不安から理解への一歩。母親のための母子登校。

不安から理解への一歩。母親のための母子登校。

ブログをお読みいただきありがとうございます。公認心理師のまいどん先生です。

冬にベランダで「さっっっっっっむ!!!」と言いながら植えたチューリップが芽を出し始めました。

私はさむーーーと言いながらチューリップを植えていた主人を、娘を抱っこをしながら温かい部屋で見守っていました。(さも自分が植えたみたいな書き方をしました)どんな色のチューリップが咲くかな。とワクワクしています。ありがとう、主人。

 

春のにおいがしてきましたね。私は毎年、これくらいの季節になると過去に自分が経験した甘い、酸っぱい、いろんな記憶を思い出し、せつない気持ちになります。

皆さんには、「毎年この季節がやってくると思い出してしまうこと」はあるでしょうか。

 

さて、今回は、いろんな角度から母子登校についてとらえ、母子登校の背後に潜む様々な要因や、親子のコミュニケーションの影響に焦点を当て、その理解に一歩近づく手がかりを探ってみたいと思います。

 

はじめに。母子登校とは

拙著のタイトルが『これで解決!母子登校』であるように、普段サラッと『母子登校』と言っていますが、学校においては付き添い登校という表現がポピュラーかなと思います。

いきなり話は逸れますが、以前議員セミナーで母子登校についてお話をしたのですが、その後付き添い登校について一般質問をしてくださった議員の先生がいらっしゃいました。

いいぞ…もっとだ…もっと付き添い登校について、質問をして、困っている親御さんがいると気づきを与えていってくれ…!と、偉そうに思ってしまった私です。

 

そんな付き添い登校・母子登校とは、母親と一緒でなければ学校に行けない状態を指します。

一部では母親が授業に付き添うこともあり、また送り届けるだけで自分で授業を受ける子どもも存在します。

 

なぜ子どもが母親と一緒に学校に行くのか。

 

その理由は多岐にわたります。

子どもが母子登校を選ぶ理由は、主に母親と離れることに対する不安から発生していることがあり、このように解釈しているかたが多いのではないかと思います。

しかし、実際は母子登校になる理由はさまざまで、分離不安『だけ』であるとか、自立に課題がある『だけ』と解釈をするのは表面的な現象にしか目を向けられていない可能性もあります。

 

発達障害や分離不安症との関連性

一般的には、母子登校は発達障害や分離不安症と結びつけられがちです。

私のもとにご相談をいただくかたのほとんどが、『もしかしたらうちの子は発達障害かもしれない』と一度は考えたことがあると言いますし、「SCに相談したらその気はあると言われました」「友達が養護教諭をしていて、話を聞いてもらったら一度検査を受けたらどうかと言われた」というようなことも聞きます。

 

毎日ひとりで学校にいって、かえってくる。

学校に行きたくないと愚痴ることはあっても、本気で休もうとしないし、朝行きたくないと荒れることはない。

当たり前のように学校にいって、かえってくる。

 

みなさん、お子さんが小学校に入学をしたとき、そんな毎日がやってくる。あるいは、そんな毎日がやってきてほしい。

そう考えると思うんです。

 

しかし、うちの子はそうじゃなかった。

 

朝になるたびにギャン泣きする。朝になると暗くなる。泣いてどうしようもなくなる。パニックになる。声をかけないと動かない。

指示をしてあげないと動かない。着替えさせてあげないといけない。ご飯も食べない。ランドセルも背負わない。

通学路で三角座りをする。通学路で「いやだーーー!連れて行かないでーーーー!」「おいていかないで!やめて!ママーーーーー!」と泣き叫ばれる。

じゃあ学校休もうと言っても、やだと泣かれる。どうしたらええねん。私は仕事があるねん。時間がないねん。いい加減にしてくれと思う。

イライラしてはいけないと思うけど、3分持たない。カップラーメンの方が気が長いやんけ…。

 

旦那はさっさと家を出ていくか、仕事を休んだらとか無責任なことを言ってくる。私をなんやと思ってんねん…。

と、みなさん、いろんな気持ちを抱えながら、毎日毎日、頑張って、必死にわが子と向き合っておられることと思います。

 

今までの健診で引っかかってきたことなんてなかったけど、さすがにこれだけ嫌がるなんて、きっと何かがあるはず。

というか、あってくれ。そうじゃないと、こんな毎日を耐えられない。気が狂いそう。

発達障害と言われたら、潔く学校を諦めよう。

…と思って、児童精神科の初診を予約して、ようやく半年後初受診…だったり、市の教育相談などでwiskを受けさせてもらったり。

 

