「うちの子は自分の気持ちが言えない」は勘違い?

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うちの子はどうして自分の気持ちを聞かれたら固まっちゃうの?

よく、お子さんが「自分の気持ちを言葉にできない」「気持ちを聞いた瞬間固まってしまう」「身体症状の訴えが多い」「作文が苦手」といったお悩みを親御さんからいただきます。

特に支援前の相談では、「うちの子はHSCだと思う」「自閉症スペクトラムの傾向があるかも」というお話をおうかがいすることも多いのですが、実は実際に支援がスタートしますと、訓練不足によるものだったことが判明することがあります。

「どうしてこんなことしたの?」に答えられない

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例えば、お子さんが急におもちゃをぶちまけて怒っていたとします。

そこにお母さんがやってきて、「どうしたの!何があったの?」と聞いてもだんまり。

「どうしてこんなことしたの?」と聞いても答えてくれない。

自分にとって答えにくそうな質問を投げかけた途端、固まって黙ってしまうお子さんとのやりとりに悩まれている親御さんは少なくありません。

 

親御さんも不安になり色々と調べていくうちに「もしかしてうちの子、HSC?」「自閉症かも?」「場面緘黙ってやつかも?」と「もしかして何かしらのこころの病気?」と心配がさらに膨らんでしまうことがあります。

他のやりとりでは平気なのに、決まった場面でのみ黙られてしまうと「なんで?」「どうして?」と不安になりますよね。

 

大事な話をしようとすると三角座りをしてふさぎ込んでしまう

 

また、学校を行き渋るお子さんや母子登校や不登校などで悩まれているケースでは、親御さんがお子さんの話をじっくり聴こうとして、「ちょっとおいで」と言った途端に固まってしまい、だんまり…というシーンもよくおみかけします。

「おなか痛い」「頭痛い」「怖い」「不安」というような発言はできるものの、いざそれらの言葉をより詳細に聞いていこうとすると、答えられなくなったり、固まってしまう。

 

そんな様子を見ると、

まだ早かったかなぁ。不安にさせちゃった…
言いたくないんならいいんだよ。ごめんね。ママが悪かったわ

とお話するのを断念する方も多いのではないかと思います。

 

自分の気持ちを言えない理由

すべてのお子さんに当てはまるわけではありませんが、ご相談をいただくケースでは以下のようなケースをよくおみかけします。

 

・語彙力の問題

一番多いのはこちらです。

特にお子さんが中学年くらいまでの年齢ですと、『いま自分はモヤモヤしている』ということは分かっても、それが

「宿題でなんども同じところで書き間違えて嫌になる。宿題のプリントも自分も嫌になる。それにママが横で『ああ!もうこうだってば』っていうのが嫌だ」

ということがうまく言語化できなくて、「もー!イライラする!!!」「もう、ママうるさい」「…(黙ってイライラしている)」となっていることがあります。

 

他にも、「ママがいないと不安…」とよく泣いてしまうお子さんの場合でも、実は話をしっかりきいてみると親の思う「子が感じているであろう不安」と本人の思う「不安」が一致していないことがあります。

親は「この子は私がいない環境でつねに不安と戦ってるんだ…辛いだろうな…我慢して学校に行きなさいなんて言って、可哀想な思いをさせてしまった…」と思う。

けれども、子は「教室に入ってさえしまえば怖くないけど、それまでがちょっと不安。勉強はまあ大丈夫。給食はほうれん草がでなければいける」と思っている(ここまであっさりしていることはないかもしれませんが)ことがあります。

 

子どもの発する「怖い」「不安」という単語に引っ張られて、親御さんが過剰反応をしてしまった結果、実際に子どもが感じている以上の不安を感じさせていると親が勘違いしてしまって、必要のないところにまで親が一生懸命手厚くサポートをしてしまうケースもあります。

 

