私たちは、様々な経験を経て大人になりました。
沢山の成功経験と失敗経験を積み重ねていくことで、人との関わり方や勉強の仕方や物事の楽しみ方など、「生き方」を学んできました。
子ども達もまた、学校や家庭や自分の居場所で様々なことを学び社会に羽ばたいていきます。
そんな子ども達に私たち大人や親は、どうかかわってあげるのがよいのでしょうか。どう向き合ってあげるのが子ども達にとってのプレゼントになるのでしょうか。
今回は、子どもの生きる力をはぐくむ7つのコンパスメソッドの1つである「成功経験と失敗経験のバランスを意識する」について解説をしていきたいと思います。
「体験」と「経験」の違いについて
まずは成功経験と失敗経験について解説する前に、「体験」と「経験」の違いについて整理をしておきましょう。
体験とは
実際に行動して体で感じること。または、行動そのもの
経験とは
何事かに直接(触れたり)ぶつかることで、何らかの意味でその人の「自己」(人間性)を豊かにすること。
何事かに直接触れたりぶつかることで、そこから技能や知識を得ること
<Wikipedia より引用>
MIKURU⊛MIRUの7つのコンパスメソッドでは「成功経験」と「失敗経験」という表現をしております。
親が子の成功経験と失敗経験のバランスを意識して関わることで、子が自分の経験から技能や知識から学びを得て自己を豊かにしていけるという考えです。
なぜ成功経験が必要なのか
例え誰に何を言われてもゆるがない自信を子どもにはもってもらいたいと思うのが親心ですよね。
子どもに「自分は自分を信じているし、出来ることを知っている」状態になってもらうには成功経験が大事です。
よく「小さな成功体験を積ませていく」ということが言われたりしますが、親子会話において「なぜ失敗したと思う?」というやりとりは多く見かけても、実は「なぜ成功したと思う?」という質問が少なかったりします。
大人でも実はこれまでの様々な体験を通して成功したことなのにも関わらず、「なんとなく成功しちゃった」と思っていることって意外と沢山あるのではないでしょうか。
自信をもってもらうには、自分の体験を通じて「なぜ成功したのか」を振り返り、「成功は単なるラッキーで起こっているわけではない」と理解し、確かな「成功経験」につなげていく必要があります。
メタ認知
上記のような能力を高めていくには、「メタ認知」の能力も必要です。
「メタ認知」とは「客観的な自己」「もうひとりの自分」とも言われていて、現在進行中の自分の思考や行動そのものを客観視することにより自分自身がどのように物事を捉えているかを把握できる能力のことをいいます。
自分自身が何かを行う際、どのようなプロセスを踏んでいるのかを知ることや、自分の思考や行動そのものを対象として客観的に把握し、それを実行するということが出来ていると物事の成功確率を高めていくこともできるでしょう。
親子ともに「メタ認知能力を高めていく」ということを意識してみるとよいかもしれません。
<メタ認知能力を測る9項目>
1. 自分が用いる方法がどのような問題解決のときに、最も効果的なのかを知っている
2. どのようなやり方が有効か、十分考えてから課題に取り組む
3. 問題の中の重要な部分に意識的に注意を向けている
4. 自分がどの程度よく理解できているかについてうまく判断できる
5. 問題が解けたとき、自分がどういう方法を用いたかわかっている
6. 問題に取り組んでいるときに、うまくいっているかどうか、定期的に自分でチェックしている
7. 勉強するときは、その目的に合わせてやり方を変える
8. 勉強したり課題を行うときには、計画を立てる
9. 考えが混乱したときには、立ち止まり、もとに戻って考えてみる<Wikipedia より引用>
こういったことが常に出来ていると、より自分に自信が持てるということです。
なぜ失敗経験が必要なのか

という疑問もあると思います。
家庭教育支援の場では、「子どもに失敗をさせたら可哀想だと思って、つい子どもの行動を先読みして指示をしてしまう」というお悩みをよく耳にします。
確かに、失敗する→「自分はだめだと思う」という流れしかなければ可哀想なこととも言えます。
しかし、MIKURU⊛MIRUでは、失敗そのものへの捉え方を変えていくことから始まります。
「失敗は成功の基」とも言われるくらい、失敗経験は大切なもの
ここまで「経験」を通して人は自分の経験から技能や知識から学びを得て自己を豊かにしていくということを説明してきました。
失敗をしても、「今回はなぜ失敗してしまったのだろう?」と考えたり、「次はどうやったらうまくいくだろう?」と考えて次につなげていけば、技能が向上したり知識が得られます。
