不登校・母子登校に苦しむお母さんのおはなし。後編

不登校・母子登校に苦しむお母さんのおはなし。後編

ブログをおよみいただきありがとうございます。前回の続きです。

 

あちこちに相談してきたけれど

あるお母さんは、泣きそうになりながらこのように話しました。

「子どもは小1の頃に学校が怖いと言い出し、不登校になりました。今小3です。ここまでSC(スクールカウンセラー)に相談しながら母子登校と不登校を乗り越えようとしてきました。一時的に調子が良くなって、一番よいときは母子登校で半日授業が受けられた時でした。でも、似たようなことが繰り返し起きまして…」

「あちこちに相談しました。市の相談。学校のSC。小児科。無料の復学支援の相談とかも。みんな、分離不安ですねっていうんです。自信をつけさせようと思って、必死にプラスの言葉がけをしてきてるんですが…もう、どうしたらいいかわからなくて…。」

 

通っていた学童を嫌がったのでやめた。
2つやっていた習い事も嫌がったのでやめた。
一般的によいとされることはだいたいやった。
子どもがお母さんと離れたがらなくなって仕事をやめなければならなくなった。

自信をつけさせればいいということで、子どもが欲しがるものが出てきたら頑張って登校できれば買ってあげるよと言っていろんなソフトや本を買い与えた。

一生懸命やってるのに、2年経っても状況は変わらない…。

やってもやっても変わらない。この子は学校が合わないのでは?

フリースクールに行かせるべき?

いやいや、まだ低学年なのに、フリースクールっていう選択はどうなんだ?

本当に学校に行けないのかまだわからないのに、そんなに振り切った選択をしていいものなのか?

そもそも親から子にフリースクールは?教育支援センターはどう?って話をしても「嫌だ」と言われてしまう。

 

参ってしまった…
優しくしたいのに、小言や嫌みばっかり言っちゃう。
イライラして感情的になって、うまく関われない。

 

分離不安って言われるけれど

そもそも、分離不安とあちこちで言われるけど、私、そんなダメなかかわりしてきました?

子どもがあそこに行きたいと言えば仕事が休みの日につれて出かけたし、一緒におやつを作ったり、本人がやりたいことを頑張ってかなえてきたつもり。

正直、よその子よりうちの子は恵まれてると思う。

それなのに、分離不安…?

うまれつき、そんなに不安が強いの?母親から離れることが怖いの?

でも、幼稚園ではそうじゃなかった。母親と離れても全然平均だったし、リーダーシップを発揮することもあったのに。

小学生になった途端、分離不安が出てくるの?それっておかしくない?

…と、お母さんの頭の中はずっとこんなことをぐるぐる、ぐるぐる。

 

そこで私の支援にたどり着き、支援・分析がはじまっていったのですが、私からみても「分離不安?うーん??ほんまに?」でした。

むしろ、物理的には十分すぎるほど満たされているように見える。
「物理的」とは、たとえば衣食住。
お母さんは常に子どもの服にアイロンをしてパリッとしたシワひとつない綺麗な服を着させようとしていた。
食は、ご両親ともに料理が好きでお父さんが休みの日は家族でパンをこねてつくることもある。冷凍食品に頼りすぎないようにしようとお母さんは毎日ご飯を一生懸命作ると言う。
日々の生活も、お母さんはきれい好きで家を清潔に保っている。
他には、ほしい物があれば大体はかってもらえる。行きたいところがあれば連れて行ってもらえる。
熱がでたらつきっきりで看病してくれる。食べられる物は何かを聞いて、寝込んでいる子を置いていけないからとネットスーパーで頼んで食べさせる。

そのお子さんはお母さんにこんなふうに関わられている。
物理的にめちゃくちゃ満たされていて、お母さんが「正直、よその子よりうちの子は恵まれてると思う」と言うのは私もそうだな、と。

 

精神的な「満たされない」

ただ、親子のやりとりを見ていると、親子ともに「精神的に満たされていない」可能性があるかもしれない。

支援を受けていただき、分析をしていくとそのようなことが浮かんできました。

 

というのも、お母さんは子どもとのやりとりの中で『ああ…幸せ』『こんな成長がみれて、うれしい』『こんな様子が愛おしい』と思う瞬間があまり出てこなかったんです。

言葉にされていないだけかな?と最初は思っていたのですが、どうもそうではなさそう。

なんとか「今日1日が波風たたずに終わったら、ああよかった…」と思うような感じで、子どもの成長に対して心からやった…!うれしい!というような感覚を持たれていないように見えました。

お子さんは、自分の気持ちを言葉にすることが苦手で、出てくるとしても「怖い」「心配」「不安」くらいで、具体的な説明が難しい様子。

もちろん、母子登校や不登校真っ最中の親御さんが子どもとの関わりの中で幸せを感じるのが難しいというのは分かってはいるものの、そうなる前から、お母さんが子どもの成長や、子どもの内なる世界(心の中)への興味関心がなさそうな様子でした。

かつ、お母さん自身も自分の心に興味関心がないというか、悩みや葛藤はあるけれども、自分という人間はどうやって作り上げられたのか。どういう思考癖があるのか。どんなことに喜び、悲しむのか。何が嫌いで、好きなのか。
そういう、自分を知る・向き合うということが苦手な様子にも見えました。

 