そして、お医者さんに「必要ならば診断名をつけます」と言われてホッとする方もいれば、ショックを受ける方もいます。

「発達障害とはっきり言えません。傾向はあります。グレーです」と言われてますますモヤモヤする人もいます。

 

わたしのもとに相談をされるケースは、ここまで書いたような流れをたどってきた方は多いです。

ほかにすでにASDやADHDやLDなどの診断名がついていて、特性があるがゆえに学校環境に適応することに困難さがあって母子登校になったというケースもあります。

 

👇分離不安についての解説は過去のブログをご覧ください

 

もしも支援を受けられたご家庭のお子さんが発達障害と診断名がつけられていた場合は、私はASDの子にはこうするべきADHDの子にはこうしたほうがいいと、診断名でお子さんを見ることは絶対にせず、『その子自身をどうやってとらえればよいのか』を親御さんと考えようとします。

同じASDやADHDの診断名がついている子でも、その子たちの性格は異なるからです。

一様に『あなたはASDなんだから人の気持ちはわからないんでしょ』と決めつけてかかわられるなんて、悲しいと思うからです。

『A型のくせに、大雑把やな』と言われてるようなもんです。A型であろうが、私みたいに死ぬほど大雑把な人間も存在する。

ステレオタイプはよくないと思うのです。

 

親子のコミュニケーションのカタチ

 

発達障害や分離不安症が関係している母子登校のケースの場合、親子のコミュニケーションの在り方も実は影響していて、さらには親が育った成育歴や家庭環境が関係してることがあります。

親御さんの育った環境などが影響して、子育てにおいて過保護や過干渉をしてしまうことがある。

そして、子どもが大人になり、自分の子どもを育てる際に不安を感じ、同じように過保護や過干渉をしてしまうこともある。

実は子育てというのは、よいやりとりもそうですが望ましくない養育スタイルも連鎖していることがあります。

 

そして、子どもの「ママが一緒じゃないと学校に行けない」という不安の根底にあるものとして、背後には、「ママがいつか消えてしまうのでは」という子どもの心配が潜んでいて、子どもは母親の不安定な心を感じ取り、それに対処するために無意識的に母親を監視する必要を感じている。

その監視方法が母子登校だった…というパターンもあります。

 

👇さらに詳しい解説はこちらをお読みください

 

 

くりかえされる抑うつ症状。『隠れカサンドラ症候群』かも。

私のもとにご相談いただく親御さんの中には、繰り返し定期的に精神的な落ち込みを経験していたり、偏頭痛やひどい肩こり、吐き気に苦しんでいる方がいます。定期的に、自分で感情を抑えられないで、暴走してしまう。

自傷行為に近いような行動をとったり、自分を責め続けたり、子どもにひどい言葉を浴びせて止まらなかったり。

その理由がわからない。なぜだかわからないけれど、抑うつ症状や体調が悪くなる時が定期的にやってくる。

実は、その理由がカサンドラ症候群だったということもあります。

カサンドラ症候群とは、ざっくり言うとご主人が人の気持ちに対して無関心であったりASDであることから、ご主人と奥さんとの間で感情共有・共感が得られない状態が続くことで奥さんが抑うつ状態になってしまうような状態を指します。

感受性が豊かな奥さんと真逆のご主人とで子育てをしようとした時に、ご主人が奥さんの気持ちを知ろうとしらなければ奥さんの苦労をねぎらうことが難しく、やりとりをしていても「大変だろう。いつもありがとうな」「いつもよくやってくれている。子どものことにも一生懸命。家族の生活を支えてくれている。かけがえのない存在だ」…というような言葉をかけることが難しい。

奥さん(お母さん)は子育ての大変さを理解し合えるような人が身近におらず、どこにも逃げ場が無くなって、お母さんの心がどんどん蝕まれ、崩壊していってしまう…ということもあります。

いわばお母さんはご家族の中で精神的に無視されているのと同じ状態です。そのような状態が続けば心身の不調をきたすのは不自然なことではなく、むしろそりゃそうなるよねと思うのです。

 

