不登校の子を持つ親の受容過程
ブログをお読みいただきありがとうございます。公認心理師のまいどん先生です。
さて、今回は、過去にstandFMにて放送したこともある、『不登校の子どもを持つ親の受容過程』をテーマに記事を書いてみたいと思います。
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キューブラー・ロスの死の受容過程
精神科医のキューブラー・ロスは、終末期研究の先駆者といわれています。
そのキューブラー・ロスは、やがて自身の死を受容せねばならない時が訪れた場合、以下のような5段階の変化が起こることを提唱しました。
否認(死を運命として受け入れられない。事実を疑い、逃げ、孤立する) 怒り(「どうして自分が」という怒りと目の前の状況への反発) 取り引き(死の恐怖から逃れようと何かにすがる) 抑うつ(死は避けられないと悟り、喪失感・絶望・何も手につかなくなる) 受容(死を避けられない運命と受け入れ、心に安らぎを得る。平穏) |
そしてこの受容段階というのは、不登校など、親御さんにとって、受け入れがたいと感じるお子さんの状態を受容するまでの段階に非常に近いものがあると私は考えています。
否認
「まさかうちの子が」
「そんなはずない」
…と、不登校などになった時に、現実を受け入れられなくなります。
「まさか…明日には行くでしょ…」「きっとテストで疲れたんだわ。明日にはいつも通り着替えて行ってくれるはず…」
そんなふうに考え、学校に行かせなきゃ、と考えるというよりも、「信じたい」「いまに動き出すはずだ」と、すぐに行動に移さずに待とうとする。
…いえ、待ちたいと思うのがこの段階ともいえるかもしれません。
怒り
しかし不登校の事実は変わらない。
文科省の定義は、
何らかの心理的,情緒的,身体的,あるいは社会的要因・背景により,年度間に30日以上、児童生徒が登校しないあるいはしたくともできない状況にある者
です。不登校について語ろうと思えば、実際はさらに細かい説明が必要になってきますが、一般的にはこう言われているわけなので、子どもの欠席日数が30日を超えだすと焦りや不安がさらに増す方が多いです。
そして、「どうしてウチの子が」「学校のせいで」「あの子のせいで」…と、周囲に原因を求めようとして、「誰かのせい」「何かのせい」にしたくなってしまいます。
「なんで行かないのよ!」
「こんなにもしてあげてるのに!ゲームを買ってくれたら行くっていうから買ったのに、行かないのはなぜなのよ!!!」
というイライラの毎日を過ごしがちです。
取り引き
しかし状況は変わらないので、宗教(神)・科学・心理学…と、何かにすがろうとして、様々な手を尽くそうとしだします。
これは「死の受容段階ならば」ですので、親御さんの場合は、「なんちゃら不登校復学メソッド」「〇週間で復学できます(期間が保証されている)メソッド」「子どもが動き出す魔法の言葉」…のような支援機関のHPや、様々な本を買ったり借りたりして読み込みだします。
「なんとかこの状況から脱したい」
その一心で、色んなことを調べ、これという答えを探そうとします。ここで、「これ」というものに出会えれば問題ないのですが、見つからなかった場合は下に進むことになります。
抑うつ
「色々と手を尽くしたけれど、この子は学校には行かないのだ。」ということに絶望します。
不登校期間が長くなればなるほど、「この子は不登校なんだ」という事実からは逃れらえず、「いずれ全日制高校に行き、その先は大学で…」と思い描いていた未来ではなくなってしまうのだと考えます。
「もしかしたらこのまま引きこもりになるのかもしれない」「私の子育てのせいだ」と考えてご自身を責めてしまうこともあるかもしれません。
そして、家事や仕事にも手がつかなくなり、外部との関わりも避けようとします。
なぜなら、気分転換にママ友とランチに行っても、話題は子どものこと。
「うちの子、塾の宿題しないのよ~」なんて聞いても、「うちの子は学校すら行かないのに。贅沢な悩みよ…苦しい…帰りたい…」と考えてしまうもの。
うちはうち、よそはよそ。なんて考えられず、どんどん精神的に追い詰められて、抑うつ状態になり、食欲が落ちたり眠れなくなってしまいます。
