トークンエコノミー法(行動主義)は『復学』『登校のモチベーション』に有効なのか

トークンエコノミー法(行動主義)は『復学』『登校のモチベーション』に有効なのか

ブログをお読みいただきありがとうございます!最近のマイブームはスイカなまいどん先生です 🙂

しかし夕食後に食べると夜トイレで目が覚めますね…我慢しなきゃ…と思いつつも、美味しそうなよく冷えたスイカが冷蔵庫に眠っているのを見ると…ついつい食後のデザートで、パクリ…。そして夜中に後悔する…という。私はほんまに学ばへんなぁ…と、目の前の誘惑に勝てない今日この頃です。

さて、今回は拙著でも取り上げているトークンエコノミー法について解説をしてみたいと思います。

トークンエコノミー法とは

トークンエコノミー法とは、行動主義という教育理論のひとつです。

行動主義とは、人間の行動を予測したり、制御することについての説明を目指す実験心理学の一種で、観察対象が刺激を受けてどのようなことを学習をし、反応をし、そして行動をするのかということを科学的にみていくという学問です。

有名なところでいえば、オペラント条件付けというものや、レスポンデント条件付けというものがあり、そのような条件付けを裏付けたのがパブロフの犬の実験や、スキナー箱の実験や、アルバート坊やの実験(恐怖条件付け)…というものがあるのですが、これを一から説明しようと思うととんでもなく長くなるので、今回は「行動主義」というひとつの流派の中で、実験結果などから誕生したトークンエコノミー法というものに絞って解説をします。

トークンエコノミー法とは、『習得させたいなと思うような行動が行えた場合に二次報酬としてトークンを与え、トークンが一定たまれば一次報酬を得られる』というものです。

例えば…

親は子にお手伝い(お風呂掃除)を毎日してほしいと思っている

お手伝い(お風呂掃除)が出来ればシール1枚(トークン)を報酬としてあげる(二次報酬)

シールが10枚たまったら実際の報酬(お菓子、ちょっと遠くの公園におでかけなど)が得られる

…のように、まずは第一段階の「シールをためること」を目的として、子どもが自主的に行動することを目指します。

自分の行動によりシールをもらえたり、シールがたまっていくことを「楽しい」「うれしい」「もっとがんばりたい」と感じさせることを目指します。

次に、第二段階の「直接的報酬による刺激による行動の強化」を目的として、シールがたまると、直接的に『快』反応を得られるものとシールを交換します。

人には自分の行動に対してプラスの刺激を受けると、その行動を繰り返す傾向があるため、シールを貯めた上でゲットできる報酬に、ますますやる気を持つことを目指します。

子どもの行動変容に用いられることが多い方法であり、学校・家庭などでも簡単に用いることができるということで、色んな書籍やブログなどでこのトークンエコノミー法を紹介しているカウンセラーさんや、取り入れておられるご家庭が多いと思います。

母子登校や不登校とトークンエコノミー法の相性

そんなトークンエコノミー法ですが、以前書いた記事『子ども向け認知行動療法の難しさ前編・後編』でも書いたように、母子登校や不登校を乗り越えるために取り入れているご家庭を多くおみかけします。

子どもの登校に対してトークンエコノミー法を取り入れるのは相性的にどうなんでしょう?

そんなご質問もいただきますが、私の結論としては「ケースバイケース」です。

支援の中でこの方法を取り入れてきたご家庭もあれば、そうでないご家庭もあり、本当に様々です。

トークンエコノミー法を登校に絡めて活用したほうがいい家庭とそうでない家庭の差ってどこにあるんですか?

…と聞かれると、

・親御さんの性格や思考の傾向

・お子さんの登校に対する意志の強さ(ひとりで行きたい・復学したいという気持ちが強いかどうか)

・お子さんの性格や思考の傾向

これらをふまえて判断していますといつもお答えしています。

ただ、『子どもを1日でも早く学校に戻そう』という気持ちが強すぎる(早急に結果を求める)親御さんには相性が悪いということでおススメしないようにしていることが多いです。

「登校」にトークンエコノミー法を結びつけることのデメリット

なぜなら、結果を求めすぎる親御さんは、トークンエコノミー法の理屈はさておき、結果を追い求めて「報酬をあげるのだから学校に行きなさい」という考えに偏りやすく、

・シールを貯めるかどうかは子どもの問題という捉え方ができない

・シールを貯める喜びを感じさせるということを忘れてしまう

・物で釣ればよいという結論に至りやすい

…からです 😕

ですので、例えば

親は子どもにひとりで学校に行けるようになってもらいたい

決めたところまで行けたらシール1枚報酬として与える

シールがたまったらソフト1本、おもちゃ付きのおやつを1個…などの報酬を与える

…ということをやってみましょうとなっても、親が学校に行かせたい気持ちが強すぎると、

「今日は頑張れない(今日はシールいらない)」と言った子どもに対して、

それじゃ今日のシールがもらえないよ!いいのね?!

…と、『シールが貼れなくなるのだから頑張りなさい。断る選択の余地はあなたにありません。

シールがもらえないのはあなたにとって罰でしょう?』というように、親が子を脅してしまいがちです。そしてこういう時の親は不機嫌になり、子どもに感情をぶつけがちでもあります。

そしてこのような流れになると、結局子どもは、シール目的ではなく、親が不機嫌になったり感情をぶつけてきたからイヤイヤ行動をすることになり、トークンエコノミー法の効果が十分に得られないやり方に変化しやすいです。

「頑張れば報酬は得られる。でも、頑張らなければ親が不機嫌になる」関わりは、子どもは「何のためにひとりで行くのか・頑張るのか」がわからなくなりやすいんです。

まとめ

いかがだったでしょうか。

トークンエコノミー法はうまく活用すればお子さんの行動を習慣化することに役立ちますが、取り入れ方や取り入れた後の関わり方によってはむしろ子どものやる気を削いでしまうというおそれもあります。

もしもこの方法をやってみたいなと思われたかたに対してアドバイスがあるとすれば、トークンエコノミー法でもっとも大事なのは「自ら行動することを目的とする」という点なので、「トークンエコノミー法を取り入れた=結果が得られるというわけではない」ということを十分に意識しながら実践されることをおススメしたいと思います。

それでは、今回はこのへんで終わりたいとおもいます。

また次回のブログにてお会いしましょう 🙂

まいどん先生(公認心理師)

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