心が疲れているから母子登校になる?
ブログをお読みいただきありがとうございます!お餅が沢山余っていて消費に困っている山下です。
土井善晴先生のお餅消費レシピをネットでみかけ、近いうちにやろうやろうと思いながらもお餅ばかりの毎日だったのでお餅に飽きてしまい…
冷凍庫に眠っているお餅はまた今度土井先生レシピで食べてみたいなと思います 🙂
さて、今回は「母子登校は子どもの心が疲れているから起きるの?」というお寄せいただいたご質問に対し、私なりに解説をしてみたいと思います。
母子登校のケースが言われがちな言葉
母子登校中のお子さんの場合、多くのご家庭は学校のスクールカウンセリングを利用されたり、担任の先生や特別支援教室の先生と相談をされたりしながら、どうすれば母子登校を乗り越えられるか試行錯誤をされていることと思います。
中には、学校側から突き放されたようなことを言われたり、まるで「学校という環境に適応できないならこなくていい」と言われているように感じて傷ついてしまったという方もいらっしゃいます。
これまで法律的(教育基本法)では、「保護者には子どもに普通教育を受けさせる(就学の)義務がある」ということから、原則不登校児童生徒は選択肢は復学であることが多かったですし、フリースクールなどの利用は少数派でした。
しかし、教育機会確保法が出来てからは、「学校を休むことを認める」「学校以外の選択肢を認める」といった内容が含まれていることもあり、学校も無理に学校に来るような促しはしなくなりましたし、「別の居場所へとつなげる」という意識が高まってきているのが現状かと思います。
このように、不登校についてはそのような理解が進んできていますが、まだまだ母子登校への理解というものはあまり進んでいないのではないかと支援者の肌感覚的に感じているところです。
母子登校=甘え
母子登校=家庭内で就学前に必要なスキルを身につけさせられていない
母子登校=親が心配性だから子どもに(勝手に)付き添っている
…といった捉え方をされているような発言をされる教員も残念ながらいらっしゃいます。
「特別なサポートが必要なら診断書もってきてください」「発達検査を受けてきてください」と言われる方は珍しくありません。
基本的には発達障害のグレーであっても、教育委員会などに相談をした上で通級指導を利用することは可能で、必要書類の提出や面談や審議会による判断を経て入級にいたります。
診断書が必ずしも必要ではないものの、自治体によっては診断書や発達検査が「学校での困り感があるかどうかの判断のひとつ」になっているからこそ必要だと言われてしまうケースもあるようです。
また、母子登校をするお子さんの多くは「ママと離れることが怖い」「学校が怖い」「お腹が痛い」「学校に居ると不安でいっぱいになる」など、母親から離れることへの不安や恐怖や、身体症状の訴えが多いことから、『精神的な何かがある』というような認識であることも多いように感じます。
その結果、「分離不安症」というふうに言われたりして、
「お母さんはお子さんの話を聴き、よりそい、安心させてあげて」
「分離不安症なのに、お母さんがいない場所で学校でひとりで無理にがんばってきた。キャパオーバー。だからいま、この子は学校が怖いとなり、頑張れなくなっている。こころが疲れている」
…というアドバイスをもらう方は少なくないはずです。
「子どもの心が疲れている」とは?
もちろん分離不安のケースもあるのですが、よくよくご家庭の状況を見ていますと、
「果たして本当に分離不安が根本的な理由からキャパオーバーになり、ひとりで行けなくなったのか?」
と疑問に思うケースは多いです。
例えば、確かに「ママがいない学校は不安」とお子さんは言うのですが、お母さんと離れるまでは教室前の廊下で10分泣いてお母さんにしがみつくことはあるものの、離れてしまえばケロっとしていたり、放課後に残って友達と遊んで帰ったり、休みの日はお留守番もできるし、ひとりで友達と遊びに行ける子もいます。
本当に分離不安だったとすれば、母親から離れても不安で仕方がないでしょうし、母親から離れて過ごすことはできないはずです。
しかし、学校という特定の場において、しかもごく一部分においては母親と離れにくさを見せ、それ以外の場では特に問題なく、むしろ楽しそうに過ごせている。
この状況に、「本当に分離不安?本当に『安心』が必要?」というところから支援の場では分析を進めていくことが多いです。
「お母さんが付き添ってあげて、子どもが『ママもう来なくていいよ』と言ってくれるまで、母子登校を続けてあげて」
「おうちではめいっぱい甘えさせてあげて。たくさん抱きしめてあげて、『愛しているよ、大好きよ』と言ってあげて」
…というアドバイスをスクールカウンセラーからいただいたというケースは珍しくありません。
しかし、私の元にご相談をいただくケースの殆どは、むしろその関わりによって状況が悪化しています。