ほかには、親子の関わりを見ていると、年齢相応に扱うというよりも、少し幼い関わりをしていたり、子どもに考えさせたり、失敗を経験させるということが少ないように見えたので、自立面(身体的自立・精神的自立)に課題があるとも。

 

最初に取り組んだのは「お子さんの自立」を目指すということ

まずは自立面にフォーカスし、親のかかわりを変えてみることで、お子さんは成長し、登校はできるようになりました。

支援を受けられて、3か月ほど経った頃でした。

ただ、問題はそこからでして。
これはあくまでも、家庭の中の一部分をかえただけでしかなく、親の思考癖やかかわり癖は大きく変わっていない。
物事がうまくいったとき、特に登校にだけフォーカスしていると、つい子どもへのかかわりが雑になってしまうもの。
なぜなら、そもそもこのお母さんは、子どもの成長や、心の中に興味関心がなかったから。
目的達成ができれば、人間その後は行動が緩くなりがち。

案の定、この家庭はお子さんがひとりで継続登校ができるようになった後に、お子さんが精神的に不安定になり、母子登校状態がしばらく続きました。

 

この家庭における核となる問題は、親御さんの態度であり、母子登校や不登校は、氷山の一角でしかなかったのです。

夫婦で意見がぶつかり合いやすかったり、夫婦で支えあえていない。その雰囲気を、なんとなく子どもは察していたり、母親が自由でいたい気持ちが強くて、子どもが母親に執着しているように感じると、心の奥底で疎ましく感じてしまう。それを子どもは見透かしていた。
母親からは執着や依存に思う子どもの行動は、今にも自分から心が離れていきそうな母親をつなぎ止めるためのものであった。

「いかないで。おいていかないで。自分の成長をみて。自分の心の中をみて。」

感受性が豊かな子は、繊細で敏感な子は、そんなことを言葉にできないけれど考えているように見えました。

 

お母さん自身が自分と向き合う

そしてお母さんがなぜそんなふうに子どもと関わるのかといえば、自分の生育歴が関係していたことがカウンセリングの中でわかり、

等身大の自分を自分自身が好きになれず、常に結果を残さないといけないとか、子どもはこういうふうにかかわる「べき」とか、そういう強迫観念においつめられ、自分が子育てや生きていくうえで自分に厳しくなっていた基準を子どもにまで求めていたり…。

 

お母さん自身が自分を認められていないので、自分のできないところにばかり目がいってしまって、自己否定するのが当たり前になっていて、その思考癖はお子さんに対しても向けられ、お子さんのできていないところにばかり目がいって、お子さんを否定することが多くなっていました。

そのような考え方、思考癖、関わり癖がずっとそのご家庭の「当たり前」だったので、「自立心をはぐくむ関わり」を意識して変えていって、お子さんが成長しても、根っこが変わらないとちょっとしたことでバランスを崩してしまいやすかったのです。

 

そんなことをカウンセリングを重ねていくうちにお母さんは気づいていき、自分と向き合い続けることになりました。

「そうか…わたし、ずっと傷ついてきてたんだ」
「わたしは子どもの頃、たくさん我慢してきた。親の思い描く子どもであろうと。それなのに、この子は私の思う通りにならない。むしろ自由きままに、母親にどストレートに愛情を求めてくる姿が受け入れられない。心の奥底では羨ましくもあり、拒絶したいんだ…」

こんなことをみつめていくうちに、わが子が何をおそれて自分から離れたがらないのか。

どこに行っても『分離不安』と言われるのはなぜか。

それを、本質から理解できたとき、親子を苦しめていた『よくなっては元にもどる』
『何かをやれば少し変わるけれど、変わりきらない内にもとにもどる』
というループから抜け出せたのでした。

 

まとめ

支援を受けていただくと、単に自立面で課題があるだけのケースもあれば、このようにお母さん自身の「何か」も課題であったケースもあれば、発達障害(お子さんあるいは親御さん)のケースや、夫婦関係がうまくいっていないケースもあれば…と、実は不登校や母子登校をきっかけにご相談をいただいたものの、親御さんも拙著を読み、「自立心がはぐくめていないと思う」「過干渉過保護だったと思う」と私の支援を受けてみたものの、みえてくるのは別の課題であったということが多いです。

 

今回の書いたケースは、子どもにだけフォーカスするだけではたどり着くことが難しく、よりご家庭を俯瞰でみる必要があったケースでした。

お子さんの分離不安ということにのみフォーカスをすると、お子さんの不安をいかに取り除くか?環境を整えるか?にのみ力を注ぐことになります。

ですが、それだけでは根本解決しなかったり、数年単位でお子さんの成長を待たなければならなかったり、お子さんの成長の妨げになることもあったりもします。

親御さんがそれに気づき、向き合っていくことで状況がかわっていったケースでした。よくなっては元に戻るというループをぬけだしたあと、そのご家庭はお母さんが変に「いい母親を演じる」こともなく、自然体で、お子さんはリラックスしてひとりで登校ができ、かつての不安定さがなくなっていきました。

 

色んなご家庭との出会いがありますが、今回は、2回にわたり、不登校や母子登校に悩むお母さんをテーマに記事を書かせていただきました。

さいごまでお読みいただきありがとうございました。また次回のブログもお読みいただけると嬉しいです!

 

※今回の記事はプライバシーの問題でフィクションが含まれています。(現実との境界が曖昧になるような書き方をしています。)

まいどん先生(公認心理師)

 

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