そんな母親の状態をよく観察している子は、実は

『自分が不登校なり母子登校なりの「課題」を作ることで、母親はその課題に意識がいくのではないか』

『母親が自分に注目して一生懸命であれば、母親は自分のもとを去ってしまうことはないだろう』

と無意識的に感じて、分離不安症のような症状を見せていることもあります。

 

対処法としての自己理解とケア

こうしたケースでは、まず母親自身の自己理解とケアを行うことが重要です。

ちょっと時間はかかるのですが、私のもとにご相談をいただくかたは、入り口は『母子登校をなんとかしたい』だったけれど、カウンセリングを受けていく中で実は親子の関わりだけが原因ではなかった…と発覚するパターンが多いです。

多くの方は、まさか自分の成育歴がいまの子育てのスタイルに影響を及ぼしているとは思わなかったと言います。

カウンセリングを受けていくうちに、自分が不安定になってしまう理由がわかったり、お子さんがなぜ母子登校を選択するのかという理由がわかっていくと、いろんなことが複雑に絡み合って母子登校が起きていたのだなとすっきりする方は多いです。

人間、なぜ今自分がこうなっているのかというわけがわかると、現在地がわかると、それだけでも気持ちが落ち着いていくもので、少しずつ親御さん自身の自己理解が進んでいくと、不思議と親御さんをまとう雰囲気がかわっていくんです。

 

トゲトゲだった空気がマイルドになる。

何でこの子はこんなに脆いの?弱いの?と思っていたのが、だからこんなふうに不安定な様子を見せるんだ。

こんなことを考え、苦しんでいるんだ。その気持ちをわかってあげよう。一緒に乗り越えていこう。と思えるようになる。

子どもから見て、お母さんが今にもどこかに行って消えてしまうのではないかという不安が薄れていって、お子さんのメンタルも安定していく。

そして気が付けば母子登校ではなくなっていた。

 

母子登校支援では、そんなケースもあります。

 

まとめ

いつでもママがどこかにいるか把握していたい。

ママが買い物に行ったら、帰ってこないかもしれない。事故にあうかもしれない。

私・ぼくを見捨ててどこか遠くにいってしまうかもしれない。

もしかしたら、命を絶ってしまうのかもしれない。

いつでも自分のそばにいてほしい。

 

「本当に低学年の子がそんなことを考えるの?」と思うかもしれませんが、感受性がつよく、観察力が高いお子さんはもっと深いことまで考えることもあります。

母子登校は分離不安が原因だ。自立が果たせていないことが原因だ。だけで解釈していたけれども、実は、

夫婦喧嘩が絶えなかったり、表面的には優しいお母さんでいようとするものの、実は心の中では子どもを愛せない。かわいいと思えないと苦しんでいたり、だれにも相談できなくて孤独でつらくて消えてしまいたいと思っていたり…そんなお母さんの様子を子どもが見抜いていた。

自分が何かしらの『問題』を作れば、一時的には家庭は平和になるかもしれない。と子どもが無意識に思っていたのが実は母子登校の根本原因だったということもあります。

 

これは家族療法の考えにもとづき、「家族の中でたまたま最初に症状を訴えた人が子どもだった。家族の誰かが何らかの困難を訴えたとき、子どもだけに問題があると考えず、家族の構成員それぞれが互いに影響を与え合っていると考える。家庭におけるコミュニケーションにおいて悪循環が生じているから個人に問題や症状が生じる」という解釈の仕方です。

 

個人に起きている問題や症状だけに焦点をあてて一時的にその問題や症状を解消しても、完治ではない。

一時的に症状が収まって寛解しているだけ。

だから母子登校や不登校をくりかえしてしまう。

 

…ということもあります。

 

母子登校の理由は様々であり、その背後には様々な要因が絡み合っています。

今回ご紹介したのはあくまでもごく一部のケースに関しての解説ではありますが、発達障害や分離不安症だけでなく、親子のコミュニケーションや家庭環境も影響しているということを知っていただいたり、子どもの不安や親の不安定な心に向き合い、受容共感的な関わりを築くことが、母子登校解消への鍵となるかもしれないということを書かせていただきました。

 

それでは、今回はこのへんで終わりたいとおもいます。最後までお読みいただきありがとうございます。

また次回のブログにてお会いしましょう 🙂

まいどん先生(公認心理師)

 

👇応援よろしくお願いします!!
にほんブログ村 子育てブログ 不登校・ひきこもり育児へ
にほんブログ村


不登校・ひきこもりランキング

👇Instagramはこちら

-家庭教育・子育て, 母子登校