(だからこそ私に相談があるのであって、それでうまくいってるケースもあるから全体の相談件数のうちどれくらいの割合が悪化しているか…というところはわからないですが)
むしろ幼児退行が起き、ますます母親から離れられないというケースを沢山見てきました。
それを「前進しています」と表現するカウンセラーさんもいますが、親としてはどうしても「悪化しているようにしか思えない」わけです。
これまでひとりで行けていたトイレも、お風呂も、母親がいない隣の部屋に移動することも、母親がそばにいないと出来なくなってしまった。そんな状況に、「前進しているわ!」とはなかなか思えませんね。
SOSの出し方が下手なだけかもしれない
そこで、分離不安以外の理由を考えて分析をしてみると、「この子はSOSの出し方が下手なだけかも」という答えにたどり着くことがあります。
例えば、学校で本当は困り感があるのにそれを表に出せない性格のお子さんの場合、担任の先生から見ると「問題のない子(特別なサポートが必要ではない子)」という認識になりがちです。
本当は些細なことが気になる性格なのに、本当は助けてほしいのに「助けて」となかなか言えない。
担任の先生が他のお子さんへの指導で手いっぱいだと、よけいにそういう悩みを抱えている子に気づきにくく、十分なサポートができなかったり、配慮が必要なところで配慮ができないということがあります。
また、普段親御さんも「他人様に迷惑をかけてはならない」「自立しなさい。なんでも自分でやってみなさい」という関わりをお子さんにし過ぎてしまっていたとすれば、子どもは、
「誰かに頼る=迷惑をかけることなんだ」
…と誤った認識を持ってしまい、結果誰かに頼ることが出来なくなってしまうことがあります。
本当は先生に「わかりません」と言いたいのに。「隣の○○君が意地悪する」と言いたいのに。「給食の牛乳を飲むとどうしても気持ち悪くなる」と言いたいのに。
でも、言えない。
なんとかその場で「良い子」であろうとして、その場に「適応しよう」として、頑張りすぎてしまう。
その結果、「もう頑張れない。学校が怖い」となっている場合もあります。
小学校低学年のお子さんはボキャブラリーが少なかったりしますので、分離不安の子が発言することに近いような表現で学校に行きたくないということを一生懸命訴えている場合もあり、
必ずしも母親と離れることだけが不安で学校が怖いと思っているわけではない
こともあり、そういうケースの子に「思いっきり甘えさせる」、ご家庭によってはこれを「わがままをすべて受け入れてあげること」と認識されて実践されていることもあるのですが、そうすればするほどわがままは助長されていくばかりで、母子登校でなくなるような兆しは一切ない…ということがあります。
これは分析(アセスメント)の見誤りに起きている状況悪化だといえるでしょう。
まとめ:確かに心は疲れているかも。でも…
そう考えてみますと、たしかに頑張りすぎ(過剰適応)により心が疲れているということは当てはまるケースは多いかもしれません。
しかし、「分離不安の中学校でひとりで頑張ってきたことによる心の疲れ」なのか、「SOSの出し方が下手なだけで、ひとりで頑張りすぎていたことによる心の疲れ」なのかを見極めることは大事なことなのではないかと思います。
もしも後者だったとすれば、子どもが安心するまで付き添っても状況は良くなりにくいですし、付き添っているからこそ、親が子どもが困っているであろうことを察して学校内で手助けしてあげられる状況が続き、ますます「ママが学校に居てくれないと困る」ようになってしまうかもしれません。
そうではなく、「どういうふうにクラスメイトや先生にヘルプを出せばよいのか」「どのように誰かに助けてと言うことは悪いことではないと子どもに伝えていくか」という視点で関わっていくことも必要かもしれません。
「自立させてひとりでできることを増やしていく」という視点ももちろん大事です。
大事なのですが、そればかりではヘルプを出せない・ひとりで抱え込みすぎてしまう子になりかねません。
例え一度母子登校ではなくなったとしても、SOSの出し方が下手だという課題を抱えたまま次の学年にあがると、もしかするとまた似たような悩みが出てくることもあるかもしれません。
このように、母子登校というのは、「自立出来ていないから」「発達障害だから」「分離不安だから」という視点のみではなく、様々な角度から見るということが大事だとわたしは考えています。
もし、母子登校のお子さんに対して一生懸命関わりを変えてみているのにうまくいっていない…とお悩みの方がいらっしゃったら、一度この視点で分析をし直してみるのもひとつかもしれません。
それでは、今回はこのへんで終わりたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました!
親まなびアドバイザー まいどん先生
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