1回失敗しても、2回失敗しても、都度「なぜ?」と振り返り次につなげていくことができれば成長ができます。
…ということは、失敗は成長のチャンスというわけです。
失敗により、「どう行動するか」の引き出しが増えていき、イレギュラーなことがおきてもこれまでの経験と引き出しの量で対応ができるようになっていきます。
本人が「失敗はしてもいい」「失敗はネガティブなものではない」ということを理解していれば、失敗をしても動じず状況をよくしていくための行動が取れるようになるでしょう。
これからは先が読めないVUCA(ブ―カの時代)
少し話は逸れますが、これから先は「先が読めないVUCAの時代」と言われています。
V - 変動性
U - 不確実性
C - 複雑性
A - 曖昧性
これら4つの英単語の頭文字を取ってブ―カと呼び、元々は軍事用語だったそうです。
これまでの社会は、先の見通しが立てられたことから「言われたことを言われた通りにできる人」「みんなと同じことができる人」「言われた通りにできる人」が重宝されていました。
その結果、学校でも正解や知識の暗記の比重が大きい教育が行われていました。
しかしこれから先、指示を出す側も先が読めないわけですので、求められるのは「臨機応変に対応ができる人」「莫大な情報量を編集出来る人」「自ら課題を見つけて解決する力を持った人」「他者と協働し、自ら考えぬく力を持っている人」と言われています。
上記のような力を身に付けた状態で社会に羽ばたいていくためには、これまでご説明してきた成功経験と失敗経験が大切であるということです。
インタビューをするように子どもの話を聴いたり一緒に振り返ってみよう
成功経験や失敗経験についてはご理解いただけたかと思いますが、これらを活かすにはどうすればいいかについてご説明いたします。
まず、最も重要なことは、「失敗したことを責めない」ということです。
子どもが失敗を嫌がる要因のひとつとして、親が子どもの失敗を責めたり嫌味を言ったり「だからあれほど言ったでしょ!」と言ってしまうことにあります。
失敗をする→責められたり嫌味を言われる→失敗を隠そうとしたりチャレンジをしなくなる
…という流れを作ってしまうので、「あらら、失敗しちゃったのね。」とフラットに話を聴いて失敗そのものについて悪いことというジャッジをしないようにしましょう。
そして、「次はどうしたらうまくいくかな」ということを子どもに聞いて次につなげていくようにしましょう。
また、成功経験ができたときは「どうして成功したと思う?」「どこを工夫したの?」など聞いてみましょう。
メタ認知のところでも触れましたが、子どもが自分で自分を客観視するための質問を投げかけていきましょう。
発達に課題がある子の場合の注意点
ここまで成功経験と失敗経験について解説をしてきましたが、お子さんの特性によっては失敗経験を積ませすぎるとかえって自信を失わせてしまう可能性があるので注意が必要です。なぜなら特性的に、以下のような傾向がある子がいるからです。
・失敗の記憶が残りやすい
・失敗(先)を予測できない
・立ち直りに時間がかかる
・失敗に対してリカバリーができない
このような特性を持った子に、「ガンガン失敗させる」は逆効果になることが往々にしてありますので注意をしましょう。
その場合、親や大人はどうかかわったりサポートしてあげるかについては下記の通りです。
・成功経験がつめるよう誘導してあげる
・失敗した時の悔しさをしっかりと受け止め共感してあげる
・「失敗は恥ずかしいことではない」と伝え続ける
・お手本を見せてあげたり一緒に乗り越えようとする
生きているうちに失敗を避けて通ることはできません。大事なのは「失敗に対する不快な感情をどう一緒に解消していくか」です。
まとめ:大事なのはバランス
いかがだったでしょうか。
成功経験も失敗経験も共に大事なものであるということをご理解いただけたのではないかと思います。
そして、「成功経験を多めにつませる」「失敗経験を多めにつませる」「今は失敗経験を避けるように工夫する」というように、お子さんの性格傾向や特性に合わせて対応をしていくことが求められます。
失敗経験を避けようとすればするほどチャレンジを避けてしまうことになりますし、成功経験をつませようとすればするほど次に失敗をした時のショックが大きくなってしまう可能性もあります。
バランスを意識しながら、家庭の中で成功経験や失敗経験をつませていき、子どもの「先が読めない世の中を臨機応変に行動できる力」「生きる力」をはぐくんでいきましょう!
親まなびアドバイザー まいどん先生