・実は親御さん自身も自分の気持ちを掘り下げて考えることが苦手

「うちの子は自分の気持ちを言えないんです」という親御さんの場合、実は親御さん自身が自分の気持ちを掘り下げて考えることが苦手な場合があります。

多くの場合は、ご本人が気づいていないことが多く、支援を受けられていく中で「私ってこんなこと考えてたんですね」とご自身の気持ちに気づいていかれることがあります。

そのようなケースでは、親御さんがとても頑張り屋さんで、自分の気持ちにふたをしがちであったり、鈍感になっていることが多いです。

過去のご自身の養育歴を振り返ってみると、「どうせ親に自分の気持ちを言ってもわかってもらえない」「親は『なんだ、それくらい我慢しろ』とよく自分に言ってきたから、自分の気持ちを言葉にすることがなかった」「良い子であろうとしていた」ということも多く、そういった方は、ご自身の気持ちを深く考えないようにする癖が知らず知らずのうちに身に付いていたりします。

そのため、私から「お母さんはお子さんの発言を聞いてどう感じられましたか?」とききますと「うーん、不安ですけど、たぶんうちの子はこう考えていると思うんですよ…」と、話がお母さんの気持ちではなく子どもの気持ちの代弁にすり替わっていってしまうことがあります。

これはわざとではなく、完全にお母さんの無意識です。

自分の気持ちではなく、今子どもが何を考えているのか?感じているのか?を表情や雰囲気から察知することが常に優先になっており、「きっとこの子は今こう思っているに違いない」とご自身なりの解釈をしてお子さんとのやりとりを進めておられます。

 

その場合、家庭ノートをつけてみていただくと…

今日の体育どうだった?
ん…(不機嫌そう)
…(きっと何か嫌なことがあったんだわ。触れないほうがいいかも…)

…おやつ食べよっか。

こういうやりとりが日常的に行われていることが多いんです。

 

子どもが不機嫌な理由は、声をかけたタイミングが悪かっただけかもしれないし、その前のお母さんとのやりとりにイラついているかもしれないし、本当に体育で何かあったのかもしれませんが、子どもは何も発していないので、お母さんの読みがあっているかどうかはわからないといえます。

それなのに、親の主観が勝ってしまって親の思い込みで子どもとのやりとりが進んでいくので、会話がうまくかみ合わなくなってしまっていることがあります。

このようなことが当たり前になると、親御さん自身が自分の気持ちを振り返る余裕もなくなりますし、子どもも親が何となく察してくれるため自分の気持ちを言わなくて済むようになります。

そして、その結果、お友達とのやりとりに困難さを感じてしまったり、嫌なことがあると黙ってしまう癖がついている場合があります。

 

・アレキシサイミア(失感情症)の可能性

自分の感情(情動)への気づきや、その感情の言語化の障害、また内省の乏しさといった点に特徴があると言われています。心身症の発症の仕組みの説明に用いられる概念ですが、近年は衝動性や共感能力の欠如など、ストレス対処や対人関係を巡る問題との関連が研究されています。

ハーバード大学マサチューセッツ総合病院のP.E.シフネオス医師は長年、いわゆる古典的「心身症」と言われていた患者さん達の治療に取り組んでいました。その臨床経験からこの患者さん達にはある心理的な特徴があることに気づきました。
あまり生気が感じられず、葛藤状況やフラストレーションがたまる状況では、内省したり困難に上手に対処したりするのではなく、むしろそれを避けるための行動に走ってしまうというのです。そしてその最大の特徴は「自分の感情を表現する言葉を見つけるのが難しい」ということでした。そこから感情を言い表す言葉が欠けていること=失感情(言語化)症という概念が出てきたのです。

