母子登校でお悩みだったのが、最後のほうはお母さん自身のカウンセリングに移るのですが、「山下先生を選んでよかった」と言ってもらえると、はじめましてのお電話の時に泣いていたお母さんのことを思い出し、「よかった。ちゃんとガイドできてたんだな」とホッとします。

決して楽な道ではなかったけれど、一緒に進めてよかった、と。

支援者をしていると休みというものはほとんどないのですが、それでもやっぱり、私のカウンセリングを受けたいと言ってくださる方がいる限り、頑張りたいと思ってしまうのでした。

 

それでは、今回はこれで終わりたいと思います。

さいごまでお読みいただきありがとうございました。また次回のブログもお読みいただけると嬉しいです!

まいどん先生(公認心理師)

 

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