動けないのではなく、切り替える力を使い切っているとき
この記事では、注意の偏り・切り替えにエネルギーが要る特性(ADHDぽさ)という背景を 「特性・気質と、親・家族の背景という視点」から整理しています。 原因を一つに決めるのではなく、 いま起きていることを 地図の一地点として捉えるための記事です。
① この特性を、どう捉えるか
集中できない。
落ち着きがない。
話を聞いていないように見える。
こうした姿から、
「注意力が足りない」
「怠けている」
と受け取られがちな特性があります。
このページで扱う「ADHDぽさ」とは、
診断やラベルの話ではありません。
注意の向き方や、行動を切り替えるときのエネルギー配分に
大きな偏りがある気質が、
現在の生活環境の中で
どのように負荷として現れているかを
読み解くための視点です。
注意が散ることは、
能力の低さではありません。
注意が、意図せず動きやすい
という特性です。
② なぜ「やろうと思っても、動けない」のか
この特性をもつ子は、
「やりたくない」わけではありません。
多くの場合、
-
何から始めればいいかわからない
-
頭の中が同時に動きすぎている
-
切り替えに想像以上の力を使っている
という状態が起きています。
特に、
-
朝の支度
-
勉強への着手
-
ゲームや動画から現実への移行
といった場面では、
注意の切り替えそのものが
高いハードルになります。
これは、
意志の弱さではなく、
神経系の使い方の違い
によるものです。
③ よくある誤解
この特性は、
次のように誤解されやすい傾向があります。
-
「やる気がない」
-
「集中すればできるはず」
-
「怠け癖がついている」
-
「ちゃんとすればいいだけ」
ですが、
集中できるかどうかは
本人の選択ではありません。
むしろこの特性をもつ子は、
-
興味のあることには、
周囲が見えなくなるほど集中する -
一度はまると、なかなか抜けられない
という特徴を併せ持つことも多くあります。
これは、
注意の量が少ないのではなく、
注意の配分が極端
という状態です。
④ この特性があると起きやすいこと
注意の偏り・切り替えにエネルギーが要る特性があると、
次のような状態が現れやすくなります。
-
朝、声をかけても動けない
-
課題に取りかかるまでがとても長い
-
「今やっていること」を止められない
-
ゲームや動画に強く引きつけられる
これらは、
わざと困らせている行動ではありません。
切り替えに必要な力が、
すでに枯渇している
可能性があります。
⑤ 家庭で起きやすいすれ違い
この特性があると、
家庭では次のようなすれ違いが起きやすくなります。
-
親は「今すぐやってほしい」
-
子どもは「今は無理」
-
親は「さっきまでできていたのに」
-
子どもは「さっきと今は違う」
その結果、
-
指示が増える
-
声かけが強くなる
-
子どもが反発する
という悪循環が起きやすくなります。
ここで大切なのは、
本人も「できない自分」に
強い苛立ちを感じている
という点です。
⑥ この特性と、他の背景・状態が重なるとき
注意の偏り・切り替えの特性は、
他の条件と重なることで
負担が増えやすくなります。
たとえば、
-
比較されて育った背景
→ できない自分を強く責めやすい -
期待に応え続けてきた関係
→ がんばろうとして、さらに疲弊する -
HSCぽさ(刺激に敏感)
→ 注意が散り、消耗が早まる
この重なりの中で、
-
勉強がわからない
-
無気力
-
ゲーム・ネットから離れられない
といった困りごとが
現れることがあります。
⑦ 見直すと楽になる視点
この特性に気づいたとき、
必要なのは
「集中力を高めること」ではありません。
見直したいのは、
切り替えに必要な条件です。
-
何から始めればいいかを明確にする
-
小さな区切りをつくる
-
いきなり止めさせず、予告を入れる
-
注意を引く刺激を減らす
切り替えが楽になると、
この特性をもつ子は
驚くほど自然に動ける
ことがあります。
⑧ すぐに判断しなくていいこと
-
この特性があるから怠けている
と決めなくていい -
集中できない=能力が低い
と結びつけなくていい -
無理に「普通」に合わせなくていい
この視点は、
原因を固定するためのものではありません。
これ以上、
本人が「できない自分」を
責め続けないための
「条件整理の地図」です。
⑨ 関連するページ
-
困りごとから考える
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五月雨登校/完全不登校 -
親・家族の背景から読み解く
比較/期待/心配 -
特性から考える
HSCぽさ/ASDぽさ
ここで扱った視点は、全体の一部です。
他の視点も含めていまの状態を整理したい方は、こちらのページをご覧ください。