不安や恐怖あるいは喜びといった「喜怒哀楽」は情動(emotion)と呼ばれます。怒ると顔が真っ赤になったり、恐怖に襲われ不安になると心臓がドキドキし声が上ずったりします。このように情動はからだの変化と直結し、自律神経系の変化や表情・声の変化といったからだの変化と一体となっています。
この情動の変化はまた、私たちの主観的な気持ち=感情(feelings)の変化とも普通結びついています。この感情の変化について、私たちは自分が「腹が立っている」とか「とっても怖い思いをした」とその感情に気づき、それを言葉で表現をすることを普段何気なく行っていますが、心身症の患者さんたちはどうもそうしたことが上手ではないのではないかというのです。昔の諺にある「もの言わざるは、腹ふくるるわざ也」のように、自分の微妙な感情の変化に気づき言葉にしていくことは、私たちの健康維持にとりきわめて大切というわけです。

失感情症の概念は研究者の間で検討されて、以下の特徴としてまとめられました。

  1. 自分の感情がどのようなものであるか言葉で表したり、情動が喚起されたことによってもたらされる感情と身体の感覚とを区別したりすることが困難である。
  2. 感情を他人に言葉で示すことが困難である。
  3. 貧弱な空想力から証明されるように、想像力が制限されている。
  4. (自己の内面よりも)刺激に結びついた外的な事実へ関心が向かう認知スタイル。

こうした特徴に関して、興味深いことに最近の脳科学研究から、自分の内的な感情に気づき・表すことと、自分とは一端離れた視点(他人の視点に立つ)を持つこと=自分を客体化できることとが、実は密接に関係していることがわかってきました。感情の気づきの問題は共感性、また想像力・空想力などとも大いに関連しているのです。自分の感情の微妙な変化に気づき言葉に出来ることは、彩り豊かな精神生活を送りスムーズな対人関係を築くことにもつながっていると言うわけです。
このように「失感情症」を理解することは、こころとからだの関係だけでなく、自分と他人との関係のあり方を理解する上でも欠かせないキーワードになって来ています。

<厚生労働省e-ネットより抜粋>

↑厚生労働省のページをお借りしました。

ケースによってはこのような失感情症の可能性もあり得ます。

ですが、どうしても特性などにより自分の気持ちを発せないという場合ではなければ、親子の関わりを変えてみることで、お子さんが自分の気持ちを言語化できる力を獲得できるようになるかもしれません。

実際に、アレキシサイミアのような様子を見せていたお子さんも、親御さんがお子さんに親の気持ちを分かりやすく伝えてみたり、かみ合っていない会話を改善したり、親が子どもの気持ちを察しすぎないように気をつけていくことで変化していったというケースは多く見てきました。

 

まとめ

いかがだったでしょうか。

「うちの子は自分の気持ちが言えない」とお悩みのケースでは、実はただお子さんが自分の気持ちを言語化するのが苦手なだけで、できないわけではないかもしれません。

じっくり話を聴いてあげることで、変化が見られるかもしれませんので、ご興味がある方は過去のブログ記事やスタンドエフエムなども参考にしながら実践してみていただければと思います。

 

MIKURU・MIRUの家庭教育支援では、家族療法の観点を用いて、家庭資源を最大限に活用してアドバイスをしております。

週に1回の電話でのカウンセリングに加え、ペアレンツキャンプの家庭ノートシステムを採用し、親子のやりとりをお教えいただきながら、「この時間帯のやりとりではこう伝えたほうがお子さんが伸びると思います」といったアドバイスを具体的に差し上げております。

 

家庭ノートやりとり例

 

支援を受けていただいた皆さまからは、

「毎週の電話で気持ちが整理されている」

「自分の子どもの頃から感じていたモヤモヤや生きづらさの理由がわかった」

「子育てが楽しくなった」

「我が家の対応の方向性を見つけることができた。一生ブレないコンパスを手に入れられた」

といったお声をいただいております。

ご自身で親子のやりとりを文字に起こしてみるだけでも、「え、私ってこんなこと言ってたんだ」といった発見があったりしますので、「ここはもっと聴いてあげたほうが良かったかな」などぜひ親子会話を振り返ってみていただければと思います。

具体的にアドバイスがほしいな、という場合は、まずはお気軽にお問い合わせください(*^_^*)

このブログの内容がどなたかのお役に立てれば幸いです。

 

親まなびアドバイザー まいどん先生

 

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