受容
抑うつから抜け出せなくて苦しいまま…という方もすくなくありませんが、
「この子は不登校なんだ。…いや、自分で行かない選択をしているのだ。私とこの子は別人格であり、この子の人生は最終的にはこの子自身が決めることなのだ。不登校を受け入れるところからがスタートなんだ」
…というふうに受容にすすまれるかたもいます。
以前は『不登校=復学一択』でしたが、色んな選択肢がある昨今。不登校でも、高校に行けないわけでも、大学に行けないわけでもない。
実際そうやって社会に羽ばたいていく子もいるわけで、確かに不登校は少数派ではあるものの、不登校のまま大人になるからこの先ずっとお先真っ暗というわけでもない。
だから、この子がこの子らしく大人になるために、できることをやってあげよう。伸ばせるところをおうちで伸ばせばいいのだという考えにたどりつく方もいらっしゃいます。
不登校は悪なのか
こんな話をすると、「不登校はダメ派」と「不登校はダメじゃない派」に分かれて、永遠に分かり合うことができない議論に発展しかねないのですが、結局のところはそのご家庭がどのような結論を出されるかだと私は思っています。
「不登校は悪なのだから今すぐなんとかすべき」と他者が口出しできることではありません。
ただ、不登校復学の支援機関に10年間所属をしてきた身としては、不登校を家族で乗り越えて、不登校をきっかけに家族がバラバラだったのが力を合わせ、同じ方向に向かって力強く歩んで行かれたケースを沢山見てきましたし、何よりお子さんの不登校でボロボロになった保護者を沢山見てきているので、「復学を目指すことは悪ではない」し、「復学を目指すのは子どものためではない」とは言い切れないと思っています。
復学を目指す方法は様々なので、その方法は人によっては問題視されることもあるかもしれませんが、それはさておき、復学を目指すのか、それ以外の道を選ぶかは本人と家族がきめること。
私はそう考えています。
まとめ
私自身は、不登校や母子登校を復学させる支援をしていません。
ペアレンツキャンプと同じく、「学校戻し屋」ではないですし、多くのご家庭を支援していく中で、家庭教育の学びや実践に加え、保護者のケアが最重要であると考えるようになりました。
ですから、支援を受けられたから「すぐに母子登校を解決しましょう。方法はこれです」とはなりません。
ご家庭の状況をじっくり分析し、バランスを見た上で、どのタイミングで親子で母子登校であるとか不登校の状況であることに対して話し合うのか(あるいは話し合わないのか)を判断します。
自立を急いで「すべて子どもにやらせなさい」とも言いません。
その子にはその子なりの成長過程やペースがありますので、無理に自立や復学を目指して親子の関係性が崩れるくらいなら、焦って目指さないほうがいいとすら考えています。
子どもの意志なく無理にひとりで行かせても、その時はよくてもどこかで親への不信感や恨みにつながりかねないと考えているからです。
しかし、それでも支援を受けたケースの殆どは、お子さんが復学しています。
支援を受けられて1か月で復学することはないですが、少しだけ遠回りをしても、親御さんのカウンセリング・ケアに力を入れながら、親子ともに納得する形で成長していくのが一番であると私は考えています。
(これについては、支援を受けてくださった親御さんは、深く頷いてくださるかと思います…たぶん)
不登校や母子登校に悩まれた時に、私が最も課題視しているのは死の受容過程でいえば「抑うつ」の段階の時の保護者です。
お子さんを育んでいく上で、保護者の精神的な不安定さはお子さんの情緒面の育ちにも大きく影響を与えますし、鬱などの精神疾患のつらさもよくわかるからこそ、しっかりケアする。
そこからがスタートだと思っています。
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それでは、今回はこのへんで終わりたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました!
親まなびアドバイザー まいどん先生
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